公的年金は、男女不平等です。
ありがちの「男性優位」ではなく、「女性優位」という意味での男女不平等です。
ホントは、女性こそが年金について詳しく知っておけば、トクするケースが多いのです。

目次
女性しかもらえない年金
まず、女性しかもらえない年金があります。
基本的に、遺族厚生年金を受給するのは夫を亡くした妻です。
妻を亡くした夫にも妻の遺族厚生年金の受給権は発生しますが、年齢条件があったり、夫自身の老齢厚生年金の方が金額が多いケースが通常で、妻の遺族厚生年金を受給する夫は滅多にいません。
遺族厚生年金の受給権につながる保険料を負担したのは夫であり、妻は1円も支払っていません。しかも、遺族厚生年金は無税です。

「女性(妻)のみ」だった遺族基礎年金
夫の死亡時に子どもが高校卒業前なら、妻には遺族基礎年金も支給されます。
長年、法的に「妻=女性」しかもらえなかったのです。
が、法改正され、妻をなくした「夫=男性」にも支給されるようになりました。なんと、2014年改正。つい、この間のことです(笑)。
子どもが成人の後、妻には「寡婦加算」があります。寡婦とは未亡人ですから、男性はもらえません。
男性は少数派の3号被保険者
最近は、専業主夫も増えてきたとはいえ、国民年金3号被保険者となるのは、まず女性です。
夫が2号被保険者の配偶者で専業主婦。保険料負担はナシ。
ちなみに、夫が2号被保険者で妻が3号被保険者というパターンは、年金法上のモデルケースとなっています。
ですから、3号被保険者という立場はそうカンタンにはなくなりません。
女性の人生は、1号・2号・3号を変遷

男性の場合、就職してそのまま退職まで勤め上げるというのが今でも一般的です。
国民年金被保険者の分類でいえば、ずっと2号のまま。
女性の場合、就職して2号。結婚して3号。離婚して1号。再就職して、また2号。
といった具合に、ごくフツーの女性でも人生の途上で被保険者の種別が目まぐるしく変化します。
種別が変わる、それぞれの時点で何らかの届け出や手続きが不可欠となります。この点は、男性と比べて少々面倒になります。
ですが、キチンと対応しておけば、後にオトクとなることも少なくありません。
最後に注意点をひとつ
夫が亡くなった時点で、30歳未満かつ子のない妻が受給する遺族厚生年金は、「5年間のみの有期年金」となっています。
30歳になっていれば、一生もらえるわけですから大きな違いです。
平成19年に法改正されました。当時、厚生労働省本局に改正理由を尋ねると、「この年齢なら、自力でやり直しが可能と判断した」という回答でした。
結果、この期間は民間生命保険などで、保障を手厚くしておかねばならなくなりました。
この「結果」こそが法改正の理由ではないかと疑いたくもなる唐突で不自然な法改正でした。(執筆者:金子 幸嗣)