公的年金制度が破綻(ハタン)することはありえません。
理由は、破綻しないように法整備されているからです。
このように説明しても、長年マスコミ報道などに汚染され続けてきた人はカンタンには納得してくれません。
納得できない理由を深く掘り下げて聞いてみると、「自分たちが日々感じるハダ感覚に合わない」という意見が多いです。
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目次
破綻しないのは、あくまでも「年金制度」
この実感。間違っていません。実は、年金はある意味、破綻しています。
どういうことでしょうか?
冒頭で言ったのは、あくまでも「制度としての年金」に他なりません。
ここで、「支払い年金保険料と死ぬまでに受給する年金支給総額の生涯収支」に着目すれば、事情は違ってきます。
個人会計は破綻している
一定世代以降の人たちは、生涯で支払う年金保険料と受給年金総額を比較すると、平均値としては支払い保険料の方が多くなります。
つまり、生涯収支はマイナスとなります。
この状態を「破綻している」と言っても過剰な表現とはならないと思います。
つまり、制度としては持続可能であっても、個々の被保険者の個人会計収支は破綻しているということになります。
「一定世代以降」とは、60代前半に原則的に1円の年金ももらえない世代。男性の場合で言う、昭和36年以降生まれのことです。
この件については、週刊誌や地上波テレビ番組でも、たまに報じています。
ただ、残念ながら多くの場合、結論が「制度としての年金も破綻する」となっており、全体としては間違った情報となっています。
広い視野での損得勘定を
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ここまでの話で、やはり年金保険料を支払うのはムダなこと。と、結論づけてしまうのは早計です。
公的年金の機能は、上記で取り上げた老齢年金だけではありませんので。
障害年金や遺族年金としての保障もあります。
高校卒業までの子のあるサラリーマン(2号被保険者)の父親(夫)が亡くなった場合、妻には遺族基礎年金、遺族厚生年金が支給されます。
このとき、妻が平均寿命くらいまで生きれば、生涯にわたる受給年金総計額は6,000万円を超えるというデータがあります。
しかも、遺族年金に税金はかかりません。
民間の生命保険で、同程度の保障を用意しようとすれば、支払い保険料は多額になります。
このとき、妻は夫の年金保険料を1円も支払っていません。
にもかかわらず、夫の老齢厚生年金をベースに計算された遺族年金が支給されるわけです。
妻と夫の合算であれば、十分モトは取れます。
確かに、大きな世代間格差があるのは確かです。
しかし、カンタンに「白か黒か」で判断してしまうような単純な発想ではなく、制度の詳細をよく知り、賢明な対応をしたいところです。(執筆者:金子 幸嗣)