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原油先物相場が反発
原油先物相場が持ち直している。
2018年終盤では一時1バレル40ドルを割れる寸前まで下落した原油価格が、3月下旬現在では60ドルを回復する動きを見せている。
OPECによる減産継続を背景に需給改善期待が高まっていることが大きな要因として挙げられる。
原油高は日本株にプラス? マイナス?

原油相場が上昇する際にはセットで景気回復期待が高まり、株価が上昇する場合がある。
エネルギーの大半を輸入に頼る日本にとっては、原油高はコスト高につながる要因となり、日本企業の業績にとっては直接的にはネガティブに作用する。
株式市場でも、その点を踏まえてか空運や、タイヤメーカーが属するゴム製品などのセクターは軟調な推移となっている。
原油高は消費減退につながる懸念あり
原油高はデフレマインドの改善につながるという側面はある。
物価上昇率が日銀の目標とする2%になかなか届かない理由の一つにも原油安が挙げられるケースが多い。
ただ、賃金の上昇度合いが緩慢な中で国民の財布のひもはなかなか緩んでいない。
今後、コスト高を商品やサービス価格に反映せざるを得ないような事態が生じた場合は、その分野に関して消費減退の動きが強まる懸念がある。
また、原油は商品市場の中では流動性が高くボラティリティーも大きい上に、実体経済への影響も小さくない。
過去には止まらない原油の上昇がガソリン高につながり、ガソリンスタンドに大行列ができるといった事態も生じた。
コスト高によるインフレは「コストプッシュ・インフレ」ともいわれるが、これによる物価上昇の結果、デフレが長期化するといった展開も十分想定される。

あくまで需要拡大による景気拡大を見据えよう
原油高というのはグローバル市場のリスクオンの象徴ではあるが、日本経済にとってメリットが多いというとそうではない。
産油国の動向や原油価格の持つ特性から考えると、原油価格はさらに上昇するような展開もあり得る。
市場参加者の期待感によっては日本株相場にとって原油高がポジティブに作用する局面があるが、今後原油価格の上昇が急になると、産油国以外にとってはデメリットも大きくなり、日本企業に想定していないネガティブシナリオが浮上する可能性もある。
足元の原油高を受けた株価上昇で資産が増えるのは大いに結構だ。
しかし、一方でコスト高によるインフレではなく需要拡大に伴う「ディマンドプル・インフレ」によって企業の業績が伸び、日本経済が拡大するのかどうかという視点を常に持ち、原油相場と株式市場の動きを見るべきと考える。≪原油価格情報 東証業種騰落情報≫(執筆者:高橋 清志)