住宅ローン返済中に離婚すると、どうなるのでしょうか。
厚生労働省の統計によりますと、人口1,000人あたりの離婚件数を示す離婚率は17年度に1.7と多少減少しているものの、離婚率の高い年齢は30~35歳、婚姻期間は5~10年が最も高くなっています。
これらの年齢や婚姻期間は、住宅ローンを返済し始めた時期とも合致するため、どのように対処すべきか、専業主婦世帯と共働き世帯に別けて解説します。
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目次
専業主婦世帯の場合
離婚においては、奥さまに帰責事由がある場合もありますが、一般的にはご主人に帰責事由がある場合が多いため、その前提で、住宅ローンで購入した物件を奥さまに財産分与する事例で考えます。
奥さまが専業主婦の場合、物件の名義はご主人、住宅ローンもご主人の単独債務になっている場合が多いと思います。
この場合、ご主人が奥さまに物件を財産分与するのは勝手ですが、ご主人しか返済継続できる人がいません。
また、奥さまに財産分与して、ご主人が自宅を離れることは、住宅ローンの債務者が居住するという、自ら居住義務にも違反することになります。
従って、必ず銀行に相談してください。
ただ銀行としても、奥さまが専業主婦で収入がない以上、簡単にご主人が債務者から脱退することを許容する訳にはいきません。
一番多い事例としては、奥さまのご両親など、年金収入でも何でもいいので、継続的な収入がある人に債務引受してもらう方法を取ります。
例えば、ご主人の単独債務から、奥さまのお父様の単独債務に変更するという具合です。
また、奥さまも今後は専業主婦という訳にはいきませんので、就労してもらい、奥さまもお父様と一緒に、連帯債務者となることもあります。
ただ、実際の所はこれでは返済負担率(年間返済額 ÷ 年収)が基準をオーバーすることが多いため、一定程度の内金を入れてもらうなどの対応を求められます。
また、ここまで見てきたように、離婚で疲れている時に、このような対応を取ることに嫌気がさして、物件を売却しようという事例も、一定程度見受けられます。
ただ、売却価格が住宅ローン残高を上回れば良いですが、住宅ローン残高の方が上回った場合は、ご主人が無担保の債務として、住宅ローンを返済し続けることになります。
共働き世帯の場合
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共働き世帯は、上記よりも事例が簡単です。
物件の名義は夫婦共有、住宅ローンはペアローンか連帯債務になっている場合が多いと思います。
この場合は、今後は奥さまが単独で住宅ローンを返済する形になりますので、ご主人から奥さまに債務引受をしてもらいます。
この場合、奥さまだけの単独債務となりますので、自ら居住義務違反にもなりません。
ただし、共働き世帯では実質的に夫婦の収入を合算して物件を取得しているため、奥さまだけの年収では返済負担率をオーバーすることが多いため、ここでも一定程度の内金を入れてもらうなどの対応を求められます。
早めに銀行に相談に行きましょう
離婚になると、子供の親権など、住宅ローン以外の事でも揉めることが多いため、住宅ローンの事は後回しになることが多いようです。
しかし、住宅ローンには自ら居住義務など、守らなければならないルールがあり、これに違反しないためにも、早めに銀行に相談に行くことが大切です。
銀行としても、相談体制の強化が求められており、このような相談は、当事者が考えている以上に多くあります。
自分たちで動く前に、まずは銀行に相談に行かれることを、強くお勧めします。(執筆者:1級FP技能士、宅地建物取引士 沼田 順)