近年GAFA(ガーファ)という言葉をよく耳にするようになりました。
GAFAとは、下記の巨大企業4社の総称です。
・ Amazon
・ Apple
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今やこの4社は覇権を握っているといっていいほど世界に大きな影響力を持っており、GAFA同士でしか競うことができない領域まで成長しました。
そこで今回はGAFAを知っているようで知らない方のために、どうしてGAFAがここまで成長できたのか?
現在、どんな分野で覇権争いが行われ、それが私たちの生活にどんな影響を及ぼすのか? 徹底解説していきます。
目次
どうしてGAFAは覇権を握ることができたのか?
人工知能などの最先端領域に莫大な投資をして、他社の追随を許さない。
そして将来邪魔になる可能性のある企業はM&Aで飲み込んでいく…。
これがGAFAの必勝パターンです。
しかし、GAFAも最初から巨大企業だったわけではありません。
どうしてGAFAは覇権を握ることができたのか? 他の企業と何が違うのか?
まずは各社の成功要因を見ていきましょう。
Google(Alphabet)
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Google(現在はAlphabet傘下であるが、以下グーグルと表記)の成功要因は下記の3つです。
・ 検索結果の順位に意味を持たせた
・ IT創世記に広告最適化に成功した
まだ多くの人々がインターネットに慣れていない時代に、インターネットの入り口(検索)を抑えたことが、グーグル最大の成功要因でしょう。
もちろん検索webは他にもありましたが、グーグルは検索結果の順位に意味を持たせることにこだわりました。
ユーザーにとって価値が高いであろう順番に並べられた検索結果の精度は年々上昇して、いつしか他社が勝負を挑むことすらない地位を築いたのです。
また、IT創世記にも関わらず、ユーザーの検索ワードを利用することにより、広告最適化を実現しました。
ユーザーが満足するから利用者が増えて、効果の高い広告にはお金が集まる。こうして莫大な富を手に入れたのです。
現在ではYouTubeやアンドロイドOS、自動運転技術や寿命を延ばす研究を行う事業まで幅広く行い、その影響力を年々強めています。
Amazon
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Amazon(以下アマゾン)は、テック企業に非常に注目が集まっていた1997年にナスダック上場して、その際に調達した資金を元に、投資最優先で赤字を垂れ流しながら成長してきたことで有名です。
アマゾンの話になると、この長期投資家以外を徹底的に無視した経営に注目が集まりがちです。
しかし、アマゾンが採用したロングテール戦略こそが、初期段階の成功に非常に重要な役割を果たしています。
通常のリアル店舗の場合、売上の約8割をたった2割の売れ筋商品で稼ぐのが一般的です。
そのため、売れ筋商品を大量に仕入れて、ほとんど売れない商品は陳列すらされませんでした。
商品陳列スペースを有効に活用するのは当然ですね。
これとは逆に、年間通してほとんど売れない商品でも、その商品数が莫大なら売れ筋商品上位20%の売上を凌駕するのがロングテール戦略です。
まさに塵も積もれば山となるですね。
ネット上ではいくら陳列しても、ほとんどサーバー代はかかりません。
実際の商品も一等地の狭い店舗ではなく、1商品あたりの固定費がほとんどかからない巨大倉庫で保管しました。
これがアマゾンの初期の最大の成功要因といえるでしょう。
また、成功すれば大きなリターンがあったとしても、失敗する可能性が高いビジネスなら勝負をしない伝統的な企業と違い、企業存亡の危機になるようなものでなければ、期待値を重視してベットする経営を行っています。
ダメなら少額の投資ですぐに撤退し、軌道に乗れば追加で莫大な資金を投入した結果、多くの失敗を繰り返しながらAWS(クラウド事業)やアマゾンエコーを生み出しました。
莫大な資金を持っている伝統的な企業が自社株買いや配当をする中、短期的な投資家を徹底的に無視して期待値を重視したことが、アマゾン帝国を作り上げたのです。
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Facebook(以下フェイスブック)の成功要因は、人とつながりたいという決してなくなることのない人間の欲求にアプローチする領域で勝負したことです。
また、下記の3つの要因が、フェイスブックの広がりに拍車をかけました。
・ 優秀な異性とつながりたいという欲求
・ 周りが利用していると使わざるを得ない
もし、フェイスブックが誰も知らないような大学で生まれていたら、間違いなくここまで成長することはなかったでしょう。
もともとフェイスブックは、ハーバード大学の学生だけが利用できるサービスでした。
そして、次第に利用者を広げる際にも有名大学の学生が使えるように、的を絞って広げていきました。
フェイスブックは利用することで優越感を得られるツールであり、将来有望な男性と簡単につながれるツールであり、初めて会ったばかりの女性との連絡手段を簡単に得られるツールであり、利用できるコミュニティに属していると利用せざるを得なくなるツールとなりました。
うまくスタートできたらあとは簡単です。
SNS特有の異常なまでのスピードで広がっていき、フェイスブックは莫大な個人情報を無料で手に入れることに成功したのです。
現在では、アメリカのネット広告市場の半分以上を、フェイスブックとグーグルの2社だけで占めています(寡占状態)。
Apple

数々の逸話を残したスティーブ・ジョブズについては説明するまでもありませんね。
確かに、彼が指揮を執るApple(以下アップル)が、革新的な商品を世に送り出したことが一番の成功要因でしょう。
しかし、本当のアップルのすごいところはブランディング戦略です。
実はアップルの世界でのスマホ市場のシェアは、約2割程度でしかありません。
しかし、世界のスマホ市場の利益の約8割を独占しています。
アップルはスマホを単なる無機質な機械から、宝石やバックのような高級ブランドにすることに成功して、高価格でも消費者は喜んでお金を払うようになりました。
また、高級品でありながら徹底的にコストを抑えることにも成功しています。
アップルは自社工場を持たずに、世界中の部品を集めて中国で組み立てています。
低コストで安価な商品を作るのではなく、高コストで高級品を作るわけでもありません。
他のスマホと同じように事実上メイドインチャイナでありながら、圧倒的な高価格帯で販売しているのです。
これほど世界規模で、低コストの高級品が成功した事例があるでしょうか?
こうしてアップルは、莫大な富を内部留保することに成功したのです。
GAFAの壮絶な覇権争いと未来予測

あらゆる市場でGAFAの壮絶な覇権争いは、今この瞬間も絶えず行われています。
間違いなく今後数十年間は、私たちの生活に大きな影響を及ぼし続けることでしょう。
ここでは、人工知能や量子コンピューターや宇宙などの壮大なものではなく、今後私たちの身近な生活にどのような影響があるのか?
具体的に解説していきます。
検索・予約・買い物
人間から「知りたい」という欲求が消えることはありません。
この分野では現在、グーグルがテキストと動画(YouTubeでの検索はGoogle検索に次いで世界で2番目のボリューム)で覇権を握っています。
今後グーグルは予約や口コミ市場の駆逐を始めるでしょう。
具体的には、美容院や飲食店の予約・口コミは、グーグルからスムーズに行えるようにしたいはずです。
カカクコム(食べログ)やリクルート(ホットペッパービューティー)は、激しい猛攻にさらされるでしょう。
ただ、検索の王者グーグルも安泰ではありません。
今後、商品を購入する際にはグーグルではなく、直接アマゾンで検索する傾向が強まるはずです。
この流れはすでに始まっており、最終的には文字を打たずとも、アマゾンエコーで商品のアドバイスを受けたり、そのまま注文するのが一般的になるでしょう。
文字から音声の流れは、アップルのSiriにも言えることですが、グーグルが音声デバイスの覇権争いで引くに引けない理由でもあります。
また、すでに直感的な検索(アパレルや料理)では、フェイスブック傘下のインスタグラムで調べる若者の増加が顕著で、これはグーグルだけでなく、アマゾンにも大きな影響を及ぼします。
インスタグラムでアパレル商品を調べて、そのまますぐに購入する流れが今後も強まり、それが習慣化することをアマゾンは面白く思わないでしょう。
なぜなら、アマゾンはすでに自社のアパレルブランドを立ち上げて、ECの中でもおいしいジャンルであるアパレルを抑えに来ているからです。
この両者の争いは、ZOZO(ZOZOTOWN)や楽天(楽天市場)にも影響を与えるはずです。
このように検索・予約・買い物の領域で覇権争いが行われた結果、私たちが直接欲しいものや情報を選ぶ時代が終わりを告げるかもしれません。
最初は抵抗を感じるでしょうが、年々これらの精度が上がれば、誰もストレスを感じなくなるでしょう。
そんなSFのような世界を本気で創造しようとしているのがGAFAなのです。
仕事と可処分時間
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現在は人手不足と言われていますが、近い将来労働力をそれほど必要としない社会が形成されることは間違いありません。
コンビニやスーパーのレジは必要でなくなり、タクシーや多くの物流でAIがコントロールされ、倉庫内作業も今以上に自動化がすすむはずです。
特に事務作業などのホワイトカラー業務の必要労働力の減少は大きく、多くの仕事がRPA(ロボティクス・プロセス・オートメーション)に取って代わられるでしょう。
このように労働の最適化が進み、日本人の総可処分時間(当然世界でも)は右肩上がりになります。
AIに隠れがちですが、可処分時間は今世紀最大級のビジネスチャンスが秘めています。
当然、GAFAはこれを見逃しません。
労働力の自動化を主導するのもGAFAであり、生まれた可処分時間を奪い合い、その覇権を握るのもGAFAなのです。
YouTubeやアマゾンプライム、IGTV(インスタグラムが提供している動画サービス)で動画を楽しみ、グーグルを使って調べものをして、アマゾンで購入した書籍でさらなる知識の探求をします。
スマホゲームやかわいく見せる加工アプリを利用するにも、App Storeでインストールする必要があります。
旅行先ではグーグルマップを見ながら目的地に向かい、観光名所ではフェイスブックやインスタグラムなどのSNSに写真をアップします。
これらはiPhoneを使って行われ、それ以外のほぼ全てのスマホにはグーグルのアンドロイドOSが搭載されています。
すでにGAFAは、私たちの可処分時間に侵食しており、生活するうえでなくてはならない存在になっているのです。
今後もこの流れは変わらないでしょう。
自動運転
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現在最もGAFA(それ以外の企業も)がしのぎを削っており、数年後に私たちに大きな影響を与えるのが自動運転です。
グーグルのウェイモ(Alphabet傘下)、アマゾンのオーロラ・イノヴェイション(出資)、アップルのProject Titan(社内部門)など、これらは間違いなく私たちの身近な生活だけでなく、自動車大国日本そのものを揺るがすことになるでしょう。
自動運転は車体そのものより、脳(OS)が非常に重要な役割を果たします。
この脳の部分を握られてしまえば、車体はただの箱になってしまうというわけです。
日本の巨大自動車企業が、GAFAの下請けになる可能性も絶対にないとは言えません。
ただ、私たちの身近な生活として自動運転を考えた場合には、非常に未来は明るいでしょう。
人が運転する必要がなくなれば、駐車場に止めておく必要もありません。
合理的に考えれば、使用していない自動運転車は、他の人々が利用することになるでしょう。
要するに、自動車や駐車場を所有する必要がなくなるわけです。
当然、所有コスト(車体や駐車場だけでなく、保険や税金も)は下がり、可処分時間での消費にお金を回すことができます。
交通事故の件数は急激に下がり、数十年後には人が自動車を運転することを法律で禁止する国もでてくるでしょう。
もちろん、完全に運転を禁止するわけではなく、車に乗りたければライセンス(現在の免許のような一般的なものではなくなる)を取り、可処分時間内に娯楽として、サーキットで楽しむことができる配慮をすると考えられます。
もはや敵はGAFAと国家しかいない
GAFAはあまりにも巨大になりすぎました。
もはやGAFAと争えるのは、GAFA自身か国家のみです。すでに国家によるGAFA対策は始まっています。
国をも動かすGAFAによって作られる近未来が、人類にとって明るい未来になることを願うばかりです。(執筆者:三田 亮)