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半数が損失、ほぼ全員含み益?
金融庁が金融機関の投資信託販売における「顧客本位の業務運営」を客観的に評価できる共通の成果指標(KPI)を今年6月29日に発表しました。
それに合わせて、発表資料の別紙に掲載されていた金融庁の集計・分析結果が話題になったのは記憶に新しいことでしょう。
それは、「投信で損失、個人の半数」「銀行投信の個人客、半数が損失」といったニュースです。
このニュースは、基準日(2018年3月末)の一点のことであり、基準日時点で全部を売却してしまった銘柄が含まれないなどの点で、必ずしも実態を映しているとは言えない面もあると思いますが。
しかしながら、その一方で、独立系投資信託会社から購入し、基本的に長期投資した人は、ほぼ全員”含み益”が出ているという実態も明らかになりました。
「半数が損失」…
「ほぼ全員含み益」…
この大きな違いの原因はいったいどこにあるのでしょうか?
ここには販売会社のスタンスの違いが見え隠れしているように思います。
少々極端な言い方をすれば、いわゆる、【顧客本位】ではなく、【販売会社本位】【販売商品本位】の中で短期回転売買がなされていたかどうか? による違いとも言えると思います。
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ストック型ビジネス フロー型ビジネス
そのような中、先日10月に、「国内大手銀行が投資信託の販売手法を見直し、業績の評価基準を新規販売額から”残高”に切り替える」という報道がありました。
この報道は、いよいよ、日本の金融機関も【ストック型】へのビジネスモデルへ梶を切ったということの表れでしょうか?
ちなみに、【ストック型】ビジネスモデルとは、ある一定の仕組みやインフラを作ることにより、継続的に収益が入ってくるビジネススタイルをいいます。
例えば、士業などの顧問契約や不動産の賃貸、携帯電話代、電気代、スポーツジム代など、ユーザー側から見れば、定期的に課金される仕組みのことです。(一方、【ストック型】に対しての【フロー型】ビジネスとは、その都度商品を販売したり、仕事を請け負うビジネスモデルのことをいいます)。
金融機関のビジネスモデルに当てはめれば、例えば投資信託を販売して短気で回転して、都度手数料収入を得ようとするのが【フロー型】、一方、投資信託の残高を貯めて行って、そこから発生する信託報酬を定期的に長期的に得ようとするのが【ストック型】と言ったところでしょうか。
確かに、今年7月の報道でも
などとありました。
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これからの金融機関のビジネスモデルは?
余裕のあるうちに持続可能な新しいビジネスモデルの構築が求められます。
日本の家計金融資産は約1800兆円とも言われます。このうち、現預金が52.5%で投資信託は4%に過ぎません。
一方米国では、家計金融資産に占める投資信託の割合は約12%と日本の3倍に達します。(投資信託の割合を米国なみに増やすべきかどうかの議論は別にしても)はたしてこの割合が、変化して行くのかどうか?
今後人生100年時代の資産形成、資産運用を考える際、生活者の目線や考え方に寄り添う我々ファイナンシャルプランナーの立ち位置とともに、各金融機関が真の「顧客本位」に立脚した新しいビジネスモデルを構築するかどうか? も重要なポイントだと思います。(執筆者:阿部 重利)