今回は、お金と投資の少しだけ深いお話です。
テーマは、人はお金が多ければ「幸せ・満足度が高い」を感じるのか? というナゾです。
あなたは、どう思いますか? 見てみましょう。
目次
次のうち、どっちが幸せな人?

ここにAさんとBさんの二人がいます。あなたはどちらが「幸せ・満足度が高い」かを判断して下さい。
Bさん 資産が550万円
いかがですか? おそらく、多くの人はBさんの方が「幸せ・満足度が高い」と判断したのではないでしょうか。
この状況だけ見れば正解だと思われます。
そして、伝統的な経済学の考え方では、幸せなのはBさんの方です。その理由は、資産額がAさんの450万円よりもBさんは100万円も高く、550万円もあるからです。
つまり、大変乱暴に言いますと、伝統的な経済学では「お金が多い → 幸せ・満足度が高い」という考え方をします。
本当の幸せは比較した時に現れる?
では、今度は先ほどのAさんとBさんの説明に、より詳しい説明を付けます。それは「1年前の資産額」がいくらだったか? という内容です。
次の状況では、AさんとBさんのどちらが「幸せ・満足度が高い」と思いますか?
Bさん 1年前の資産は900万円だったが、いまは550万円に減った

どうでしょうか。今度はAさんの方が「幸せ・満足度が高い」と判断する人が増えたのではないでしょうか。
反対に、いまの資産額が100万円も多いBさんの方が「なんだか気の毒」な気持ちにすらなったかもしれません。
おそらく、当の本人のAさんとBさんの気持ちも、Aさんはうれしくて、Bさんは悔しい気持ちなのではないかと推察されます。
これは、「以前の状態」と比較をしたがゆえに、起こる現象です。
誰でも似たような経験があるので、直感的にお分かりいただけるのではないかと思います。
ただ、このAさんとBさんの例では「資産額が少ない方が幸せ」となり、伝統的な経済学では説明のつきにくいことになってしまいました。
このような伝統的な経済学では説明のつかないナゾを解き明かす学問を、行動経済学と言います。
参照点依存症とは?
先ほどのような状況を説明する時に、行動経済学では「参照点依存症」という言葉を使います。
「参照点依存症」などというと、難しい気がしますが、ザックリ言いますと「基準点からずれるとうれしくなったり・悲しくなったりする」という心の働きのことです。
先ほどの例では、AさんとBさん、それぞれの1年前の資産の額が基準点になっていたわけです。
Bさん 1年前の資産額900万円が基準点 → 350万円も減ったので悲しい
とても分かりやすいですね。
つまり、幸せかどうかは、人が勝手に作り出した基準によって左右されてしまうことがあるのです。
お金と投資で心がハッピーになる秘密の方法
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お金や投資には技術や知識が必要です。
各種論文でも、金融知識の多さが資産運用の成績にプラスに働く、というデータがあります。
しかし、お金があれば「幸せ・満足度が高い」かというと、必ずしもそうとは言えません。
ですから、お金持ちになっても、あるいは、いまお金持ちであっても、必ずしも「幸せである」とは言えません。また、永遠に幸せになれない可能性もあります。
ここには、逆に考えれば誰でも幸せになれるヒントが隠されています。
お金がなくても幸せになる方法は実はとてもカンタンです。
それは「他人や過去の自分とお金はもちろん、すべてのことを比較しないこと」です。
そうすれば、基準点がないのですから比較をせずに、誰でもすぐに幸せになれます。少なくとも不幸には感じません。
ちなみに、投資での基準点はしばしば、購入した時の価格になります。
当然ですが、購入価格は人それぞれですから、同じ金融商品を買っても、購入タイミングによって、喜んだり、悲しんだりします。
そして、その、本来はあまり根拠のない基準点にとらわれ過ぎて「塩漬け」、「損切り」、「安い時に買えない」、「少し値上がりすると売ってしまう」などの、場合によっては不思議に思える行動をとってしまうことがあります。
極端な空想ですが、基準点と比較をしない考え方を少し身につければ、人は少し強くなれるのかもしれません。
いまのあなたは幸せですか? それとも?
以上です。(執筆者:佐々木 裕平)