最近、老後準備において「エンディングノート」を作成する人が増えてきました。
金融機関が高齢者に配布していたり、専門家が相続セミナーで紹介したりしていることから、エンディングノートがブームになっているところもあるようです。
エンディングノートが求めているものに「生きがいの確認」という要素があります。
今回はその「生きがい」にフォーカスしたいと思います。
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「生きがい」を考えることを通して
というのが、今回のコラムの趣旨です。
若い人たちにとっては全く遠い話のようですが、「生きがい」を「夢」という言葉に置き換えて考えてみてください。全く同じロジックとなります。
目次
少し億劫ですがエンディングノートについて考えてみましょう
そもそも「エンディングノート」作成の目的は
・ 老後を生きる自分のため
と整理できますが、昨今とくにエンディングノートがもてはやされているのは、認知症患者や独居老人者の増加という社会現象が背景にあるようです。
認知症になると、本人意思が確認できなくなります。
認知症に限らず、「三大疾病」と言われる心筋梗塞での突然死でも、残された遺族は、亡くなった方の思いを受け取れなくなります。
独居老人の場合は身寄りがいないので、伝える相手がいないという寂しさもありますが、第三者に自分のことを託す意味でも、自分の思いを伝える手段があると安心でしょう。
なにより残された者が助かるというものです。
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これらの社会背景からも、本人の意思を残された人に伝えておく手段として、法的拘束はないが意識としてハードルが高い遺言に代わる「思いを伝える手段」として、エンディングノートが活用されているようです。
エンディングノートの目的は「残された者」が対処しやすいようにという部分が強く、同じ対応でも、亡くなったご本人の意思に沿ったことをしてあげられるというところにあります。
もう一つの要素として、ご自身の残された時間をどう生きるかという部分にフォーカスした、つまり「どう生きるか」を見直すためにも、エンディングノートは活用されているようです。
自分の履歴書、つまり今まで生きてきた証(あかし)を文章にしたため、趣味ややり残したことを書くことで再確認し、残された時間を楽しく生きていこうという狙いがあるようです。
エンディングノートには資産管理の側面もあります。
生命保険契約状況や預貯金の実態、投資状況を書く項目もあります。
「死」を迎えるまでの、今から残された時間の「ライフプラン」とでも言うのでしょうか。
あらためて「豊かな老後」を過ごすための三要素を確認
豊かな老後を過ごすために必要な三要素として
2に「生きがい」
3に「お金」
と言われています。
米国では、人生において「絶対に必要なパートナー」として
・ 優秀な「弁護士」
・ 的確な「フィナンシャル・アドバイザー」
と言われています。
先ほどの「豊かな老後」を過ごすための三要素を実現してくれる人たちです。
優秀な弁護士をパートナーに持つのは、米国社会ならではなのかもしれません。
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「生きがい」と表現すると、どうしても大上段に構えてしまいがちですが、
「やりたいことをやるにはお金がかかる」、「夢の実現にはお金が必要」と言えばわかりやすいでしょう。
・ 充実した老後生活には生きがいが必要
・ お金だけでは「豊かな老後」は送れない
ですが、健康を維持するにも、やりたいことをやるにしても、お金は絶対に必要です。
エンディングノートに「資産」の項目があるのもうなずけます。
変な表現ですが、死ぬにもお金がかかるのです。
葬儀費用や財産処分費用などです。
「老後資金準備」という表現だと遠い先のことで、どこかで「なんとかなる」という心持ちになるところです。
ですが、自分の「生きがい」のため、自分のやりたいことのためにお金を準備するというのなら、お金に対する意識も、少しは変わってくるのではないでしょうか。
老後生活は年金で、生きがい(趣味や夢)のためのお金は自分で
どうやら多くの方には、このような考え方のほうが受け入れやすいようです。
「年金制度は破綻する」という表現に対しては身構えてしまう人が多く、その発言をする相手に対して妙な警戒心を抱いてしまうという人は多いのかもしれません。
実際、「年金制度破綻」の言葉は金融商品を売り込む「常套句」となってしまっています。
いまは65歳まで働くことができる環境となっていて、投資や運用で老後資金を作るより働くことを選ぶ人が実際には多いようです。
逆に言えば、それだけ投資や運用を敬遠する人が多いとも言えます。
「エンディングノート」には前述の通り、今まで何をやってきたか(仕事や趣味等)、今やり残していることはあるか、これからやりたいことは何かを、文字に起こすコーナーがあります。
文字に起こすことであらためて自分と会話をし、来る「その日」までどう生きかを考えるというのがエンディングノートの趣旨ようです。
まだまだ十分に時間がある私たちもこれにならい、お金の問題を考慮することをいったん保留して、
どう生きたいか
どのような生活をしたいか
を考える時間を持ってみてはいかがでしょうか。
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「真のライフプラン」の考え方
生きがいを探し明確にし、それを実現することで人生を楽しく生きる、それが「ライフプラン」です。
資金計画は、この「ライフプラン」を支えるためのものと言えます。
あらためて、米国から日本に伝わった「ライフプラン」の考え方を、手順を追ってみていきましょう。
1. まずは「夢」を書き出します。
何をしたいか、何になりたいかを、具体的に列挙します。
具体的であればあるほど良いでしょう。
無理だとか能力がないとかは考えない。仕事のことでもプライベイトのことでもかまいません。
2. 日付をつける
次にそれぞれいつまで実現させるのかの日付をつけます。
実現の優先順位もつけておきましょう。できれば「絶対にかなえる」と、あらためて強く意識してみましょう。
3. 「夢」の見積もりをつける
夢実現にいくらかかるかを、それぞれの「夢」や「やりたいこと」に、具体的な数字をつけてみましょう。
4. 資金計画を立てる
見積もりをつけることができたら、その数字を具体的なものにするための資金計画を立てましょう。
その夢、生きがいを実現したいのであれば、それがかなうための具体的な資金準備の方法を模索しましょう。
ここで重要なのは「あきらめない」ということです。
この一連の作業が「真のライフプラン」だということを、あらためて確認してみます。
投資は「時間」を手に入れるもの
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貯蓄と投資や運用の違いは、ライフプランで考えると「時間の使い方」です。
効率的な時間の使い方を考えれば、貯蓄手段よりも運用手法を活用するほうが有効であることを、夢実現プロセスで見出すことができれば、それは、生きがいを実現する第一歩になるはずです。
「夢」実現計画において、現時点から夢がかなうまでの距離を大きく縮めてくれるのが「運用」なのです。それが理解できるでしょうか。
簡単にあきらめられるものは、本当にやりたいことではない
「生きがい」は掲げるものではなく感じるもの
そのためには「お金」は必要です。
だからお金のことについて勉強し、お金のことを理解する必要があります。
今回は、お金の必要性を「生きがい」を考える観点から見てきました。
少しはお金と向き合おうと思っていただければ幸いです。(執筆者:原 彰宏)