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離婚後9年…就職した長女の養育費が終わった
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9年前、今回の相談者・宇都聡さん(46歳)聡さんは離婚しました。
当時、10歳、7歳だった長女、長男の親権を妻が持ち、聡さんが子1人あたり毎月4万円(20歳に達する翌月の3月まで)を支払うことを約束しました。
あれから9年…長女は高校を卒業し、就職しました。
長女の卒業式、会社の入社式、そしてアパートへの引越に立ち会うことは叶わなかったのですが、それでも長女は聡さんにLINEで「これから大変だけど頑張るよ!」と送ってきたそうです。
長女の養育費の支払が終わって肩の荷がおり、「あと1人(長男)か」と気持ちを切り替えていた矢先のことです。
5月の連休明けに出勤すると裁判所から勤務先へ裁判所から封書が届いていたので、中身を見ると「貴殿の給料を差し押さえる」と書かれていました。
聡さんは離婚から9年間、養育費を1度として減らしたり、止めたりしたことはなく、給与を差し押さえられるような身に覚えはありません。
一体、何が起こったのでしょうか?
家族構成と登場人物、属性(すべて仮名。年齢は現在)
元夫:宇都聡さん(46歳)→会社員(年収600万円)☆相談者
元妻:村田祥子(40歳)→パートタイマー(年収100万円)
長女:村田楓(19歳)→会社員(年収300万円)
長男:村田翼(16歳)→高校生
元妻が地方裁判所へ債権差押命令の申立を行ったのは明らかですが、裁判所は長女の現況について調査せず、聡さんへ聞き取りをせず、元妻の申立内容を鵜呑みにして差押命令を出します。
元妻が自ら長女の就職、自立について明らかにしなければ裁判所は「長女はまだ学生で、元妻と一緒に暮らしているだろう」と信じて疑いません。
債権差押命令の一例「給与の差押」
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具体的には聡さんの勤務先が聡さんへ給与を支払う前に、会社が元妻の口座へ直接、養育費の未払い分を振り込みます。(民事執行法167条の15)
給与差押の上限は手取り額の2分の1なので(民事執行法152条)残った分は聡さんの口座に振り込まれますが、未払い分が解消するまでは
未払い分が解消した後は将来の養育費を給与から天引きすできるのです。(民事執行法167条の16)
このような給与天引は一度、裁判所へ申し立てると、最終回(長女が20歳に達する翌年の3月)まで続くので元妻にとっては非常に便利ですが、聡さんにとっては絶望的です。
通知書には「次の給料日に差押が実行される」と書かれています。
18歳の長女は3月に就職、自立しているにも関わらず、
・ 過去の養育費… 4~5月分 4万円×2か月=8万円
・ 将来の養育費… 18~20歳 過去の分を除くと 4万円×22か月=88万円
が聡さんの給与から元妻の口座へ強制的に振り込まれます。
差押の上限は手取額の2分の1、聡さんの手取額は26万円なので、次の給料22万円から11万円が差し引かれます。
次々回の給料から同じく6万円(当月の養育費4万円+過去の養育費1万円+手数料おおよそ1万円)が差し引かれます。
差押はこれで終わりません
私は聡さんに決断を促しました。
元妻を説得する前に、差押の停止を優先しなければなりません。
どうすれば差押を止められる?
裁判所が差押命令を取り消すのは
・ 債権者(元妻)の同意、裁判所の決定
・ 未払い分の完済
いずれかの要件を満たした場合に限られます。
一度、発せられた差押命令を裁判所に対して取り消して欲しいという申し入れを「執行異議(執行抗告)の訴え」といいますが(民事執行法11条)前述の通り、現時点で元妻の同意を得られていません。
また長女の自立を住民票で、就職を就業証明書等で証明すべく書類を手に入れるには時間が足りません。
聡さんは「将来の養育費だけは絶対に払いたくない!」という一心で不本意ながら過去の養育費
だけ振り込んだ上で地方裁判所へ執行異議の訴えを申し立て、差押命令を取り消してもらうしかありませんでした。
元妻の行為は、法律上は不当利得
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聡さんは、元妻が長女の就職を隠したまま差押の手続きをして、本来支払う必要がない養育費を払うことになり「悪質すぎます!」と憤ります。
私は聡さんに過払い分の扱い方について伝えました。
聡さんは元妻に
と、伝えた上で「将来の分をあきらめてくれれば、今回の8万円は返さなくていいよ」と切り出しました。
元妻は早々に8万円を使い切っており、たった8万円を返すほどの貯金すら持っていませんでした。
元妻はようやく長女の将来の養育費をあきらめ、聡さんは引き続き長男の養育費を支払っています。(執筆者:露木 幸彦)