住宅ローンでは、ネット銀行を除いて、保証会社を利用します。
通常は、系列の保証会社を利用するのですが、最近は融資の裾野を広げるため、独立系の保証会社を利用することもあります。
その独立系の保証会社で、業績を伸ばしているのが、全国保証です。
今回は、全国保証が利用される「からくり」を解説します。
目次
独立系の保証会社、全国保証とは
全国保証は歴史が古く、当初は年金福祉事業団という、年金融資の保証業務に特化していました。

しかし、住宅金融公庫に代表される、公的金融による民業圧迫批判により、住宅金融公庫は住宅金融支援機構へ、年金福祉事業団は年金積立金管理運用独立行政法人へ移行し、年金融資は廃止されました。
年金融資が廃止されたことは、全国保証にとって死活問題です。
そこで、年金融資が廃止される少し前の、1997年から金融機関の保証業務も開始しました。
その後、住宅ローン以外の保証業務も開始し、2011年に創立30周年、2012年には東証一部への上場を果たし、2016年には保証債務残高10兆円を達成しました。
全国保証の利用が金融機関に都合が良い理由
このように、順調に業績を拡大してきた全国保証ですが、系列の保証会社があるのに、金融機関は何故、独立系の保証会社である、全国保証を利用しようとするのでしょうか。
これには、金融機関によるし烈な、住宅ローン残高拡大競争が関係しています。
例えば、メガバンクや大手地銀などでは、系列の保証会社を保有しており、密接な連携が取れることから、通常は系列の保証会社を利用しています。
しかし、年収が低い顧客や自営業者などは、最終的に責任を負うこととなる、系列の保証会社が承諾しなければ、融資を行うことが出来ません。
今までは、そのような場合は、融資を断念せざるを得なかった訳ですが、その場合、住宅ローン残高を伸ばすことが出来ません。
そこで注目したのが、独立系の保証会社である全国保証です。
全国保証は、保証範囲が広い分、保証料は高くなりますが、顧客が保証料を払えるのであれば、保証してくれます。
つまり、金融機関にとっては、住宅ローン残高が伸ばせると同時に、リスクは全国保証に移転できるため、非常に使い勝手が良いのです。
メガバンクや大手地銀で保証会社が全国保証の方

保証会社がどこであるかは、保証委託契約書の契約者名で確認するか、登記事項証明書の抵当権者の名称欄で確認できます。
そして、メガバンクや大手地銀で住宅ローンを借りたのに、保証会社が系列の保証会社ではなく、全国保証になっている場合は、系列の保証会社が保証を断り、全国保証に流れた事を表しています。
つまり、住宅ローン債権自体が、当初から要注意として、管理されているのです。
貸した側の金融機関が、そう判断している訳ですから、借りた側の貴方は、住宅ローン返済を最優先に考えなければ、延滞などに陥る可能性があります。
念願のマイホームを手放さないためにも、金融機関を見返すつもりで、住宅ローン返済にあてる資金は、常に余裕を持つようにして下さい。(執筆者:1級FP技能士、宅地建物取引士 沼田 順)