近年、信託銀行や商業銀行(都市銀行、地方銀行)にて「遺言信託」を申込みする人が増えています。
各銀行とも日本銀行のマイナス金利導入の影響で、従来の融資業務で稼ぐことが出来なくなり、手数料ビジネスに力を入れています。
特に「遺言信託」は大きく手数料を取ることが出来ます。
また資金を引き継ぐ相続人とのリレーションを取りやすい側面があることから、各行ともかなり力を入れています。
ここでは「遺言信託」の実態についてまとめていきたいと思います。
目次
1. そもそも「遺言」って必要?
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遺言のメリット、デメリットについて
遺言のメリット
・法定相続分と異なる配分が可能です。
→ 本来、相続で受け取る財産の割合は決まっていますが、遺言を書くことによって相続人の受け取り割合を変えることが出来ます。
・相続人以外の方に遺贈(財産を渡すこと)ができます。
→ 遺言がないと、法定相続人以外に財産を引き継がせることが出来ません。
しかし遺言を書くと、法定相続人以外にも財産を渡せます。
(例えば、内縁の妻や息子の嫁など)
・自分の意思を家族や親族に伝え、その実現が図れます。
→ 遺言がないと、法定相続人全員で協議して同意が必要になります。
しかし「遺言」を書いておくと、被相続人(亡くなった人)の意志で財産を分けることが出来ます。
遺言のデメリット
・法律に従って書かれていないと、無効になる恐れがある。
遺言のメリット、デメリットは、上記が主なものになるかと思います。
メリット、デメリットを総合的に考えると「遺言」自体は、作ったほうがメリットは多いと思います。
2. 遺言は必要だけど、遺言信託まで必要なのか?
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そもそも遺言信託とは何かというと、銀行が顧客の遺言書の作成から、遺言書の保管、執行をサポートするサービスになっています。
銀行によっては、税理士などの専門家集団のチームがあり、税務的に有利な配分方法なども提案してもらえるところがあるようです。
保管についても、銀行の厳重な金庫で保管するので紛失の可能性はないです。
執行に関しても、「煩雑な手続きに関して、銀行が代わりに手続きをしてくれる」というのが売り文句の相続パッケージ商品になっています。
一見すごくいいサービスに見えますが、
です。
最低手数料が大抵100万円以上かかります。
しかもこのサービスの盲点なのが、相続税の申告に関しては手数料に含まれていないことです。
相続税の申告を税理士に頼むと、一般的に総資産の1%~3%かかります。

最近この手数料の高さが問題になり、遺言信託の執行の取り消しが銀行によっては10%超えているそうです。
銀行も大切な収益源をはなしたくないので、本来執行の時にもらうべき手数料を、遺言信託契約した時にもらう銀行も出てきています。
サービス自体は悪くないのですが、法外な手数料を考えるとおすすめ出来ないというのが個人的な感想です。
さらにおすすめ出来ないのが、執行に携わるチームが、決して遺言信託を専門にやっている集団ではないということです。
よって、財産目録の作成ミスなどが起きる事案も数多く出ています。
結論としては、「遺言」自体は作るべきだと思いますが、遺言信託は契約しないほうが良いかと思います。(執筆者:渡辺 たけし)