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厚生年金制度の成立

厚生年金制度の成立は、1942年(昭和17年)です。
戦前の制度成立と聞いて、「ビックリ!」という人も少なくないでしょう。
注目すべきは、そのタイミングです。
日本は戦時下で、国家総動員法という法律が施行され、戦争遂行のために人々の行動や物流が国家権力によって、強制力をともなうカタチでコントロールされている状態でした。
戦時下に福祉の充実?
戦時体制の最中に年金制度をつくって福祉を充実させるとは意外なこと、と感じるかもしれません。
狙いは「福祉の充実」ではなく、保険料の徴収にありました。
戦争遂行のために、あらゆる資源を集中投下し、資金を集金する必要があったからです。
毎月の給料から、税金を「天引き」する源泉徴収制度が始まったのも厚生年金制度成立と同じ頃です。
諸外国にも税金の源泉徴収という制度はありますが、毎月の給料から天引きというのは一般的でなく、基本的には申告制です。
社会保険料を給料から「天引き」してしまおうというのは、例外的です。
当時の担当大臣は、
と述べています。
サラリーマンの感覚を完全にマヒさせた
厚生年金制度が成立した当時でさえも、社会保険料を給料から天引きするなどに、違和感があったそうです。
制度運営者サイドからすれば、この上なく好都合なこの制度は、70年超の時間をたて今日まで生き残りました。
今や、給料から天引きされることに疑問を抱く人さえいなくなりました。
国民に新たな負担を求める場合も、「支払い」ではなく「給料からの天引き」というテでやれば、何の抵抗もありません。
国民年金制度は昭和36年成立

国民年金制度の成立は1961年(昭和36年)です。
強制力をともなうカタチでの保険料徴収はムリというご時世となっていました。
国民年金保険料は、被保険が自分で納付します。
だからこそ、多くの「未納」という事例が発生します。
制度成立時期が決定的
厚生年金と国民年金の違いは、成立時期や時代背景をストーリー仕立てで確認しておくと鮮明です。(執筆者:金子 幸嗣)