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ファーウェイ・ショック
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中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟・最高財務責任者(CFO)が、米国の対イラン制裁に違反した疑いでカナダのバンクーバーで同国当局に逮捕された。
カナダ紙グローブ・アンド・メールが5日に報じた。米国に引き渡される可能性があるという…6日朝のロイター通信の記事です。
逮捕容疑の詳細はわかりませんが、米国が経済制裁をしているイランに対して、ファーウェイ製スマホ等販売の取引をし、その決済金を、英国金融機関HSBC経由で、商取引とはわからないような金融取引を行い、そのことがHSBCから米国側に伝わったとされています。
米国は、ファーウェイとZTEとの取引を見直し、ファーウェイ通信網を使わないこととし、日本や欧州にも同様にファーウェイとZTE商品の政府調達を禁止するよう伝え、早速日本は米国に従うことを発表しました。
日本政府調達から、中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)の製品を各府省庁や自衛隊で使う情報通信機器から事実上、排除する方針を発表しました。
華為技術(ファーウェイ)は、1987年に任正非現CEOによって設立された通信機器メーカーで、その事業内容は、通信機器、通信装置、ソリューション、通信基地局設備などの研究開発、中継局供給、ネットワーク構築となっています。
世界170カ国で製品・サービスを手がけていて、2017年12月期売上は約10兆円で、今年、世界でのスマホシェアはアップルを抜いて、サムソンに次ぐ世界2位となっています。
またファーウェイは通信基地局数世界第一位で、すでに66カ国の通信会社向けに約1万件の基地局を出荷しています。
世界170カ国の内訳は、欧州やアフリカが多く、アジアや中東、南米にも拡大しています。
今回逮捕された孟晩舟CFOは、創設者任正非CEOの実の娘になります。
両親が離婚して母方の姓を名乗ることで、長くこのことは知らされることはありませんでした。
創業者の任正非CEOは人民解放軍出身で、中国政府との関係が深いとも噂されていて、そのことからかねてより、ファーウェイとの取引に関して、安全保障面から様々な指摘があったようです。
中国のスパイ疑惑
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今から6年前の2012年10月、米下院情報常設特別委員会が「中国の通信機器会社であるファーウェイとZTEによりもたらされる米国の国家安全保障問題に関する報告書」が出されています。
当時の両社従業員に聞き取り調査を行った結果「中国には、悪意のある目的のために、電気通信会社を通じて、米国で販売される中国製の電気通信の構成品およびシステムに、悪意のあるハードウエアまたはソフトウエアを埋め込む可能性がある」と報告しています。
議会が諜報活動に両社が使われる可能性を指摘していました。
アップル製品に、中国による不正チップが埋め込まれているという話もありましたし、なによりトランプ大統領自ら、iPhoneが中国に盗聴されていると発言していました。
米国が最も恐れているのは、中国製端末機の普及もそうですが、通信網を中国がおさえているということのようです。
前述の通り、ファーウェイは通信基地局数世界第一位です。
今回のCFO逮捕は、おそらくは単なる「きっかけ」作りと目され、このことで、次世代通信規格「5G」から、中国企業を排除することが狙いだったのでしょう。
米中貿易戦争は、その本質がIT覇権争い
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米中首脳会談で、米国側からの関税強化を90日間延期する条件として、米国の知的財産権を守ることやサイバー攻撃への対策が盛り込まれています。
米中貿易戦争は、IT覇権争いであり、その中心は、次世代通信「5G」の主導権をどこが握るかということにかかっていると言っても過言ではありません。
現在の通信網は「4G」で、「5G」になると、通信速度が格段に早くなります。
「5G」は、ネットワークシステムの大容量化を、低コスト・低消費電力で実現することを目標としています。
さらに、10Gbpsを超えるような超高速通信やさらなる低遅延化、IoT/IoEの普及等に伴う多数の端末との接続への対応といった幅広い性能を考慮した研究開発を進めています。
整理しますと、「5G」の特長(メリットあるいはキーワード)は
・高速大容量
・低遅延
・低コスト・省電力
・多接続
になります。
これらにより、車の自動運転や、医療手術などの遠隔治療が可能になると言われています。つまり、新しいIoT社会には「5G」通信が不可欠だということです。
ここで重要なのは、通信端末ではなく通信網です。
基地局と言われ、電波が飛ぶ距離は限られているので、数多くの電波基地局があって初めて「5G」を、世界の隅々まで活用することができるのです。
その基地局数やエリア網羅数の世界第一位が華為技術(ファーウェイ)なのです。
世界各国、このファーウェイの通信網を使うことが効率的であることはよく理解しています。
ただハッキングや盗聴に関しては、端末よりも通信網のほうが重要で、通信網を押さえられれば、ハッキングや盗聴などは防ぐことができません。
この状況は、米国にとっては見逃せないことなのです。
世界が協力して、通信網からファーウェイを追い出すことこそ、真のIT覇権を手にすることができるのでしょう。
米国、オーストラリア、ニュージーランドの3カ国は、安全保障上の懸念を理由により、高速通信5Gモバイルネットワークのインフラ機器調達からファーウェイを除外したとのことです。
英国のブリティッシュ・テレコム(BT)も、次世代通信規格「5G」についてファーウェイ製品は使わない方針を明らかにしたようです。
米政府はアジアの同盟諸国にもファーウェイ機器の使用をやめるよう圧力をかけているそうで、特にインドには強く働きかけるのではないでしょうか。
中国通信網は、アジアやアフリカにおいては、既に優位な立場にあると言えます。
世界各国に呼びかけ、「5G」の世界から中国企業を締め出そうというのが、米国のIT覇権戦略なのでしょう。
中国側の事情
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米中貿易戦争で経済的ダメージを負っているのは米中どちらでしょう。どちらも株価は大きく値を下げていますし、人民元は確かに「安く」なってはいます。
中国では、米国産のトウモロコシ等の農産物を輸入しなくなったことで、それを餌とする豚肉の価格が高騰しているとのことです。
米国との関係をこんなに悪化させたのは習近平だ…
粛清で押さえつけられていた反習近平派が、ここに来て反旗を翻そうとしているという話も聞きます。
米中首脳会談で一時停戦の様相を見せたことは、実は習近平氏にとって「助け舟」だったという見方もあります。
人民元安も止まり、これ以上の(1ドル7元を超える)人民元安になれば、中国国内からの資金流出に歯止めがかかられなくなるところでした。
その米中首脳会談を終えたタイミングでの、今回のファーウェイCFO逮捕劇です。
一説には、米国側に対中休戦を望まない勢力があるのではとの見方があるようで、そんなことを言えば中国側にも、習近平体制を壊したい勢力はあるでしょう。
ただ、米中首脳会談で一時停戦を決めたその日の逮捕劇でした。いったいどのような力が働いたのでしょうか。
ソフトバンクの通信障害
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タイミングと言えば、日本ではカナダでの華為技術(ファーウェイ)CFO逮捕劇に合わせるように、ファーウェイの通信網を活用するソフトバンクの大規模の通信障害が起こりました。
しかも19日に、通信会社ソフトバンク上場を控えているこのタイミングにです。
報道によれば、ソフトバンクが使用するスウェーデンの通信機器大手「エリクソン」製の通信制御機器に異常が発生したのが原因と公表しています。
同社製の機器による障害は、ほぼ同時刻に海外10か国の通信事業者でも発生したそうです。
日本での障害は「ソフトバンク」や格安ブランド「ワイモバイル」のほか、回線を借りてサービスを提供する格安スマートフォン各社の端末にも及んだようです。
ソフトバンクのネットワークシステムを使った会社も大変だったようで、運送会社配送にも影響が出てたり、顧客サービスも止まったりしたようです。
これも偶然と片付けられるのでしょうか。
ソフトバンクはファーウェイの基地局を採用していて、同社と「5G」の共同開発や実証実験を行っています。
しかし、今後はファーウェイとの関与が経営リスクとなりかねない上、たとえば米政府機関と取引のある企業はソフトバンクから他社に乗り換えるという動きも予想されます。
なお「5G」の実証実験は、ソフトバンクはファーウェイと行っていますが、NTTドコモはノキアと、KDDIはエリクソンと実証実験を行っています。
2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでに実用化を目指しています。
ソフトバンクは、現状維持でも路線変更でも大きな経営上のリスクを抱えていると言えそうです。
ソフトバンク潰しなのか…米国は、国内加入者数第4位の携帯電話事業者スプリント買収から、ソフトバンクを快く思っていないとの噂もあります。
サウジアラビアと一緒に始めた「ビジョン・ファンド」においても、ムハンマド皇太子の記者殺害疑惑があったところで、順調に拡大してきた孫正義氏に、まさに逆風が吹いている感じで、これらは全て偶然なのかと疑いたくなりますね。
さらにソフトバンクは10月に、「モビリティAI革命」の名の下、TOYOTAと共同出資の会社「MONET Technologies(モネ テクノロジーズ)」を立ち上げることを発表をしています。
自動運転は「5G」の通信網は不可欠です。TOYOTAとの関係に影響はないのでしょうか。
ソフトバンクのこれからがすごく心配になりますね。
どうなるのでしょう…
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ファーウェイやZTEと取引している日本企業はどうなるでしょう。株価下落は免れないでしょうし、米国との取引にも影響が出てきますので、方針転換が迫られるでしょう。
中国が「メイド・イン・チャイナ2025」の旗を降ろさない限り、米国によるこういった攻撃はやむことはなさそうです。
孟晩舟CFOの身柄がカナダから米国に引き渡されたら、何らかの司法取引が行われ、徹底的に中国企業への圧力が増すことも考えられます。
習近平氏が国内で何処まで耐えられるのかもあり、中国事情にも目を光らせたほうがよさそうですね。
やはり経済力が全てです。圧倒的な経済力の前に、米国と対抗するのは、並大抵のことではないですね。これからの中国の出方を見てみましょう。
この問題は、まだまだ続きそうな感じがします。(執筆者:原 彰宏)