今年の4月から、つまり2019年度に公的年金の支給額は0.1%アップします。
年金支給額は、基本的に5年毎に実施される財政検証(もとは財政再計算)と呼ばれる作業で見直しになります。
その間の期間の改定について、過去を振り返りつつ確認しておきます。

目次
高度成長と物価スライド
1960年代から1980年代まで、日本は高度成長期でした。
この間、物価が数年連続して10%以上がることもありました。
当然、給料も連動して上がりました。でないと、生活できません。
年金にも物価対策が取り入れられ、1973年(昭和48年)から物価スライドが始まりました。
物価が高騰しても年金の価値は保持されることになったわけです。
平成16年改正とマクロ経済スライド
以後、年金額の見直しと改正の仕組みは、基本的に変わることなく継続しました。
しかし、2004年(平成16年)に、マクロ経済スライドが導入されました。
物価スライドによる変動率にブレーキをかけることになりました。
年金支給額が物価上昇率に完全には連動しなくなり、給付水準は抑制される予定でした。
しかし、マクロ経済スライド導入当時の日本経済はデフレ進行中で、実際にマクロ経済スライドが実施されたのは2015年のみです。
さらなる年金給付抑制策
年金給付の抑制が十分でないため、2015年度(平成27年度)からは物価スライドに加え賃金スライドが導入されました。
年金額改定には、変動率の低い方の値が適用されます。
マクロ経済スライドにも、2018年度(平成30年度)にキャリーオーバー制が取り入れられました。
マクロ経済スライドには年金支給額そのものはキープするために、名目下限措置があります。
この下限を超える調整を翌年以降に持ち越して、実施されることになったわけです。
2019年度年金額改定の計算式は?

2019年度改定については、物価変動率1.0%と賃金変動率0.6%のうち、変動率が低い方の賃金変動率0.6%が適用されました。
ここから、通常のスライド調整分0.2%とキャリーオーバー分0.3%、合計0.5%がマイナスされ、結果0.1%となったわけです。
年金受給者には、4月に年金額改定通知書が送付されます。
年金は偶数月に前2月分の後払いとなっています。
実際に、わずかながらアップした年金を手にするのは4月分・5月分が指定金融機関口座に送金される6月になります。(執筆者:金子 幸嗣)