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手数料が高いと「何か良いこと」が起こる?
資産運用のご相談を受けていますと「保有している投資信託についてどう思うか、意見を聞かせてほしい」といった内容を受けることがあります。
この時、相談者側の意図としては、購入した時の価格に対して「今、自分が損(または得)をしているが、どうしたら良いだろうか」という旨が多いです。
ですが、銘柄を詳しく拝見していると、時折、コスト(各種手数料)が高い投資信託を保有していることに気がつきます。
ただ、多くの相談者の方は手数料に対しては特に意見を求めてきません。
これはファイナンシャルプランナーの立場から見ますと、とても不思議なことのように思えます。

なぜなら、資産運用の世界においては「コストだけは事前に判明している唯一のマイナス要因」ですから、まずコストを考慮すべきだと考えるからです。
その中でも、特に気を付けていただきたいのが
「信託報酬」
と呼ばれる2つのコストです。
なぜでしょうか。順に見ていきましょう。
購入時手数料は「あり・なし」どっちが良い?
投資信託を購入する際に、購入時手数料(販売手数料)がかかることがあります。
投資信託を販売・仲介している証券会社、銀行・郵便局などで発生することがあります。
場合によっては購入時手数料が元本の3%程度になることもあるようです。
ただ、購入時手数料が高くても、何一つとして良いことがありません。
ザックリ言いますと、100万円で買っても、購入時手数料がかかると100万円以下のマイナスからスタートするだけのことなのです。
もちろん、運用面において何かしらのプラス効果も一切ありません。
中には「購入時手数料がかかっても、それは最初だけです。長期間持てば持つほど、平均では減っていきますから、あまり気にしなくて良いですよ」という人もいるかもしれません。
ですが、現在では、購入時手数料が無料(ノーロードとも言います)の投資信託が販売されています。
そうである以上、そちらから選ぶ方がより合理的かと思います。
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信託報酬が高い方が安心する?
次に、信託報酬と呼ばれるコストについて見てみましょう。
信託報酬とは、投資信託を管理・運用・保管してくれる謝礼として毎日発生するコストです。
ただ、私たちが目にする自分の保有する投資信託の価格(基準価額)は、すでにこのコストが引かれている状態です。
なので、多くの方はひかれていることにも気がつきませんし、コストを引いた旨のお知らせも来ません。
また、信託報酬が高い方が「調査・分析・銘柄選別をしっかりしてくれるから安心な気がする」という方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、信託報酬が高いと何が起こるのか、と言いますと、運用成果が単純に押し下げられる、というだけなのです。
数式にしますと、次のような単純な形になります。
例えば、年率で平均3%のリターンを上げた投資信託Xがあったとします。
表面的にはリターンは3%なのですが、信託報酬が1.5%だったとします。
すると
になり、実質的なリターンは1.5%ということになります。
一方で、同じ平均3%のリターンを上げた投資信託Yの信託報酬が0.5だったとします。
すると、
になり、同じ成績でも実質リターンはYの方が高い、という結果になります。
このように、コストはただのマイナス要因ととらえることが合理的な投資へ近づく一歩となります。

コストは事前に判明しているマイナス要因
意外に思われるかもしれませんが、投資信託では、コストと運用成果には明確な関連性はありません。
そのため、投資信託の投資対象(一例:国内株式)が同様であれば、まずはコストが低い方から検討することが非常に重要だと考えられます。
ちなみに個人的見解ではございますが、執筆時点での合理的な信託報酬はせめて(高くても)年/0.5%程度以下から選ぶことが望ましいと思います。
もちろん、購入時手数料は無料(ノーロード)が良いです。
投資信託のコストは、購入後はなかなか意識することがありません。
だからこそ、購入前にしっかり意識することが重要ではないでしょうか。(執筆者:佐々木 裕平)