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年金とは、法律であり保険です。
再度、確認しておきます。
年金は、国営の強制的な貯金制度の払戻金でもなければ、国民全員参加型のファンドからの受取配当金でもありません。
このように言っても、なかなか信じてもらえません。
実際、まさに国営強制貯金、または、国営ファンドと同じようなことをやっているからです。
若い頃からコツコツと貯めて、高齢になってから一定額を定期的に受取る。
外見上は、貯金やファンドと少しも変わりません。
「貯金やファンドではない。」とするなら、
という疑問が出てきます。
答としては、「法律」ということになるんです。
が、さらに詳しく言えば、「保険」です。
と説明すると、聞く人はさらに混乱してしまいます。
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年金が想定する保険事故とは
保険とは、不幸にして何らかの「保険事故」にあった場合に、決められた保険金を受取る仕組みです。
世の中には、火災保険、地震保険、自動車保険などがあり、それぞれの保険事故は明確になっています。
年金という保険制度が想定する保険事故には、まず、被保険者本人の死亡、障害があります。
それぞれに対し、遺族年金、障害年金が支給されます。
そして、大多数の高齢者に支給されるのが「老齢年金」です。
いわゆる「年金」とは、老齢年金のことを言います。
この場合の保険事故とは、「老齢」すなわち、年を取ることそのものです。
年金法では、加齢によって働けなくなることを保険事故であると考えるわけです。
現役時代に、毎月の給料から天引される社会保険料は「掛金」であり、老後に受給するのは「保険金」です。
払戻金でもなければ、受取配当金でもありません。
老齢年金は保険事故が老齢だからこそ、「支給開始年齢」になれば、支給が始まり、原則、死ぬまで停止することはないのです。
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障害年金であれば、「障害状態」にならない限り、支給されません。
また、「障害状態」に変化があれば、その時点で支給が停止することもありえます。
厚生年金と国民年金の正式名称とは
厚生年金の正式名称は「厚生年金保険法」です。
保険であり、法律であることがわかります。
一方、国民年金の正式名称は「国民年金法」です。
法律であることはわかります。
しかし、「保険」というコトバが欠けています。
理由は、国民年金の場合、保険料を全く納付していなくても、年金が支給されるケースがあるからです。(二十歳前障害など)
必ずしも「給付と負担」という社会保険制度のワクに納まらない、より福祉的な意味合いが強いので、「保険」というコトバが入っていません。
しかし、もちろん本質的に保険であることに変わりはないのです。(執筆者:金子 幸嗣)