寄附に対するお礼の品ばかりが注目されがちのふるさと納税。
「欲しいもの」からの目線ではなく、「寄附金の使い道」から考えてみることも大切です。
震災の被災地やその復興に向けた取り組みに対する寄附が良く知られています。
ふるさと納税の使い道には実にさまざまなものがあり、どの自治体がどんなことに取り組んでいるのかを広く伝えるきっかけにもなっています。
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今回はふるさと納税の寄附金により、どういったプロジェクトや取り組みが行われているのかに注目し、その一部をご紹介していきたいと思います。
目次
子ども達の夢や命を守るプロジェクト
大分県豊後高田市「子どもたちの笑顔があふれるまちへ」
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子育てにかかる経済的負担を軽減するために
・ 幼稚園、小学校、中学校の給食費の無償化
を目的としたプロジェクトです。
大分県の豊後高田市では「人口増施策」や「子育て支援の充実」に重点をおいています。
市レベルの子育て支援施策としては全国トップレベルの取り組みで、安心して暮らせる町、子ども達の笑顔があふれる町の実現に向けた大きな一歩になりました。
医療費や給食費は子ども達の発育と健康維持にとっても非常に重要なこと。
こういった子育て支援の取り組みが全国の自治体に広がることを期待したいと思います。
福井県坂井市「笑顔の花が咲く!夢の遊び場誕生プロジェクト ゆりの里公園」
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地元の小学生から遊んでみたい遊具のデザインを募集し、大人たちが本気でそれを実現させる、まさに夢がいっぱいのワクワクするプロジェクトです。
6月になると市の花であるゆりが6万本以上咲き誇る坂井市春江町にある「ゆりの里公園」。
保育園や小学校の近くにあるものの、子ども達が思いっ切り遊べるような遊具が設置されていません。
そこで全国からの寄附金を活用し、子ども達の描く夢のような遊具の設置を目指す取り組みです。
東京都文京区「命をつなぐ「こども宅食」で、1000世帯の家族の未来を変えたい!」
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「こども宅食」は文京区と5つの非営利団体が共同で運営。
生活の厳しいひとり親家庭など1,000世帯に1~2か月に1回食品を届け、子どもの貧困問題を解決するセーフティネットを創るプロジェクトです。
さらにこの仕組みを全国に広げることを目標としています。
食品を届けることも重要なですが、配送時にコミュニケーションを取ることで家庭の状況や困りごとなどを聞き取り、専門機関につなげるなどの解決方法を見出していくという大事な側面も持っています。
京都府長岡京市「こどもたちに本を贈ろうプロジェクト」
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子どもの表現力や想像力を養う上で非常に重要な役割を果たしている本。
幼少期から多くの本に触れることは、子どもが育っていく上でさまざまなメリットがあると言われています。
子ども達にもっと自由にもっとたくさんの本を読んでもらいたいという思いからスタートしたこのプロジェクト。
平成28年度からの支援により、各学校への累計納入冊数は1,800冊。
ふるさと納税の使い道の好事例としても取り上げられ注目されている取り組みです。
寄附した人に対しては、子ども達からのお礼状や読書感想文などが送付され、希望者には四季折々の長岡京市の景観写真とともに広報紙も届けられたりと、寄附してくれた人との繋がりを大切にしています。
子ども達の可能性や未来、世界観をどんどん広げるプロジェクトと言えるでしょう。
佐賀県NPO支援「一生、毎日5回の注射を打たなければならない「不治の病」から子ども達を助けたい」
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生活習慣に関係なく、ある日突然体内でインスリンが作られなくなってしまう「1型糖尿病」。
体内でインスリンが作られなくなると数日で死に至る恐ろしい病気です。
発症すると注射器を使ってインスリンを補充し、食事や運動などの制限も必要になります。
育ち盛り、遊び盛りの子ども達にとっては非常に大きな負担であることは間違いありません。
また糖尿病という病名から「贅沢病」などといった偏見の目で見られ、病気の認知度や理解が浸透していないという厳しい現実もあります。
このプロジェクトでは1型糖尿病を治療し、予防と根治にも応用できる研究へ支援を行います。
「子ども達の笑顔と命を守るために」、「当たり前の日常生活を送れるようになるために」、そんな思いから生まれた取り組みです。
動物の命を守るプロジェクト
岡山県加賀郡吉備中央町
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「競馬で沸かせたあの馬は今…引退馬を守りたい! 馬たちに明るいセカンドキャリアを」
ケガや事故により引退を余儀なくされる馬は年間5,000頭。
引退と聞くと年齢を重ねたからという理由をイメージしがちですが、もともと競走馬に向いていなかったり、事故やケガをきっかけにレースで良い成績を残せなくなったりといったことで引退する馬がほとんどだと言われています。
まだ子どもである3歳や4歳なのに引退を余儀なくされる馬もいるのです。
引退した馬は全国の乗馬クラブに引き取られますが、その受け口は圧倒的に不足しています。
食費などの維持費の負担が大きいため、「必要ない」と見なされると殺処分され、馬肉として売り渡されてしまうことが当たり前になっているという現実。
そんな馬たちの命を救い、セカンドキャリアに導くプロジェクトが進められています。
馬の大きな瞳、温かい体温、従順で優しい性格で心理的・身体的に癒しを味わえるホースセラピー馬。
競技アリーナに設置されたさまざまな障がい物を飛越・走行する障がい飛越競走馬。
また日本各地に伝わる馬に因んだ神事や祭事に活躍する場で活躍するケースもあります。
1頭でも多くの馬をこういったセカンドキャリアに導くために
「キャリアパス(キャリア構築)」
「キャリアマネジメント(管理・公開)」
に取り組み、引退馬の命をひとつでも多く救う事業を行っています。
佐賀県NPO支援「動物の殺処分削減と保護活動活性化を推進! 保護シェルター建設プロジェクト」
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佐賀県のふるさと納税は、自分が支援したい佐賀県内のNPO等を指定して寄附することができます。
ここでは県で収容した犬や猫を保護し、受け入れてくれる新しい家族を探して送り出すという取り組みをご紹介します。
この活動を行っているのは特定非営利活動法人アニマルライブ。
野犬や人なれしていない犬などはトレーニングをして、家庭犬やスポーツドッグ、セラピードッグとして送り出しています。
また遺棄された老犬の場合は、看取り覚悟で保護しています。
保護した動物たちは県内の各種モールや公共スペースを利用して、不定期に譲渡会を開催。毎回5~10頭前後の動物たちが新しい飼い主に引き取られています。
しかしこの活動には餌代や医療費、保護費などの資金面や、収容した動物たちの収容スペースも確保しなければならないといった問題があります。
今回はこの保護シェルターの建設資金が不足しているため、寄附金を募っています。
「新たな飼い主の確保」
「動物と共存共栄できる地域づくり」
の実現に向けたこの取り組み。
まずは殺処分されている現実を重く受け止め、こういった保護施設などの環境を整えることが早急に必要であることは間違いありません。
命を救うことはもちろん重要ですが、保護される動物が少しでも減るような社会にしていきたいものです。
和歌山県和歌山市
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「殺処分ゼロを目指して!猫たちの不妊去勢手術の実現にご協力ください!」
野良猫の多くは不妊去勢手術を実施されていないため、毎年たくさんの仔猫が生まれます。
その中には病気やケガなどのため命を落としてしまうケースや、保健所に保護されても元の飼い主が見付からない、譲渡先が見付からないなどの理由で殺処分されてしまうケースも少なくないという現実があります。
しかし殺処分は根本的な解決策にはなりません。
命を落とす野良猫がいる一方で、生き残っている猫は新しい野良猫を生むので、この悪循環をなかなか断ち切ることができないのです。
そこで和歌山市では野良猫と保健所で保護された猫への不妊去勢手術を実施。
これにより野良猫と地域住民との不要なトラブルを減らし、保護された猫たちには新しい飼い主が見付けやすくなることにも繋がります。
この取り組みを後押しするように建設されることになったのが「(仮称)和歌山市動物愛護センター」。
診察室や手術室も設けられ、野良猫や保護された猫の不妊去勢手術を行うことができます(犬の手術も可能)。
今回のプロジェクトでは手術台や診察台、麻酔装置などさまざまな設備や薬品を揃えるために寄附金を募っています。
なかなか減らない猫の殺処分数。命を大切にし不幸な猫を減らすための取り組みです。
働く人のことを本気で考えたプロジェクト
東京都世田谷区「介護ロボットやICT機器を活用し、認知症介護の未来を変えたい!」
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「2025年度には介護職員が全国で約34万人不足する」厚生労働省が発表した介護職員の人材不足。
高齢者の人口が増える中、介護を必要とする人もどんどん増え続けます。
しかし介護職というと体力的にもメンタル的にもきつい、さらに給料が低いというネガティブなイメージが強く、人材確保が追い付いていないという厳しい現状があります。
この課題を解決するために世田谷区では介護環境の改善と質の向上を目指し、介護ロボットとICT機器の活用に着目。
介護職員の肉体的・メンタル的な疲労を大幅に軽減し、充実した介護サービスの提供へと繋げていくことを目的としています。
見守り支援システム(ベッド):ベッドマット下のセンサー付きマットが、事務室のPCに臨床状況や心拍数等の生活リズムを伝えます。
特に夜間の見守りや事故防止に役立ちます。
移乗支援スーツ:強い力で収縮する空気圧式の人口筋肉を搭載したスーツです。
介助者が装着すると、移乗介護や前傾姿勢での作業時に人工筋肉が職員の動きをサポートし体への負担を軽減します。
ICT機器の導入がこれまで介護記録を作成するのに要していた時間を大幅に短縮。
要介護者と向き合う時間に回すことが可能になります。
スマホやタブレットに入力することで職員同士の情報共有もスムーズになり、介護の質の向上にも繋がります。
世田谷区のこの取り組みが全国に広がり、介護環境の改善と人材不足の解消に期待したいと思います。
さまざまなプロジェクトに興味を
地域の活性化や福祉、医療、子育てなどさまざまなプロジェクトに使われるふるさと納税。
自分の故郷だけでなく、全く行ったことのない地域の取り組みなどを知る良い機会にもなります。
お礼の品ばかりではなく、その使い道に対しても注目して、寄附する自治体を決めることも大切です。(執筆者:藤 なつき)
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