「人生50年+α」モデルと「人生100年」モデルの違いを、具体的な事例として実存の兄弟を取り上げたのが前回でした。
実は、この兄弟のような方は、日本ではどこにでもいる普通の人です。
普通の人である2人が、
その理由と背景について今回は考えてみたいと思います。
「人生50年+α」モデルと「人生100年」モデルの違いは、結論からいうと
に違いがあるだけだからです。
恐れ、あきらめ、怒り、敗北など人生にとってマイナス面の感情を持つ時間をできるだけ少なくし、しあわせ、安心、安全、達成感などプラス面の感情を感じる時間を、生涯を通じてより多く持てるようにすることに「人生100年モデル」の目的があります。
しかし、お金との付き合い方というテクニカルな基盤部分では、「人生50年+α」モデルも「人生100年」モデルも大部分が共通しています。
今回は、この共通部分に焦点を当ててみましょう。
前回に登場いただいたご兄弟の具体的な事例にそくして述べていきます。
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目次
お金との付き合い方の原則:収入の範囲内での生活と無借金
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このご兄弟には何度もヒアリングをさせていただいたわけですが、
お金との付き合い方は非常にシンプルなものです。
それは、収入の範囲内での生活と借金をしないという2点だけです。
これは、20年以上も前から私も「お金に困らない3つの原則」として提唱してきた内容と同じです。
ご兄弟は「収入の範囲内の生活と無借金」は両親から学んだ、というよりも家訓のようなものだとおっしゃっています。
というスタンスです。
そして、
とおっしゃいます。
おっしゃる通りの正論だと思います。
そして、
つまり、収入の道を複数にしておくということです。
両親も、ご兄弟も、夫婦ともに働いているわけです。
実は、人生100年モデルでは、夫婦がともに働くということは非常に重要なことです。
子供たちが巣立った後には、夫婦は個々の人間に戻るとき、それぞれが仕事を持っていることは大切なことです。
そして、お金に関して、ぜひ参考にしたい、このご兄弟の特長に触れてみましょう。
数字に強いこと
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ご兄弟のヒアリングで驚いたのは、お二方とも、いま現在の家計収支と財産状況をメモなどなにもみずに即答できることでした。
年金受給額、配当金、為替差益などの収入と月単位の支出額など、また資産は、借金はなく、預貯金と有価証券、自己所有の不動産と車などですが、万円単位で把握していらっしゃいました。
海外在住の長かった次男は、現在の自宅は現金で建てたそうですが、子供たちが巣立った後では今の家は広く、借家にしておけばよかったと反省している様子でした。
自宅所有のプラスマイナスの計算が頭のなかで簡単にできるからだと思います。
5人の兄弟姉妹全員が数字に強いのは、家系とかではなく小学校低学年に習った「そろばん」ではないかとおっしゃっています。
両親から小学校に入るとともに近所のそろばん塾に習いに行くようにいわれたそうです。
長男から三男までの5人が揃って暗算ができるようになるのは小学校2~3年頃だそうです。
頭のなかで数字が操れるようになるというのは、私にはよくわからないのですが、掛け算や割り算もできるので概算で大まかな数字を把握するには困らないということです。
実は、計算に強いということは、数値で把握できるということに繋がります。
三男は
とおっしゃっています。
人生100年モデルの核心:リスクは最小限に
リスクがあるということは、不安やストレスに繋がります。
リスクは人生にとってはマイナス要因となるわけですから、できる限り小さくしておきたいのが普通だと思います。
ヒアリングからご兄弟には
ということです。
大きな失敗がないだけでも、恐れや不安やなどマイナスの時間が少ないことを意味し、人生全体にはプラスとなります。
大きな失敗がなかったのは、リスクを最小限にするように事前によく考える時間を取ったということです。
例えば、就職というのは、人生にとって最重要事項の1つです。
次男は、自動車整備という分野で手に職を身につけ、まさに就「職」となるわけですが、会社や職場はいくつも転々とします。
収入も安定しないわけですが、組織の重圧というものを一切感じることなく、海外に職を見出します。
三男は、リスクを最小にするために公務員となり、安定した収入が得られる一方で、居心地の悪さを感じ続けます。
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どちらが良かったというよりも、どちらもリスクを最小限にし、人生の大失敗を避けることができたということでしょう。
人生100年を大過なく生きるということは、個人にとっては大事業です。
そのうえで、これからの時代、人生を閉じるとき「悔い」を残さないということが大切なことになってきます。
次回は、人生100年モデルと将来予測、時代との向き合い方について考えたいと思います。(執筆者:井戸 美枝)