厚生年金保険に加入する会社員や公務員などは、原則として65歳になった時に、国民年金から支給される「老齢基礎年金」に上乗せして、厚生年金保険から支給される「老齢厚生年金」も受給できます。
しかし国民年金に加入する自営業者、農林漁業者、フリーランスなどは、老齢厚生年金の上乗せがないため、満額でも月に7万程度の、老齢基礎年金のみを受給します。
これでは生活するのが大変になってしまうので、国民年金の加入者が老齢厚生年金のような上乗せを、自助努力で準備するための制度として、1991年に国民年金基金が創設されました。

国民年金基金が設立された当初は、予定利率(加入者に対して約束した運用利回り)が5.5%程度もありました。
しかも加入時期によって決まった予定利率が、生涯に渡って適用される「固定金利」のため、かなり魅力的だったのです。
しかし高かった予定利率は、
2000年以降:4%
2002年以降:3%
2004年以降:1.75%
2014年以降:1.5%
というように、年数を経るごとに低下していきました。
このような事情などにより、国民年金基金に新規加入する方は、だんだんと減っていったのです。
また2017年1月に個人型の確定拠出年金、いわゆるiDeCoの加入者の範囲が拡大された後は、国民年金基金よりもiDeCoの方に、注目が集まっていたという印象があります。
しかしここ最近は、お金に関する情報が掲載された雑誌などを読んでいると、老後資金を準備する方法の選択肢として、国民年金基金を挙げる金融関係の専門家が少しずつ増えてきたため、流れが変わったような感じがするのです。
このように金融関係の専門家が、国民年金基金を再評価しているのは、次のような理由があると思います。
目次
日本人の平均寿命は延び続け、「人生100年時代」が到来する

各年齢の方が平均して、あと何年生きられるのかを示す「平均余命」のうち、0歳の平均余命は「平均寿命」と呼ばれており、この単位は「年」になります。
厚生労働省の調査によると、2017年の日本人の平均寿命は、男性は前年より0.11年プラスの81.09年、女性は前年より0.13年プラスの87.26年になり、いずれも過去最高を更新しました。
この辺りが限界ではないかと思っていたら、国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2040年になると日本人の平均寿命は、男性は83.27 年、女性は89.63 年まで延び、2065年になると男性は84.95年、女性は91.35年まで延びるそうです。
また「人生100年時代」という言葉を普及させた、「ライフ・シフト」という本の中には、2007年に日本で生まれた子供の半数が、107歳まで生きるという研究結果が紹介されているのです。
今後は老後資金を貯蓄で準備すると、足りなくなるリスクがある
老後資金を準備するうえで、もっとも難しいと考えられているのは、自分が何歳まで生きるのかが分からない点です。
そこでFP(ファイナンシャル・プランナー)などが書いた、老後に向けた準備について解説した本には、「平均寿命プラス5~10歳程度まで生きると仮定して、老後資金として準備する貯蓄額を決めて下さい」などといった話が、よく記載されております。
ただ上記のように平均寿命が延びているのですから、この通りに貯蓄できたとしても、足りなくなるリスクがあるのです。
そのため老後資金は貯蓄ではなく、死亡するまで年金を受給できる「終身年金」のような、保険で準備した方が良いと考える方が、以前よりも増えているようです。
これを受けて早く死亡すると損が大きい代わりに、長生きするほど多くの年金を受給できる「トンチン年金」の、販売を始める生命保険会社が増えております。
また国民年金基金は1口目として加入するA型かB型が、いずれについても65歳から、死亡するまで年金を受給できる終身年金のため、金融関係の専門家から再評価されているのです。
国民年金基金は物価上昇により、年金の実質的な価値が下がる
国民年金基金の1口目と、老齢基礎年金や老齢厚生年金などの老齢年金は、原則として死亡するまで年金を受給できる、終身年金である点が共通しております。
ただ老齢年金はその金額の、実質的な価値を維持するため、賃金や物価の変動に合わせて、1年に1回は年金額を改定しているのに対して、国民年金基金の年金額は固定です。
そのため将来的に物価上昇が続いていくと国民年金基金は、年金の実質的な価値が下がるため、年金受給者の購買力は低下します。
この対策としては、老後資金の準備に使える資金のすべてを、国民年金基金に投入するのではなく、iDeCoにも分散しておくのです。
その理由としてiDeCoの掛金を運用する金融商品として、物価上昇で価値が上がる金融商品、例えば株式を組み入れた投資信託を選んでおけば、購買力の低下を防止できるからです。

iDeCoも運営管理機関によっては、終身年金を選択できる
iDeCoの掛金を運用する金融商品の選択肢としては、預金や投資信託が多くなっております。
しかし生保系の運営管理機関では、元本確保型商品のひとつとして、保険を提供している場合があります。
またそのような運営管理機関では、60歳程度になるまでに積み立てた年金資産を、終身年金に移管することにより、老齢給付金を死亡するまで受給できるようです。
国民年金基金に加入できない会社員や公務員の方、または終身年金に興味があるという方は、このような運営管理機関を、探してみるのが良いと思います。
掛金が値上げされるとしたら、その手前が最適な加入時期になる
国民年金基金は少なくとも5年ごとに、財政再計算を実施して、掛金を見直しております。
直近の財政再計算は2013年度中に実施され、予定利率が1.75%から1.5%に引き下げられたため、2014年4月から掛金が値上げされました。
今年はそれから5年後の、新たな財政再計算を実施する年にあたり、日銀による大規模な金融緩和の影響などを受け、また予定利率が引き下げられるかもしれません。
そうなると前回と同じように2019年4月から、掛金が値上げされる可能性が出てきます。
もし実際に値上げされるとしたら、値上げされた新しい掛金は、2019年4月以降に加入した方に適用されるため、その手前の3月あたりが、最適な加入時期になると思います。(執筆者:木村 公司)
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