2017年1月から個人型の確定拠出年金、いわゆる「iDeCo」の加入資格が拡大されたので、国民年金の第3号被保険者となり、自分で保険料を納付する必要のない「専業主婦」、または「公務員」についても、新たに加入できるようになりました。
つまり60歳未満の公的年金の加入者であれば、国民年金の保険料の免除者などの一部の方を除いて、誰でもiDeCoを利用できるようになったのです。
これを受けて新規加入者を獲得するための、iDeCoの運営管理機関(窓口となる金融機関)の競争が激しくなったので、以前よりも手数料が下がりました。
こういった企業努力に加えて、2018年から掛金の拠出回数に関する、次のような改正が実施されているため、更に手数料の負担は、軽くなっていくのではないかと思うのです。
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目次
iDeCoに加入する時と給付金を受給する時には、手数料が控除される
iDeCoに加入する時には、国民年金基金連合会に納付するため、初回の掛金から「2,572円(税込:2,777円)」の手数料が控除されます。
その他に運営管理機関に納付するため、これにプラスして1,000円程度の、加入手数料を控除される場合があります。
ただこれらの手数料が控除されるのは一度だけなので、例えばiDeCoに20年間加入すれば、1年あたりの手数料は約138円(2,777円÷20年)というように、長期に渡って加入するほど、1年あたりの手数料は自然に下がっていくのです。
また60歳以降に掛金とその運用益を、老齢給付金として受給する時には、信託銀行に納付するため、給付1回につき「400円(税込:432円)」の給付事務手数料が、老齢給付金から控除されます。
ただ老齢給付金を年金ではなく一時金で受給する、つまり一括して受け取ってしまえば、給付事務手数料が控除されるのは一度だけで済むのです。
また年金で受給する場合でも、支給月の間隔を広げていけば、給付事務手数料が控除されるのを少なくできます。
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掛金から控除される手数料は、運営管理機関によって違いがある
このように加入する時と、給付金を受給する時の手数料は高いのですが、それを下げるための手段があります。
しかし拠出した掛金から定期的に控除される、次のような手数料については、運営管理機関を変更しないと、下げるのが難しかったのです。
国民年金基金連合会に納付するため、掛金が引き落としされる時に、その中から「96円(税込:103円)」が控除されます。
(2) 資産管理手数料
信託銀行に納付するため、掛金が引き落としされる時に、その中から「60円(税込:64円)」が控除されます。
(3) 運営管理手数料
運営管理機関に納付するため、掛金が引き落としされる時に、その中から「無料~450円(運営管理機関によって異なる)」が控除されます。
このように(1)と(2)の手数料は、どの運営管理機関を選んでも同じなのですが、(3)の手数料は運営管理機関によって、かなりの違いがあるのです。
元本確保型だけを選択していると、手数料負けする場合がある
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拠出した掛金から定期的に控除される(3)の手数料が、
高めの運営管理機関を選んだ場合、1回あたりの控除額は617円(103円+64円+450円)で、
年間だと7,404円(617円×12回)になります。
その一方で低めの運営管理機関を選んだ場合、1回あたりの控除額は167円(103円+64円+0円)で、年間だと2,004円(167円×12回)になります。
このように手数料が低めの運営管理機関を選んでも、年間だと2,004円になりますから、拠出した掛金を運用する金融商品として、例えば元本確保型の定期預金しか選択していない場合、掛金の運用益より手数料の方が、高くなる可能性があるのです。
iDeCoは掛金の拠出による節税効果があるため、やむを得ないと考えている方もいるようですが、このような手数料負けを繰り返していると、掛金は増えていきません。
掛金の拠出を1年に1回にすれば、手数料の納付を節約できる
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iDeCoの掛金は従来であれば、毎月拠出する必要があったのですが、2018年以降は12月分の掛金から、翌年の11月分までの掛金(実際の納付月は1~12月)の拠出期間を1年とし、この中で1回以上掛金を拠出すれば良いことになりました。
つまり従来であれば掛金を、1年に12回拠出する必要があったのですが、12回分の掛金をまとめて1度で拠出するというように、1年に1回でも良くなったのです。
拠出した掛金から控除される手数料のうち(2)と(3)は、掛金の拠出を1年に1回にしても、12回拠出した場合と同じように納付する必要があります。
しかし(1)については、掛金の拠出を1年に1回にすれば、11回分の1,133円(103円×11回)を、納付する必要がなくなります。
結果として(3)の手数料が、高めの運営管理機関を選んだ場合、年間あたりの手数料は6,271円(7,404円-1,133円)まで下がります。
また低めの運営管理機関を選んだ場合、年間あたりの手数料は871円(2,004円-1,133円)まで下がるため、手数料負けするのを、かなり回避できると思うのです。
掛金の拠出を年2回にすると、年末調整の準備がスムーズに進む
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掛金の拠出を1年に1回にして、年間の拠出限度額を一括で拠出
する場合、
掛金が引き落としされるのは12月になります。
このようなケースでは年末調整で控除を受けるために必要となる、「小規模企業共済等掛金払込証明書」と記載された証明書を、お勤め先の会社が定めた提出期限までに、提出できなくなる場合が多いのです。
その理由として1~9月に掛金が引き落としされた場合、11月頃に証明書が郵送されるのに対して、1~9月に掛金の引き落としがなく、10~12月に初めて、掛金の引き落としが行われた場合、翌年の1月頃に証明書が郵送されるからです。
結果として年末調整で控除を受けられない場合には、自分で確定申告を行って、控除を受ける必要があります。
自分で確定申告するのを負担に感じる方は、証明書の代わりとして、掛金の引き落としがわかる通帳のコピーなどが使えないのかを、お勤め先の会社に聞いてみます。
また証明書が郵送されてから1月末までの間に、再年末調整ができないのかを、お勤め先の会社に聞いてみます。
ただこれらの手段を使えたとしても、年末調整や再年末調整に間に合わない場合があるのです。
そこで9月を仮の期限と考え、1~9月までのいずれかの月に、1回目の掛金が引き落としされるように設定し、その月で使いきれなかった残高を、12月に引き落としというように、掛金の拠出を年2回にするのです。
そうすれば上記のように11月頃に証明書が郵送されるため、年末調整の準備がスムーズに進むのです。(執筆者:木村 公司)