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日銀の政策変更で、長期金利が急上昇
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日銀の政策変更により、8月以降の住宅ローン金利は、変動金利と固定金利で金利差が拡大しています。
この流れは今後も続くのか、見通しなどを解説します。
7月30~31日に行われた「日銀の金融政策決定会合」
物価上昇率2%の達成時期を先送りする一方で、マイナス金利による銀行収益への配慮から、長期金利の誘導目標を0%から0.2%前後まで引き上げました。
長期金利は10年物国債の利回りであり、この利回りが上昇すればするほど、長期金利が上昇していることを意味し、長期金利に連動する、住宅ローンの長期固定金利も上昇します。
この会合で政策変更するまえの長期金利は0.03%前後でしたが、政策変更するとの情報が意図的にリークされたのか、7月中旬にはこの政策変更が債券市場(国債などを取引する市場)で織り込まれ、長期金利は0.1%を超えて上昇、その後も長期金利の下値は0.1%となっています。
長期金利が0.1%前後で推移する影響
7月中旬以降は長期金利が0.1%前後で推移し続けたため、長期金利を指標とする、住宅ローンの長期固定金利は8月と9月を合わせて、大きく上昇しました。
メガバンクや大手地銀などでは、長期金利が0.1%まで急上昇した際、8月分で年0.040%程度上昇させ、9月分の上昇幅を抑えたため、上昇幅は比較的滑らかとなっています。
三井住友銀行などは決算対策のため、戦略的に金利を引き下げています。
8月の金利を据え置いた「フラット35」
8月分の金利を据え置いたため、9月分の上昇幅が必然的に大きくなり、年0.050%程度の上昇となっています。
これを受けて、9月の全期間固定金利は、みずほ銀行が前月比0.040%上昇の年1.810%。優良顧客には年0.4%の金利引き下げあり。
楽天銀行の返済期間21年以上で団信ありのフラット35は、前月比0.050%上昇の年1.390%となっています。
なお、変動金利は短期プライムレート(1年以内の期間で優良企業に貸し出す最優遇貸出金利)に連動する仕組みですが、物価上昇率2%の達成時期が先送りされたことで、横ばい期間がさらに伸びたと考えられます。
変動金利と固定金利で金利差が拡大する矛盾
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本来の望ましい姿は、
ものです。
しかし、今回の長期金利の上昇は、いわば日銀の口先介入に過ぎない点に注意する必要があります。
今回の長期金利の上昇、そして住宅ローンの長期固定金利の上昇は、何ら実体経済に即したものではありません。
日銀の政策が「負」を加速
今回の口先介入で長期金利の利回りの下値が0.1%という認識が、債券市場で広がってしまったため、今後の住宅ローンの長期固定金利はこの金利水準をベースに推移していくものと考えられます。
一方で、真っ先に上昇すべきである、短期金利すなわち変動金利は、むしろ現在の水準が長期化する印象を与えてしまいました。
日銀の歪んだ金融政策が、金融機関収益の悪化、住宅ローンの長期固定金利上昇と、負の側面を加速させています。(執筆者:1級FP技能士、宅地建物取引士 沼田 順)