日本学生支援機構の貸与型奨学金。
返済できない若者の増加などがよく話題に上がっていますよね。
たしかに、奨学金とは名ばかりで、貸与型奨学金の本質は借金です。
まだ将来が見えない学生に数十~百万円もの金額を貸し出し、返済できなければ容赦ない督促と、個人信用情報機関への登録が待っています。
奨学金の返済ができずに自己破産に追い詰められてしまう人もいて、奨学金制度そのものに悪いイメージが定着しているように思います。
しかし貸与型奨学金を利用して進学できた筆者にとっては、低利子で教育費を借りられる奨学金制度はとてもありがたい制度でした。
貸与型奨学金を300万円借り、8年で完済した筆者の体験談もふまえて、奨学金のメリットやデメリット、上手に返済する方法をご紹介します。
目次
貸与型奨学金(第二種奨学金)とは メリット・デメリットをご紹介
日本学生支援機構の奨学金制度には、返済不要の給付型奨学金と、返済必要の貸与型奨学金とがあります。
貸与型奨学金には無利子の「第一種奨学金」と有利子の「第二種奨学金」とがあり、多くの学生が利用しているのは有利子の「第二種奨学金」で、筆者が利用したのも第二種奨学金でした。
ここでは第二種奨学金についてお話していきます。
メリット
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・ほかの教育・学生ローンに比べて圧倒的にローン利率が低い
→筆者が貸与した当時(2004年ごろ)は約0.8%で、現在低金利の影響もあり約0.3%にまで下がっており、いずれも固定金利です。
国の教育ローンは1.76%(2018年時点)、民間の教育ローンはさらに利率が高くなるうえにほとんどが変動金利です。
全期間固定で、これだけ低利子で借りられるローンはほかにないでしょう。
・在学中は返済不要、かつ利子が発生しない
→在学中は返済を気にすることなく、学生の本分である勉強に集中することができます。
しかし、返済が不要だからといって奨学金をお小遣いのような感覚で使い込んでしまってはいけません。
あくまで借金という意識をもっておくことが大切です。
・最大月額12万円まで借りられる
→4年生大学の場合、月額2万円から1万円刻みで最大月額12万円まで借入金額を選ぶことができます。
・貸与基準が厳しくないため簡単に借りられる
→ある意味、デメリットともいえるメリットです。
第二種奨学金は、給付型奨学金や第一種奨学金のように所得制限や成績基準が厳しくないため、比較的簡単に借りられます。
筆者自身も第一種奨学金の基準に及ばず、第二種奨学金を借りました。
第二種奨学金の存在がなければ進学はあきらめていました。
「進学したいのに、借りられる奨学金がない」という学生にとっては、第二種奨学金は受け皿として機能していると思います。
ただ、簡単に借りられるが故に、安易に借りて返済に困る学生が増えているのも事実です。
メリットがデメリットにならないよう、きちんと考えて利用しましょう。
デメリット
・奨学金の返済は子ども(学生本人)が背負うことになる
→親が借りて、親が返済する教育ローンとの大きな違いであり、奨学金の返済が滞る大きな要因といえます。
・連帯保証人と保証人が必要
→まだ社会的信用力がない学生が借りるものなので、連帯保証人(親など)と保証人(親族など)が必要です(難しい場合は保証料を払って保証会社を利用しなければいけない)。
自分が返済できなければ、親だけでなく保証人になってくれた親族にまで返済が迫ることになります。
・入学資金に直接使えない、奨学金申込時期が決まっているなど融通が利かない
→奨学金は毎月少しずつ受け取るもので、申込時期も決まっているため、いつでも利用できるものではありません。
1年中いつでも借り入れの申込ができたり、まとまった金額を受け取ったりできる教育ローンと比べると、融通が利かない部分が多いといえます。(入学時特別増額という制度がありますが、入学資金に直接充当できず、最大50万円までの貸与になります)
・返済を怠ると個人信用情報機関に登録される
→個人信用情報機関とは、ローンなど各種借入に対する個人の支払い状況を登録する機関です。
奨学金返済の延滞を繰り返すとその情報が登録され、将来住宅ローンを組んだりクレジットカードを作ったりできなくなる可能性があります。
奨学金とはいえほかのローンと同様、容赦ない返済が待っているのです。
大切なのは、自分のお金ではないと意識しておくこと
上述したとおり、奨学金を利用する人の意識によってはメリットがデメリットにもなりえます。
大切なことは、奨学金は借金であり、自分のお金ではないという意識を強く持っておくことです。
借金という意識がついてしまえば、ほかの借金(ローン)と比較したときに奨学金の有利なポイントにいくつも気づくと思います。
筆者の場合、「こんなに大きなお金がこれだけの低利率で借りられて、出世払いを約束してくれるなんて、なんてありがたい制度だろう」と思っていました。
メリットもデメリットも、結局は意識次第なのです。
返済プランをしっかり立てておけば奨学金返済は怖くない
繰り返しますが、第二種奨学金は低利子とはいえ、借金です。
しかし、メリットとデメリットを親子でしっかりと理解し、返済プランをしっかり立てておけば、奨学金の返済は怖いものではありません。
筆者の経験もふまえて、返済を上手にするためのポイントをご紹介します。
<第二種奨学金の返済を上手にするためのポイント>
・返せない金額は借りない。卒業後の生活もふまえてシミュレーションしておく
→返済時の生活を考えて借りることが大切です。
今は日本学生支援機構で返済シミュレーションが用意されており、いくら借りたらいくら返さなければいけないのかがわかります。
返さなければいけない金額を頭に入れ、卒業後の生活をどうやりくりしていくかもシミュレーションしましょう。
・在学中はビジネススキルにつながるバイトをしておこう
→筆者は奨学金だけでは足りない学費や生活費を、在学中のバイトで賄っていました。
就職したい企業と同じ業界でバイトしていたので、一足早く経験を積むことができ、就職にも有利になりました。
社会人経験のない学生にとっては、バイトの時給よりもビジネススキルを身に着ける経験の方が何より大切です。
今は昔と違って学生でもクラウドソーシングなどでスキルを磨くことができる時代ですので、こうした経験値もつけておけば将来役立つ資産になります。
・奨学金の返済方法をボーナス払いにしない
→ボーナス払いは、ボーナスが減ったとき、転職してボーナスがない職に就いたときなど、仕事の状況が変わったときに返済が苦しくなる要因です。
なるべく毎月定額の支払い方法を選択しましょう。
・就職後は、毎月の返済額と一定の貯蓄額を給与から差し引いた金額だけで生活する
→奨学金返済と同時に先取り貯蓄は必要不可欠です。
この2つの金額ははじめから無いものと考えて、残った金額で毎月の生活をやりくりできるようにしましょう。
・就職後、貯蓄がたまるまでは医療保険に加入しておく
→健康でなければ仕事も支払いもできません。
貯蓄や収入が不安定な間は、万一のリスクにそなえて掛け捨ての医療保険や共済に入っておきましょう。
医療保険は、お金がない人ほど入るべきです。
・住居費はできるだけ削減!できれば実家暮らし、無理ならシェアハウスなどを利用しよう
→在学中も就職中も、住居費は支出の中でもっとも大きな費用を占める固定費です。
固定費を大きく削減できれば貯蓄や返済に回せる金額が多くなるので、できるだけ実家暮らし、難しければシェアハウスなど利用して住居費はとことん減らしましょう。
・どうしても返済が厳しいときは減額・猶予制度を活用しよう
→就職が決まらない、失業や転職で収入が激減など、どうしても返済が厳しいときは迷わず減額・猶予制度を活用して毎月の返済額を減らしたり、返済を先延ばしにしたりしておきましょう。
国民年金の支払いも猶予制度があるのでぜひ活用してください。
なお、奨学金の減額・猶予制度を利用しても返済総額は変わりませんので注意しましょう。
奨学金があったから進学ができ、お金に対する意識が強くなった
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奨学金は借金ですので、たしかに返済は大変です。
しかし筆者の場合は奨学金があったからこそ進学ができましたし、早く返済したい思いで貯蓄、節約、投資、保険など、お金に対するさまざまな勉強をするきっかけになったため、利用してよかったと思っています。
お金をただ使うだけではなく、消費・浪費・投資に分けて使う癖も奨学金のおかげで身に付き、そのおかげで30歳のときには貯蓄・投資で蓄えた資金は500万円以上ありました。(早い時期に結婚したので、夫の収入からの貯蓄も合わせるとそれ以上です)
ここまでお話すると夫や私の年収が高かったのでは?とか、投資がうまくいっただけなのでは?と思うかもしれません。
しかし、筆者も夫も途中転職などで非正規雇用の時期もあり、2人とも一時は年収200万円代でした。
年収が下がったら、それに見合った生活でやりくりをし、投資については初心者向けのドル・コスト平均法でコツコツ時間をかけて分散投資をしていただけです。
奨学金のメリットがデメリットになるのも、デメリットをメリットにするのも、結局は利用者の意識次第というお話をしました。
奨学金の利用を迷っている人は、借金というリスクを背負ってでも進学したいのかを改めて考え、利用する場合はデメリットをメリットに変える意識で返済に励んでいただけたらと思います。(執筆者:服部 椿)