平成31年は4月で終わり、5月から元号が「平成」ではなくなります。
まさに「変化の年度」と言えるでしょう。
平成最後の4月からも大きく変わることがいくつかあります。
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「働き方改革法」と「改正 出入国管理法」が施行されます。
影響のある「変わる出来事」には他にも何があるか確認してみましょう。
目次
働き方改革法が4月より施行
平成31年4月より「働き方改革法」の1部が施行されます。
1部は大企業が先で、中小企業は数年後に施行されるものもありますが、大企業も中小企業に対しても施行される部分を見ていきましょう。
1. 年次有給休暇を労働者が年5日取れるようにする
年10日以上の有給休暇がある労働者に5日は消化させるよう企業に義務付けられます。
5日消化していない労働者がいたら、最大1人30万円の罰金も設けられています。
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中小企業の休み方改革を補助するため、特別休暇制度を設けると最大100万円補助金が支給されます。
2. 残業時間の上限規制を厳しくし、守れないときに罰則を!
現在は労働者側と会社側で36条協定を結び、労働基準監督署へ届け出すれば、実質青天井で残業させて(目安の基準は月45時間、年360時間以内)も罰則がありませんでした。
労働基準法が改正され、6か月までは月45時間超も可ですが、年720時間以内に労働時間を収める必要があります。
平成31年4月1日以降に労使で結ばれた36条協定から、残業時間の上限規制が有効です。
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改正後は労働時間の上限を超えてしまうと、違反した企業や上司には、30万円以下の罰金か、6か月以下の懲役が科されます。
「抜け穴がある」という意見も国会ではでたそうですが、大企業は今年の4月から、中小企業は2020年4月から施行です。
ただし、建設業、自動車運転業、医師は2024年3月まで残業時間の上限規制は適用されません。
残業抑制のために新規雇用を行う中小企業に国は最大600万円の助成金を支給します。
3. 勤務間インターバル制度の促進
勤務間インターバル制度とは「労働時間等設定改善法」に基づき、勤務終了後、一定時間以上の「休息時間」を設けることで、働く方の生活時間や睡眠時間を確保する制度です。
「努力義務」なので、罰則などはありません。
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勤務終了後、次の始業まで休息を設ける制度ですが、努力義務なので拘束力は弱いです。
中小企業がインターバル勤務制度を導入し、休息時間を11時間以上にした場合、最大100万円の助成金が支給されます。
4. フレックスタイム制の清算時間延長
フレックスタイム制とは、一定の期間についてあらかじめ定めた労働時間内に労働者が日々の始業・終業時間、労働時間などを自由に決められる制度です。
残業代などの基準となる「清算期間」が最長1か月から3か月に延長されます。
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フレックスタイムの清算期間が最長1か月から3か月に。
5. 高度プロフェッショナル制度の導入
年収1,075万円以上の一部専門職を労働時間を規制する労働者からはずします。
対象業務は
ディーリング
アナリスト
コンサルタント
研究開発
の5業務です。
働き方改革法で2020年4月以降に施行される項目
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同一労働同一賃金の原則
正社員と非正社員(パート・派遣・契約社員など)の不合理な待遇格差を更正するため、待遇差の内容や理由を非正社員に説明する義務が企業に課されました。
2020年4月から大企業に義務付けられ、1年遅れて2021年4月からは中小企業にも義務付けられます。
2020年4月に同一労働同一賃金の原則を踏まえ、日本郵政グループは、正社員だけに払ってきた扶養手当を一部の非正社員にも払う方針を固めました。
正社員の配偶者手当が半減し、年収が減る正社員が出ることから、正社員と非正社員の格差は縮まりそうです。
平成31年4月から人事制度が変わる企業
働き方改革法で従業員の多様な働き方を踏まえた形か、人事制度が変わる企業もあります。
● 沖縄銀、2年間の休業支援や「地域総合職」を新設
● キリンビール、育児休業後は希望の勤務地で。
● 三菱UFJ銀行は4月から成果主義を強化。
改正出入国管理法が4月より施行
4月より施行される改正入国管理法では、在留資格「特定技能」が2段階で新設されます。
「相当程度の知識または経験を要する技能」を持つ人に与える「1号」は5年上限に3か月から1年更新で技能実習を修了するか、技能と日本語能力の試験に合格する必要があります。
家族帯同は認められません。
この「特定技能1号」の対象となる14業種のうち、技能試験を2019年4月から実施できるのは介護、宿泊、外食の3業種です。
農業、建設など残る11業種は2019年度中に試験を始める予定です。
外国人実習生受け入れ先を7割増員することを踏まえ、監視を強くすべく、厚労省では外国人雇用に関する企業向け指針も改定しました。
新たな指針では労働条件を示す時や健康診断などに外国人に母国語で説明すること、社会保険や最低賃金などが日本人と同様に適用されることもあらためて明記、4月から適用する予定です。
群馬県では、4月からの外国人労働者受け入れ拡大に伴って「群馬に外国人材を呼び込む」プロジェクトと題した新規事業に取り組む予定です。
北海道でも外国人材の受け入れ拡大に備えて、就労面と生活面の双方で手厚く支援し外国人を呼び込もうとしています。
就労面では外国人が企業と接する機会を増やしたり、企業に適正な労働環境づくりを促したり、生活面では医療機関や子育てサービスの情報を多言語で提供したり、日本語が学べる機関の紹介をしたり、手厚い支援を予定しています。
年金で4月から変わること
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毎年見直しのある年金額、国民年金保険料ですが、平成31年度も年金関係の見直しや改正がありました。
● 老齢基礎年金の年額が78万100円に。障害基礎年金2級も同額。
● 国民年金保険料額が月額1万6,410円(プラス70円)に。
● 65歳から69歳までの在職老齢年金の調整額が47万円(プラス1万円)。
● 平成31年2月1日以降の出産から自営業者やその妻等(第1号被保険者)の妊婦の国民年金保険料が産前産後期間免除に。
出産予定日又は出産月の前月から4か月間(産前産後期間)、多胎妊娠は、出産予定日又は出産月の3か月前から6か月間の国民年金保険料が免除されるようになりました。
● 全国の47都道府県国民年金基金と22職域国民年金基金が統合、全国国民年金基金になります。
年金以外の公的手当
年金以外の公的手当も平成31年度は1%引き上げになります。
● ひとり親向け、児童扶養手当の月額が引き上げ
第2子 月額1万140円(プラス100円)
第3子以降 月額6,080円(プラス60円)
所得制限(養育費を考慮)も平成30年8月に緩和されており、満額の児童扶養手当がもらえる所得は
子2人で125万(年収215.7万)円
子3人で163万(年収270万)円
子4人で201万(324.3万)円
今年11月より、2か月分づつ年6回(それまで3か月分づつ年4回)に支払い回数が変更になります。
● 20歳未満の障碍児向け、特別児童扶養手当月額が引き上げ
2級 月額3万4,770円(プラス340円)
● 20歳未満の重度障碍児向け、障碍児福祉手当が月額1万4,790円(プラス140円)に引き上げ
● 20歳以上の障碍者向け、特別障害給付金月額が引き上げ
2級 月額4万1,720円(プラス400円)
● 20歳以上の重度障碍者向け、特別障碍者手当が月額2万7,200円(プラス260円)
医療
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● 高額な薬と医療機器の「費用対効果」を評価して公定価格を下げる新制度が4月から始まり、薬価の公定価格は最大15%値下げされます。
● 一般労働者の残業時間の上限規制は今年4月から実施されますが、地域医療への影響を考慮して、医師は適用を5年間猶予されます。
自治体の助成など
● 岐阜県飛騨市でもLGBTや事実婚対象、パートナー証明を出すことに。
● 4月から長野県佐久市内のスーパーで高齢者の買い物支援にIT活用。
● 認知症での賠償を保険で救済してくれる自治体が出てきました。岐阜県本巣市、高山市では損害賠償保険加入費用を自治体が肩代わりするとのことです。
● 奈良市が宿泊税導入を検討。
宿泊税は、自治体が条例で定めて宿泊料金などに応じて課す税。
東京都や大阪府、京都市が導入済みで金沢市が4月から導入する。
子育て・教育
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子育て・教育面でも4月から始まること、変わることがあります。
● 池田市では、保育所入所にAIで選考するそうです。
● 沖縄銀行が行員向けで最長2年不妊治療サポートするとのこと。
● 九州電力社長が電気代の値下げと子育て・移住者向け割引も検討しているそうです。
● KDDIでは、1月より傘下に入れているイーオンと英会話で提携するそうです。
● AI英会話のジョイズが湘南ゼミナールなど学習塾向けの教材を開発しています。
貯金・投資・保険など
貯蓄や投資でも平成31年4月以降に変わること、始まることがあります。
● 4月1日からゆうちょ銀行の貯金の預入限度額が今の2倍、2,600万円となります。
● SBIネオモバイル証券で4月より「買い物でためたTポイント」で株式投資できるサービスが始まります。ロボットアドバイザーが運用指南を行う初心者向けとのことです。
● 地震や台風など自然災害の増加で、大手3社の火災保険料が秋頃(10月?)5%ほど上がる予定です。
● 1月から地震保険料が3.8%値上げされています。
● 2月に発売されたHISキャンセルサポート(三井住友)保険はHISに海外旅行を申し込んだ人が入れる、離婚、出張、海外旅行、ペットの死亡などのキャンセル料を全額または9割カバーする保険です。
4月から変わる企業のサービス、制度など
企業でも平成31年4月から始まるサービスや変わる制度が多くあります。
● 平成30年年12月に設立されたアドレス(東京・千代田)が、月4万円で多拠点住み放題サービスに応募が殺到しているとか…。
● 全日空が4月発券分からサーチャージを値下げするとのことで、海外旅行に安く行かれるようになりそうですね。
● 西友で定番のものを中心に400品値下げするとのこと、出欠大サービスと言えそうです。
● フジテレビで4月から報道番組をリニューアルするとのこと、どんな番組になるか楽しみですね。
アットランダムに4月から変わることを挙げてみました。
平成最後の4月、新元号に向けて、いろいろな制度やサービスが今後うまく回っていくといいですね。(執筆者:社会保険労務士 拝野 洋子)