住宅ローンの借り換えは、潜在需要を掘り起こそうと、今現在も各行ともしのぎを削っています。
しかし、金利の低さ以外に、諸費用がかかる点には注意が必要です。
今回は、借り換えにかかわる諸費用の金額を具体的に計算して、その損得勘定に迫ります。
目次
住宅ローンの借り換えに各行が積極的な理由

住宅ローンの広告には、新規以外に、借り換えの宣伝も必ず載っています。
最近は、借り換えの金利を新規よりも低くして、借り換えに力を入れていることをアピールする銀行が増えてきました。
借り換えは、他行の住宅ローンシェアを奪えるとともに、今まで真面目に返済してきた優良債務者も奪えるため、借り換え先の銀行にとっては一石二鳥の効果があります。
借り換えにより給振口座の獲得や、自行の運用商品購入による手数料収入など、家計のメイン化を図れることは、特にネット銀行などにとって、大きなメリットがあります。
注意したい、借り換えにかかわる諸費用
銀行にとってメリットが多い借り換えですが、さらに大きいのが諸費用収入です。
現在の借り換え手数料は、金利が低い銀行ほど、借り換え額に応じて手数料が上がる定率制を採用しています。
以前の銀行の抵当権を抹消し、借り換え先の銀行の抵当権を設定する必要がありますので、国税である登録免許税と、不動産登記を代理する司法書士報酬がかかります。
それでは、借り換えにいくらかかるのか、具体的に見ていくことにしましょう。
自宅がマンションで、3,000万円を借り換えた場合
・ 定率制(2.16%)の手数料:3,000万円×2.16%=64万8,000円
・ 収入印紙代金:1,000~5,000万円未満で2万円、特約書で200円、合計2万200円
・ 以前の銀行の抵当権抹消費用:建物と敷地権の合計で2,000円(登録免許税)
・ 借り換え先の銀行の抵当権設定費用:債権額3,000万円×4/1,000=12万円(登録免許税、借り換えは抵当権設定の軽減税率1/1000なし)
・ 司法書士報酬:15万円程度
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上記の金額を合計すると、諸費用だけで94万200円となり、約100万円程度の諸費用は、覚悟しておいたほうがよいです。
最近は、諸費用分を上乗せして貸してくれる所もありますが、その場合、当初より借り入れ額が増えるため、諸費用部分は住宅ローン控除の対象から外れます。
また、約100万円も支払うのであれば、今の住宅ローンを繰り上げ返済した方が得という場合もあります。
くれぐれも、現在の借り換え金利の低さだけでなく、諸費用も含めた総額でいくらトクになるのか、判断するようにしてください。(執筆者:1級FP技能士、宅地建物取引士 沼田 順)