会社員として働いていると、税金や社会保険の手続きの多くを、勤務先の会社がやってくれるため、税務署や年金事務所などに問い合わせをする機会は、少ないのではないかと思います。
しかし、
・病気やケガにより医療費が多くなったので、「医療費控除」を受けたい
という場合には、税務署などに問い合わせをするはずです。
その理由として、これらの控除を受けるには、自分で「確定申告」をしなければならず、勤務先の会社は手続きをしてくれないからです。
ただこれらの控除があることは、よく知られているため、手続きを忘れる方は少ないと思います。
しかし、住民税の全部または一部の納付が免除される制度は、あまり知られていないため、手続きを忘れている方は多いのではないかと思います。

目次
1月~12月の間に支払われた、給与の合計額を元に算出される住民税
会社員の方の給与から控除されている、「市町村民税」と「都道府県民税」で構成された住民税は、次のような手順で算出しております。
(B)総所得金額-所得控除合計(基礎控除、配偶者控除、社会保険料控除などの合計額)=総所得
(C)総所得×税率の10%(市町村民税:6%、都道府県民税:4%)=税額控除前所得割額
(D)税額控除前所得割額-税額控除額(寄付金控除、住宅ローン控除などの合計額)=所得割額
(E)所得割額+均等割額=特別徴収税額(納付する必要のある住民税)
以上のようになりますが、このような手順で算出した住民税を12分割して、各月に支払われる給与から、12か月に渡って控除していきます。
なお給与所得、総所得、所得割額、均等割額などの、具体的な金額を知りたいという方は、5月~6月頃に勤務先の会社から渡される、「住民税決定通知書」を参照して下さい。

住民税は、所得税とはスケジュールが違い、6月から金額が変わる
給与から控除されている税金は住民税の他に、国に納付する「所得税」があります。
所得税の算出方法は、上記の(A)から(D)と、だいたい同じなのですが、所得税の税率は住民税と違って一律ではなく、5%~45%の累進課税(所得が高くなるほど税率が高くなる制度)です。
また所得税は毎月の給与から概算額を控除していき、その年の最後の給与(例えば12月の月給)を支払う時に、1年間の過不足を精算します。
これが「年末調整」の手続きであり、所得税が払い過ぎであれば還付され、不足していれば最後の給与から控除されます。
それに対して住民税は、次のようなスケジュールにより、給与からの控除が始まるのです。
~1月末
勤務先の会社は各従業員の住所地の市区町村に対して、前年の1月~12月の間に支払った給与の合計額などが記載された、「給与支払報告書」を送付します。
5月頃
市区町村はそれを元に、各従業員が支払う住民税を算出し、その結果が記載された「決定通知書」を、納付書と共に勤務先の会社に送付します。
6月~翌年5月
勤務先の会社は各従業員の給与から住民税を控除して、市区町村に対して納付します。
今年に収入がなくても、前年に収入があれば住民税は徴収される
このように住民税は6月から、前年の収入に応じて金額が変わる仕組みのため、困ってしまう方もいると思うのです。
例えば、2017年は安定的な収入があったけれども、2018年に入ってから失業して、収入がなくなった方や、2018年に入ってから育児休業を取得して、収入が大幅に下がった方です。

こういった方に対しても、2017年の収入に応じた住民税が徴収されるため、その金額によっては資金不足になるかもしれません。
また2018年に入ってから災害に遭い、所有する住宅や家財に損害が生じた方も、生活を再建するために、多くの預貯金などを使うため、資金不足になるかもしれません。
住民税の全部または一部の納付が免除される「住民税の減免制度」
こういった方のために、住民税の全部または一部(3割~5割程度)の納付が免除される、「住民税の減免制度」があります。
ただすべての市区町村が、この制度を実施しているわけではなく、制度を実施している場合でも、減免を受けられる要件や、減免になる割合などに、市区町村ごとの違いがあります。
また減免を受けるには、必要書類を添付して、申請をしなければならないので、住所地の市区町村が制度を実施している場合でも、自動的に減免にはならないのです。
しかも市区町村は制度に関する情報を、積極的に提供していない場合が多いので、こちらから教えて欲しいという意思表示をしないと、申請方法や必要書類などが、よくわからないのです。
固定資産税や軽自動車税などの減免も、実施している場合がある
住民税の減免に興味を持ったという方は、まずは
などといったキーワードで、インターネットで検索してみるのが良いと思います。
ただ情報があった場合でも、市区町村のウェブサイトには、大まかな情報しか記載されていない場合が多いので、「問い合わせ先」になっている市区町村の市民税課や市税事務所などに電話をして、詳細な情報を教えてもらいます。

またウェブサイトに情報がなくても、住民税の減免を実施している場合があるため、情報が何も見つからなくても、これらの行政機関に電話をして、制度の有無などを確認してみるのです。
なお住民税の減免は実施していなくても、固定資産税や都市計画税、軽自動車税などの減免を実施している場合があるので、他の減免についても一緒に調べてみるのが良いと思います。(執筆者:木村 公司)