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ZOZO離れは鎮まる アパレル業におけるプラットフォーマーの強さ

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ZOZO離れは鎮まる アパレル業におけるプラットフォーマーの強さ

ZOZO下落の背景 2018年夏に減益発表

減益発表

ZOZOの株価が軟調となっている。

2018年夏頃は5,000円に迫る強い勢いを見せていた。しかし、2019年3月現在(2019年3月15日)は2,000円付近で推移している。

まずこのさえない値動きの背景をおさらいする。

ZOZOは2018年7月に2019年3月期第一四半期の業績を発表した。

営業利益は59億円で、前年同期と比べて26%の減少。体型計測デバイス「ZOZOスーツ」を無償で配布し、関連費用がかさんだ。

しかし、この段階では費用拡大にフォーカスした批判よりもプライベート・ブランド(PB)ビジネスに対する期待がまだ強かった。

ZOZO下落の背景 採寸スーツ不要論とZOZO離れで懸念高まる

ZOZOスーツが今後不要となる可能性を示唆

ZOZOは2018年10月に上期の業績を発表。

営業利益は前年同期と比べて27%減少の101億円だった。減益幅は第一四半期の実績から大きな変化はなかったので、この点は特に材料視されず。

問題は決算説明会の内容だった。

前澤代表は説明会で、利用者が最適なサイズの衣料を購入するにあたりZOZOスーツが今後不要となる可能性を示唆した

それまで投資家や消費者に対して積極的にZOZOスーツの有用性・将来性を発信してきただけに、急な方向転換の意向によってPB事業の先行きを不安視する流れが広がった。

そして2018年終盤、オンワードホールディングスがZOZOTOWNでの出品を中止したと伝わった。

それに続き、宝飾品販売のヨンドシーホールディングスや子供服メーカーのミキハウス、衣料品チェーンのライトオンなども出品をやめると報じられた。

こういった「ZOZO離れ」はZOZOが2018年12月に開始した会員制サービスが原因とみられている。

会員は全商品がいつでも10%オフで購入できるというサービスで、各商品のブランドが毀損するのではとの懸念が取引先層に広がった。

そしてZOZOはこうした流れを踏まえ、1月に今期通期の営業利益計画を下方修正。

このリリースでは、ZOZOスーツの無償提供について当初予想していたほどの販促にはつながらなかったとの見解が示された。

こうした悪材料が続き、ZOZOの株価は2,000円付近まで下落するに至った。

ZOZO離れは鎮まる見通し


≪画像元:zozotown≫

しかし、市場のこの反応を見るにZOZOの将来業績は過剰にネガティブ視されていると思われる

ZOZO離れは今後鎮まる可能性が高いとみるからだ。

ZOZOはまず、原因となった会員制サービスを見直した。

具体的には、割引価格の表示方法を3パターンに拡充してブランド毀損の防止に配慮した。

加えて、取引先から見ればそうはいってもやはりZOZOTOWNからの撤退はハードルが高く、オンワードや4℃が抜けたからといって多くの企業が合理的に進められるわけではない。

それなりに資本や人材のある企業ならば通販サイトを自前で構築・運営することができるが、そうした余地のない企業では受注~発送といった一連のフローを限られた資源で効率化するのは一筋縄ではいかない

中堅・中小・零細企業が数多くひしめくアパレル業界では、むしろ後者のような企業の方が多いと思える。

また、知名度アップに向けた宣伝費も大きな負担となる。

自前でオンライン販売基盤を整備したものの、知名度不足により当初想定していた収益を上げることができず、しまいにはソフトウエア資産を減損処理するというケースは少なくない

こういった問題はアパレル各社も十分把握しているとみられ、ZOZO離れを決める経済的・心理的ハードルは非常に高いと思われる。

ZOZO離れに対する懸念は払しょくされたわけではないが、ZOZOTOWNというプラットフォームにおける取引先・消費者から見た利便性の高さは健在だ。

2月以降、株価は2,000円を下値抵抗線のサポートに推移しており、売り一巡感が見てとれる。

今後の反転を期待するのも大いにありかもしれない。(執筆者:高橋 清志)

《高橋 清志》
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外資系投資会社にて株式アナリストとして勤めております。主に「株式投資」の分野で具体的な企業の例を交えながら、資産運用に役立つ生きた知識をお伝えしたいと思います。話題のテーマを取り上げ、噛み砕いてご紹介することで、企業経営や金融に対する「知的好奇心」を満たしたり、数字ベースの堅実な投資スタイルを身に付けられたりできるような記事をご提供していきます。 寄稿者にメッセージを送る

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