近年、自動運転化や安全運転支援の技術がますます活発化している上、認知症の疑いがある方は運転免許証の自主返納が促進されるなど、自動車事故に関して新たな動きが進んできています。
しかしながら、まだまだ高齢者の方の運転する車は多く、自動車事故自体も増加しているのが現状です。

その中には、認知症で運転している人の責任能力の有無が、事故の際に争われるケースが多々あることはご存知でしょうか?
事故を起こしてしまった家族が「監督義務者」として賠償責任を問われるケースもあり、新たな「責任」が問われるケースが増えているというのが最近の実態なのです。
目次
心神喪失者の起こした事故の被害者は、救済されないって本当?
現行の自動車保険では、
と定められています。
またその先に監督義務者がいるかどうかによって、補償される、されないが争点となり、事故の支払いがなかなかすっきりしないケースもあります。
監督義務者がいれば、その方に賠償をしてもらうという整理がつきます。
しかし、監督義務者がいない場合は「保険金が支払われない」、「被害者が救済されない」という課題があることが今までの流れで、まさに被害者が不利な状態が現状です。

監督義務者の範囲って?
民法では、「精神上の障害などで責任能力がない人は、他人に損害を与えても賠償責任を負わない」(713条)と定められています。
その代わりに、「責任能力のない人を監督する義務を負う人(=法定監督義務者)が責任を負う」(714条1項)としています。
さらに、「監督義務者に代わって責任能力者を監督する人も、責任を負う」(714条2項)としています。
したがって、加害者の家族が『法定監督義務者』であったり、監督義務者の代理だった場合は、その家族は責任を負う可能性があります。
近年では、同性間パートナーを婚姻関係に認める自治体の動きもあり、家族の中の「配偶者の範囲」も見直ししなければならない世の中になっています。
また高齢者社会真っただ中な昨今、認知症の男性が徘徊し、列車にひかれて死亡した事故で、配偶者である妻の賠償請求を二審判決が棄却したのも記憶に新しい事件でした。
業界初の保険! 救世主が登場しました。
自動車保険「心神喪失等による事故の被害者救済費用特約」が2019年1月に三井住友海上火災、あいおいニッセイ同和損害保険にて発売されることがリリースされました。

これにより、運転者が責任無能力者のために損害賠償請求を負わず、そして、その責任無能力者の監督義務者が不在だったり、監督義務者の責任が認められない場合に、その運転者が支払うべきである損害保険金をこの新しい特約でお支払いすることができることになります。
この特約は、運転者の責任能力の有無や、その家族の監督責任の事実確認の調査を待つことなく、迅速な被害者への救済がなされます。
今までの「支払われない保険の穴」が埋まったことになりますね。
これで被害者の精神的な負担もなくなり、安心できる世の中に1歩進んだ気がします。
さらに、三井住友海上火災、あいおいニッセイ同和損害保険ともに、対物賠償への「電車等運行不能賠償補償」を追加していますので、財物損壊(対物の賠償)がない、つまり、電車の運行不能などで生じる賠償責任がこれにより、補償されることになります。
具体的には、契約のお車が踏切内で止まってしまい、結果、電車を止めてしまい、実際にモノの損害がないものの、電車の振り替え輸送費用を補償しなければならない場合、この保険が発動する形です。
この保険は、他の損害保険会社も追随する予定ですので、ぜひご加入の保険会社や代理店にも尋ねてみてはいかがでしょうか。
高齢者や認知症のご家族がいらっしゃるご家庭の安心できる保険だと思います。
まとめ
認知症の患者数は、年々増加をしており、2025年には700万人にものぼるという計算式が出ています。
認知症になると、徘徊等で線路に立ち入ってしまい電車を止めてしまうケースも往々にしてあります。

その賠償額たるや、恐ろしい金額になります。
その不安を生活の中から排除してくれる保険は、やはりありがたく、自分自身の車が踏切でエンストなどのケースも守ってもらえる保険の開発は、やはり安心極まりないですね。
上記で少し触れた、同性パートナーや事実上婚姻など昨今の生活実態に合わせた「配偶者の定義」も、各社共々見直しをしています。
そういった部分でご心配の方も、ぜひ問い合わせしてみて、心の中の安心をどんどん増やしていきましょう。(執筆者:鮫島 ひかる)