11月以降、原油価格が急落しています。
原油価格の主要な指標とされるWTI原油先物価格は、10月に1バレル = 76ドル90セントの高値をつけました。
その後下落が続き、12月になると40~50ドル近辺で推移しており、その間の下落率は約40%に達しています。
一体原油市場では何が起こっているのでしょうか。
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目次
米国の原油産出量が大幅に増加している
米国では地下深くから産出される「シェールオイル」の増産が成功し、11月の平均原油生産量は日産1,160万バレルとなり、世界一の原油生産量となっています。
生産量の増加に需要が追い付かず、米国の原油在庫は過剰な水準に達しており、原油価格の下落を招いています。
また11月は米国の原油輸出量が輸入量を上回りました。
最大の石油消費国であるアメリカの原油産出能力が高まっていることは今後原油価格形成に大きな影響を及ぼすことになります。
OPECの調整力が低下している
ロシアとOPECは協調して原油価格の相場形成に取り組みたいところですが、現状は効果的には機能していません。
12月上旬に行われたOPEC総会では、来年1月からの日量120万バレルの減産を決定したが、それにも関わらず原油価格は下落を続け、原油価格を上昇させるまでの力はありませんでした。
サウジやロシアの減産計画を上回るペースでのアメリカが増産しているためで、相対的にOPECの価格調整力は低下しています。
世界経済の減速見通し
来年の世界経済は成長の鈍化が見込まれ、原油需要は低迷するとの見通しが強まっています。
経済指標などから見ると米国の実体経済は堅調に推移していますが、株式市場は乱高下を続けています。
投資資金は安全資産へと逃避している状況です。
不透明な材料として挙がっているのは、米中の貿易交渉です。
米中の貿易交渉がまとまらない限り、海外の投資家は積極的な投資は行いにくく、設備投資減速により世界経済および原油の需要は下押しの圧力が強まると思われます。
原油価格は当面下落傾向に
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こうした原因により原油価格は下落を続けています。
では今後もこうした状況は続いていくのでしょうか。
現状では供給過剰の基調は変わらず、原油価格は当面低下圧力が続くと思われます。
アメリカは自国のエネルギー調達を自国で産出する原油でカバーできるようになり、原油価格に対する影響力を強めています。
一方サウジはカショギ氏の事件以降、投資マネーが減少し、以前のような「石油頼み」の運営を迫られている状況です。
サウジが値上げのために減産しても、代わりにアメリカが増産してしまう状況では、OPECでの石油価格のコントロールは難しい状況です。
今回の原油価格急落には、原油価格形成に関するパワーバランスの変化の兆候が見られているといえるでしょう。(執筆者:相川 隆)