目次
IPOは情報が限られる
ソフトバンクやメルカリのIPOをへて、個人投資家の中でもIPO銘柄への投資に興味を持つ人が増えつつあるだろう。
しかし、IPO投資は通常の投資と違って限られた情報の中で投資を判断しなければならない、情報面でリスクの高い領域である。
今回はその情報面でのリスクを抑えるためのポイントをひとつ紹介する。

キラキラワードにご用心
IPOする企業には公開価格または初値を高く引き上げようとするインセンティブが多かれ少なかれある。
そのために市場の好物である「キラキラワード」をIPO前の公表資料にちりばめるというケースがしばしば見受けられる。
・ ディープラーニング
・ ビッグデータ
・ フィンテック
・ リーガルテック
・ キャッシュレス
・ RPA
などなど、こういったワードはその各分野で高い成長性が期待されているテーマなだけに株式市場でも買い材料視されやすい。
「高い成長が期待できる分野に心を躍らせて何が悪いのだ?」と思われる読者もいると思われる。
問題はそのワードの定義の広さ・曖昧さゆえにさほど関係のない企業でも都合よく使えてしまうという点だ。
市場が夢を抱いた「自社内での事務効率化」

実際、過去には「不動産テック」という成長テーマを大々的に掲げて市場からの注目を浴びた企業があった。
事業内容を詳細に見てみると肝心のテックが絡むのは社内の事務処理に使われている点のみだった(ちなみにその企業には公開価格比で2.3倍の高い初値が付いた)。
このケースの場合、「不動産テック」というワードを聞いて市場が期待したのはおそらく不動産マーケットのあらゆる情報をビッグデータとして蓄積し、それをベースとした競争力の高いサービスを打ち出して業績を拡大していくといった成長ストーリーだろう。
もしくは不動産テックというワードからくる漠然とした「次世代感・近未来感」。
この企業が高い株価を付けるために意図的にこのようなPRを行ったのかはわからない。
しかし、「不動産テック」というワードを軸に企業側の実態と市場側の想像・期待が大きくかい離してしまったことは事実といえる。
上記のような誤解は投資家の高値掴みを誘発し、長期的に見てキャピタルロスにつながってしまう。
こうした問題を防ぐには、企業がIPO前に公表する有価証券届出書や証券会社の発行する目論見書で、事業内容を入念に読み込む必要がある。
それでも理解できなければ、企業のIR担当部署に電話をして納得できるまで聞くのもいい。
特に、心が浮かれてしまいそうな成長テーマが具体的にどう関連しているかは投資を検討するうえでしっかり把握すべきと考える。(執筆者:高橋 清志)