総務省の発表によると、2017年10月1日現在、総人口は1億2,670万6千人、そのうち65歳以上は3,515万2千人で総人口に占める割合は過去最高の27.7%。
世間の4人に1人は「高齢者」です。
世話になった親の介護はしたいし、するつもりもある。
でも実際の負担を考えると腰が引ける……という方も多いのではないでしょうか。
介護保険料の負担も介護保険の利用限度額も、介護を受ける方の状態や資産状況によりそれぞれの家庭で違うので一概にはいえませんが、身近で実際介護に携わっている方々に、状況を伺ってみました。
目次
ひとりっ子同士(50代女性)
夫婦ともにひとりっ子同士、夫の両親は健在、妻の父は他界、妻の母が軽度認知症の場合。
母の介護が始まった時は、遠方に住んでいた妻(自分・東京、母・宮崎)。
親戚にお金を渡して介護を頼んでいましたが、なんだかんだと理由をつけて1年で600万円も使われてしまいました。
「このままではお金がもたない」と、結局は彼女がお母さんを引き取り、現在同居しています。
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とのこと。
第2子(中間子)で長男の場合(30代男性)
夫は姉と自分の2人兄弟、妻は姉との2人姉妹。
夫の父はすでに他界、夫の母が要介護に。
夫のお姉さんは「嫁ぎ先での介護がある」とのことで、夫が転職して実家の近くに住み、母の介護をすることに。
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費用、時間共に一手に負担されています。
ご自身も大変ですが、妻の心境も穏やかではないのでは…と思っていますと
とのこと。
いいお嫁さんでよかったです。
5人兄弟の2番目、長女の場合(70代女性)
夫は兄との2人兄弟、妻は5人兄弟の2番目で長女。
夫の父と兄は他界。
妻の両親の介護は長兄がおこなう代わりに、他の兄弟は遺産を放棄しました。
長兄は10年間、熱心に介護をしたので他の兄弟達は遺産放棄について何の文句も言わなかったそうです。
現在は夫の母(施設入所・90代)と夫(80代)の2人を老々介護中。
子どもは2人いて、近くには住んでいますが「迷惑をかけたくない」と妻がひとりで世話をしています。
施設の費用は義母の年金で賄い、日々のオムツ代、コップなどの身の回り品なども義母の預貯金から支出。
衣類の洗濯や顔を見せて話しかけるために、2日に1回は施設に通っているのだそうです。
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「平均」や「一般論」では語れない介護
介護を受ける親世代の資産状況や、介護をする子ども世代の兄弟関係、経済状況、孫世代の年齢(育児や進学と重なっていないか)などが複雑に絡みあう介護。
どうしても「経済的に余裕がある子」、「責任感のある子」に負担が偏りがち。
「介護が始まる」とわかった時点で、一旦、家族(親族)会議を開いて、金銭および時間的負担について冷静に話し合いをしておくほうが、相続の際も遺恨が生じないようです。
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最終的には法的手段も
もしもご兄弟が親の介護に非協力的なら、家庭裁判所で「介護費用請求調停」の申し立てができます。
両親、祖父母、曽祖父母、子、孫、曾孫などの直系血族と兄弟姉妹は基本的に民法で「扶養義務者」に定められていますので。
調停では、身の回りの世話をする「人的介護」か「経済的介護」のどちらかを選びます。
未成年者の扶養とは違い、「生活を損なわない限度」とされていますので、できる範囲で大丈夫なのですが、拒否はできません。
判決はご家庭の事情によりさまざまですので、専門家にアドバイスを求めるのが一番です。
まずは法テラスなどで無料相談を受けてみるのもいいかもしれません。
ただ、「調停だ」、「審判だ」と言い始めると、結果的に費用は負担してもらえても感情的なしこりが残る可能性が大きいです。
法的手段をとるのは最後にして、できるだけご家族の中で話し合いをしてみてください。
ポイントは「親の介護は子どもみんなで平等にやる義務がある」ということを理解し合うことではないでしょうか。
最後に
介護は遺産相続とは異なり、親族間での明確な負担割合が法律で決まっていません。
親子が共倒れになったり兄弟姉妹の関係がぎくしゃくしたりせず、うまくいっているご家庭の様子を伺っていると、ポイントは「感謝」だと思いました。
やはり「欲」があるところには争いがあります。
「うちだけが大変」とならず、「お互いがいて助かっている」と思える負担割合を見つけたいですね。(執筆者:那波 りよ)