東京カンテイの「マンション・一戸建て住宅データ白書2018」にもあるように、首都圏や近畿圏、中部圏のマンション・一戸建て平均価格は、上昇の一途をたどっています。
特に首都圏や近畿圏の高級住宅街では、利便性の良い物件を中心に、中古物件価格が急上昇しています。
しかし、物件価格が上昇しすぎると、逆に買い手がいなくなるという現象も…。
今回は、この問題を取り上げます。
目次
中古物件の売出価格が1億では、さすがに買い手が付かない
もともと首都圏や近畿圏の高級住宅街は、安定した高値圏で推移していました。
しかし、年末年始から強気の売主が増えた影響もあり、中古物件の平均価格も急上昇しています。
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首都圏では1億、近畿圏では8千万を超えるようになると、さすがに買い主も購入を躊躇するようになり、不動産流通会社にとっては頭の痛い問題となっています。
バブル期であれば買い手はいくらでもいたでしょうし、中国経済が好調な時期であれば中国人投資家が購入していたかもしれません。
しかし、長く続いたバブル低迷期を経験している日本人は、物件価格の上昇にも半信半疑の面が強く、高値掴みだけはしたくないという思いがあるようです。
「神の見えざる手」により、少しづつ下がりだした売出価格
皆様は経済学者である、アダム・スミスをご存知でしょうか。
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彼は「国富論」という著書の中で、「神の見えざる手」を引き合いに出し、市場経済は放っておけば「神の見えざる手」により自然とバランスすると述べています。
まさに同じことが売出価格にも表れ、年末年始は閑散としていた流通量が、売出価格の引き下げにより少しずつ増えてきたのです。
先に動いたのは、買い替えを控えている物件と考えられます。
買い替え先の購入代金には、売出価格の物件も含まれているため、いくら高めの査定が出たとしても、売れなければどうしようもないからです。
こうして、売出価格は少しずつ下がり始め、年度末の3月に向けて、流通量は徐々に回復していくものと考えられます。
市場価格を常に意識しておく
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物件価格は確かに上昇していますが、今回の事例からも明らかなように、市場価格を超えた売買は成立しにくくなっています。
結局は市場価格で落ち着くのですから、売主も買主も、その辺りを常に意識しておくことが、適正価格での売買につながるでしょう。
利便性の良い物件は、今後も高止まりが予想されるだけに、市場価格を調査し、高値掴みだけはしないようにして下さい。(執筆者:1級FP技能士、宅地建物取引士 沼田 順)