昨年に大幅な下落をみせた原油相場ですが、今年も相場価格の形成において米国、というよりトランプ大統領の存在感が一層強まるものとみられます。
2018年11月21日トランプ大統領は自身のツイッターで
と投稿しました。
このときの原油価格は1バレル=50ドル台前半の水準でした。
トランプ大統領はこの発言に見られるように、ガソリンや暖房燃料など最大の石油消費国である米国内での支持や、石油を輸入する各国の支持を取り付けようとしています。
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米国にとって原油価格の下落は物流・生産コストの引き下げにつながるものであり、個人消費における燃料の支出を抑制するものです。
政策金利引き上げにより物価上昇を抑制しようとするFRBへの批判を強めており、インフレ抑制と景気持続のためにも原油価格は低めに抑えたい意向です。
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一方、サウジアラビアは…
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一方OPECの調整役であるサウジアラビアはカショギ氏問題で影響力を弱めています。
またこの問題でサウジを擁護する立場に回ったアメリカとは敵対しにくくなり、トランプ大統領の意向をある程度組まざるを得ない状況です。
冒頭の11月21日のツイッターに先立つ20日、トランプ大統領はカショギ氏殺害事件に関して、サウジアラビアを擁護する声明を出していました。
その際には
と強調し、サウジが原油価格引き上げにつながるアクションを起こすことへのけん制が見られました。
サウジアラビアはトランプ大統領に対して真っ向から対立することもできず、またOPEC参加国との調整も必要なことから難しい立場に立たされています。
トランプ大統領の発言
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トランプ大統領は1バレル=82ドルという水準を引き合いに出し、50ドル台前半まで下落していた価格水準を「好ましい」とツイートしています。
この82ドルという水準はリーマンショック直前の水準と直後の水準の中間点であり、過去の発言から原油価格は12か月平均で82ドル程度を高い水準とみている模様です。
トランプ大統領が原油高やOPECの減産体制について批判を始めた2018年5月の原油価格は12か月平均でおよそ82ドルの水準です。
12か月平均でリーマンショック後の安値58ドルを下回るまでは、トランプ大統領の原油相場やOPECへの批判は続いています。
過度の原油価格の下落には副作用も
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一方で過度の原油価格の下落は副作用ももたらします。
とくに影響が大きいのが米国の石油業界です。
石油価格の低迷が続くと、石油関連企業への影響が大きくなります。
米国の石油増産を支えているシェールオイルは40ドル台半ば~50ドル前後になると開発活動が低迷する可能性が生じます。
この近辺まで原油価格が下落した場合、現在の生産量を維持することが困難になるうえ、石油関連企業の株価下落やエネルギーセクターの銘柄を多く含むハイイールド債のデフォルト懸念も高まります。
「株価は大統領の通信簿」とかねてから発言しているトランプ大統領にとっては、株価下落の引き金を引きかねない40ドル半ばの水準を下回ってくると、原油価格の下落へ言及は少なくなってくるものとされ、多少の価格回復も容認するものとみられます。
今後のトランプ大統領の発言に注目
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こうしたトランプ大統領の発言を見ると、今年の原油相場は45ドルを下限とし、リーマンショック安値の58ドルを中心とした65ドルを高値とする水準で推移するものとみられます。
今年も原油相場に関しては、生産量・消費量ともに大きい米国が発言力を強めていくものと思われ、引き続きトランプ大統領の発言に注目が集まります。(執筆者:相川 隆)