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そんな事はありうるのか
そんなケースは実は割と存在します。
自身の父母等の相続であれば、こうした事はないのですが、遠い親戚の方が、実は相続人が不在で、結果的に自分が相続人になってしまうという事はあるのです。
法的に見ますと、相続人になるというのは血縁関係からたどって決定されますので、一時的には本人の意思に関わらず相続人の地位を持ってしまうという事になってしまうのです。
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こんなケースがありました
銀行におけるケースですが、過去に不動産の購入資金を融資していた個人の方に相続が発生しました。
親族の方からの報告を受け、銀行が相続人を特定するための調査を開始します。
こうして戸籍等を見ていく中で、実は複数の相続人がいるという事が分かります。
銀行としては今後の返済をどうしていくかを考えていく必要がありますので、各々の方との話し合いの場を設けていきます。
相続できる資産は、負債は?
「知らない間に巨額の資産の相続人になっていた」、などというドラマのようなお話であればよいのですが、このケースでは、不動産はかなり老朽化しており、ほとんど資産価値は認められないような状態でした。
一方で借入金はまだ半分近く残っており、明らかに相続する資産価値以上に借入金がついてきてしまう、そんな状態でした。
相続人の意向は
銀行から、資産や負債の説明を受けたその方としては、亡くなった方とは、かなり遠い親戚であり、その方の存在は知ってはいるものの、ほとんど面識もないような状態でした。
銀行からの説明を受け、自身が相続人になっている事を知って大変驚かれていましたが、資産以上の借入を承継する考えもないし、これ以上、相続のごちゃごちゃに巻き込まれたくないという反応でした。
この時に取りうる対応策は
結果的に相続人になってしまったとしても、必ず相続をしなくてはいけないという訳ではありません。
相続を回避するための法的な手段というのが存在します。これが「相続放棄」という手続きです。
これは資産負債を含めて、私は相続をしないという事を明確化する手続きであり、ご自身単独でも手続きは可能です。
具体的には亡くなった方が住んでいた地域を所管する家庭裁判所へ行き、相続放棄の申述を行う、という手続きを踏む必要があります。
この結果として、家庭裁判所から証明書が発行されますので、銀行に対してはこの証明書を提示し、私はもうこの相続とは関係ないという事を知らせるという流れになります。
総括、相続放棄の注意点
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このケースでの注意点ですが、相続放棄をできる期間が限定されているという事です。
具体的には相続を知りえてから3か月という期間が法的に設定されています。
ですので、相続は知ったものの、どうするかと悩み、放置しておくと、相続放棄ができる期間を経過してしまう恐れがあるのです。
これはあくまで亡くなってから3か月ではなく、自身が知ってから3か月なので、この点に留意が必要なのです。(執筆者:松野 のりこ)