10月に入って日経平均は年初来高値を付けたかと思えば、2,000円も下落する乱高下を繰り返す不安定な値動きを続けています。
米国中間選挙も終わり、年末から年始に向けて再上昇を期待していますが、その要因となるポイントが企業にも消費者生活にも影響がある原油価格の行方です。
冬に向かって伸びる実需での原油需要に加え、中東や新興国の政治情勢にも影響される原油価格は、世界経済を反映していると言えます。
4年ぶりにガソリンスタンドの全国平均価格が1L = 160円を越え、消費者レベルにも影響が出てきたタイミングで、原油価格(ここではWTI)から見たこれからの日本株相場を検証してみましょう。

目次
最近の原油事情
原油は石炭に代わる燃料として中東を中心に産出され、権利の奪い合いから度々戦争も起こってきました。
これまではOPECと呼ばれる中東の国々を中心とした石油輸出国機構が、価格決定権を持っていました。
が、ロシアの産出量が高まり、アメリカのシェールオイルが技術的に産出可能となった現在は、過去の値動きや力関係が通用せず乱高下が大きくなっています。
2010年からの原油価格
いま世界で最大の産出国はどこでしょう?
それは「アメリカ」です。
2006年にアメリカのシェールオイル(シェール層と呼ばれる岩石層から抽出する原油)が産出されるようになり、今では1バレル50ドル以上であれば採算が取れる水準までになりました。
そのため今後の価格動向に参考となるのが、リーマンショック後の2010年以降となります。
2010年から2014年まで、1バレル100ドル前後で推移する時代がありました。
その間にアメリカが量産に入り需給関係が悪化、2015年末には1バレル26ドルまで急降下。
今年2018年は70ドル前後まで再上昇している状況です。
原油価格が日本株相場に与える影響とは
世界的に経済が成長すると、原油の需要が伸び価格も上昇します。
そのため「原油価格上昇=世界株高」の状況が、2015年以降続いています。
日本株もアベノミクスが始まった2013年以降の株高に拍車をかけるように、原油価格上昇と日本株高が一致する相場が続きました。
では原油の輸入大国日本が、原油の価格上昇をどこまで耐えて、株高相場が続くのでしょうか?
輸入物価が上昇し、景気を冷やしてしまう水準はどこなのでしょうか?
このラインを越えると日本株は下がる

日本経済の実態面を考えてみると、車のガソリン価格上昇は個人のみならず、宅配業者やトラック業者などの仕入価格高騰に行きつきます。
原油からはプラスチックやビニール袋なども作られ、天然ガス等の燃料も抽出されます。
じわじわと影響が出てくる原油価格上昇の、日本への悪影響はどう見るのでしょうか?
日本株との相関性
日本株相場が上昇を始めたのは、自民党に政権が戻った2013年。
翌2014年には原油価格が70ドル水準まで下落し、その後2015年末まで下落を続けます。
そして現在の1バレル70ドル前後まで、日本株も上昇が続きました。
原油価格と日本株に明確な相関関係(一方が上がれば他方も上がり、下がれば下がる)はありませんし、2010年以降の短期間での検証ですが、1バレル70ドルが一つの目安になると考えています。
今年2018年の年初から70ドルに近付いた時に、日本株は2月に大暴落。
6月には70ドルを超え10月まで維持すると、その間の日本株は低迷。
10月末から70ドルを下回り、60ドル付近まで下落すると、日本株は再上昇し年初来高値を狙う位置に。
原油価格は為替や産油国の政治情勢にも左右されるため、価格水準を予想するのは難しい商品ですが、1バレル70ドルを超える水準が続くのであれば、日本株がそれを無視して上昇し続けることはなさそうです。
逆に70ドルを下回っている間は原油価格が日本経済に大きな悪影響を及ぼさず、企業業績や金融政策などファンダメンタルと呼ばれる基本的な経済活動に株価は左右される状況となります。
株式相場の値動きに関わる要因は複雑で、一つのことだけで決まるわけではないものの、原油の輸入大国日本の株価位置を考える時の一つの目安(メルクマール)として注目してみてください。(執筆者:中野 徹)