親族が亡くなったとき、やらなくてはならない税金の作業は相続税の申告・納付だけではありません。
相続人が被相続人の代わりに所得税の確定申告をしなくてはならないことがあります。
このとき、還付金や還付加算金が発生することもあります。
還付されたお金は、相続税の対象となるのでしょうか。
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目次
亡くなった人の代わりに行う「準確定申告」とは
亡くなった被相続人に代わって相続人が行う所得税の確定申告を「準確定申告」といいます。
自営業の人や副業を行っているサラリーマン、あるいは医療費の控除や一定金額以上の年金などがある人だと、通常、所得が発生した年の翌年3月15日までに確定申告をしなくてはなりません。
これは生きている間の話ですが、年の途中で亡くなった場合、亡くなった人(被相続人)に代わって相続人が亡くなった人の分の確定申告をすることになります。
これが準確定申告です。
準確定申告では、相続の開始があったことを知った日(たいていは死亡の日)の翌日から4か月以内に申告と納税を行わなくてはなりません。
多額の医療費が生前にかかっていた場合やiDecoの掛け金が多い場合、7月に予定納税を行っている場合などは、所得税の還付がされることがあります。
内容によっては、還付加算金が発生することも。
いずれも被相続人の準確定申告で発生したものですが、税法上の取り扱いが異なります。
準確定申告で発生した還付金・還付加算金の取り扱い
準確定申告で発生した還付金・還付加算金の取り扱いは次のようになります。
1. 所得税の還付金
準確定申告により発生した所得税の還付金は相続財産に含まれます。
なぜかというと、被相続人の生前の所得について多く納めすぎた税金が戻ってきたにすぎないからです。
つまり、所得税の還付金そのものは、相続人が確定申告をしたから発生したわけではなく、被相続人の生前の所得に起因しています。
被相続人の生前から潜在的にあった還付請求権が被相続人の死亡によって顕在化したにすぎません。
2. 所得税の還付加算金
還付加算金とは、納めすぎた税金の納付期限日等の翌日から還付金の支払い決定までの日数に応じて加算される金額のことをいいます。
したがって、準確定申告により発生した還付加算金は、還付金と異なり、「税金そのものの還付」ではありません。
還付金を元金とするなら、還付加算金は利息にあたります。
準確定申告により発生した還付加算金は相続財産に含まれません。
なぜかというと、相続人の準確定申告という行為によって発生し、利息と同じく計算されるに至ったものだからです。
したがって、この還付加算金は相続人の雑所得となり、所得税の課税対象となります。
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住民税の考え方
この他、気になるのが住民税です。
住民税の考え方は毎年1月1日から12月31日までの間に発生した所得について課税されます。
納税義務の有無の判定は、所得が発生した年の翌年1月1日にその所得の主である納税者が日本国内にいるかどうかで判定されます。
もし、平成30年1月1日から6月30日までの間に稼いだことで所得があったとしても、7月1日に亡くなっていたとしたら、翌年の平成31年1月1日にはその所得の主である納税者は日本にいないことになります。
したがって、所得は発生していても納税義務がないので住民税が発生しません。
ゆえに、税金が発生せず、還付もないという状況になります。
被相続人の税金の問題は一般の方々にはわかりにくいので悩ましいところです。(執筆者:鈴木 まゆ子)