目次
なぜ三井住友信託銀行が住宅ローンを拡大したいのか

現在、住宅ローン業界では金融庁から指摘されたにもかかわらず、三井住友信託銀行が変動金利で0.5%を割る水準を打ち出し、メガバンクや大手地銀などから顧客を奪っています。
三菱UFJ信託銀行やみずほ信託銀行などは、信託銀行ということで、住宅ローン事業から実質的に撤退しているにもかかわらずです。
今回は、なぜここまで三井住友信託銀行が、住宅ローンの規模拡大に躍起になっているのか、その原因を解説します。
記憶に新しい東日本銀行の業務改善命令
7月13日、金融庁が不適切な融資が横行していたとして、東日本銀行に業務改善命令を出しました。
その不適切な融資の実態は凄まじく、
・ 融資の一部を定期預金させる
などをしていました。
東日本銀行は14年に地銀最大手の横浜銀行と経営統合することで合意しており、不適切な融資は、その頃から始まったとのことです。
最終的に、東日本銀行と横浜銀行は16年に経営統合し、コンコルディア・フィナンシャルグループとしてスタートを切りました。
しかし、営業現場には、少しでもグループ内での存在感を高めるために、過度なプレッシャーがかかっていたと指摘されています。
三井住友フィナンシャルグループに属していない「三井住友信託銀行」

三井住友信託銀行は、三井住友と行名に付くので、三井住友フィナンシャルグループの信託部門を担当していると、勘違いしている顧客が多いのですが、資本関係はまったくありません。
これは、三井住友フィナンシャルグループの傘下に入り、自行の影響力低下を懸念した、当時の社長の影響が大きいと言われています。
信託銀行では頭取ではなく社長と言います。
そして、17年の金融庁検査で、ガバナンスの脆弱性と信託業務をおろそかにしている点が指摘され、9年君臨した社長は引責辞任したものの、現在も共同会長という役職で居座り続けています。
金融庁の検査も生かされていない、三井住友信託銀行

このような経緯があるにもかかわらず、いまだに住宅ローンでメガバンクや大手地銀と張り合っているのは、いずれ三井住友フィナンシャルグループ入りした時に、東日本銀行と同じように存在感を示すためでしょう。
しかし、信託銀行には不動産コンサルティングなど信託銀行にしかできない仕事があり、これらを放り出していては、本末転倒と言えます。
三井住友フィナンシャルグループは、結局シティバンクを買収してSMBC信託銀行を設立しましたが、最終的には三井住友信託銀行がSMBC信託銀行と合併する流れは日増しに高まっています。
合併に際し、三井住友信託銀行に住宅ローンを正常返済している債務者は問題ありませんが、三井住友信託銀行の体質からして、延滞がある場合は督促が厳しくなる恐れがあります。
金利の低さだけにとらわれず、将来の銀行再編まで見越した銀行選びが、今後ますます重要になってくるでしょう。(執筆者:1級FP技能士、宅地建物取引士 沼田 順)