世界経済を牽引する米中の貿易戦争、イギリスのEU離脱、米国債券市場の逆イールド発生など、景気拡大から後退局面に移行する兆しが見えている今年2019年。
民間エコノミストが予想する「1年以内の景気後退確率(中央値)」は25%程度に留まっているものの、日本株式市場では昨年末から今年にかけて1日数百円単位での乱高下を記録し相場頭打ち感も台頭してきました。
企業利益絶好調の相場とは違い、景気停滞や景気後退局面の相場では、投資対象を変更する必要があります。
今の株式市場で「負けない投資」のキーワードは「安定」です。株式相場で安定とは、何を指すのでしょうか?
「配当貴族」と呼ばれる連続増配銘柄が、いま注目される理由をご紹介します。

目次
景気後退局面に何故連続配当株に資金が集まるの?
先ずは、当たり前のポイントを再確認しておきます。
株式相場は上場企業の価値が株価として反映されている、ということです。
企業の価値は企業利益に連動しますが、2017年度に比べ2018年度の企業利益は減少しました。また2019年度の見通しは、更に利益上昇率が下がると予想されています。
上場企業全体で見るとまだ利益は増益なのですが、その上昇率が下がることを株価は織り込んでおり、乱高下しているのが今年2019年の株式相場です。
そんな景気停滞局面に入った相場では、何か確実性(安定)のある要因に対して資金が集まってきます。
配当金という「安定」

配当金とは上場企業がその期に稼いだ利益から、株主に利益を還元する手段です。
よって配当金は株価の上昇(キャピタルゲイン)以外に受取れる、株式投資の魅力の一つですね。
もちろん株価自体は上下しますが、企業利益が下方修正に陥らない場合は決算発表の際に宣言された配当金が支払われ、投資家はそれを信じて投資します。
ポイントは、その配当金の元となる利益が予定通り生み出されると信じるかということに尽きます。
連続増配できる企業「配当貴族」とは
企業利益は毎年変化するので、配当金が毎年変わる企業もあれば、最低限の配当金に抑えておく企業もありますよね。
ちなみに10年以上の連続増配を実施している企業は「配当貴族」と呼ばれ、上場企業の中で38社しかありません。
企業利益が「安定」していれば、配当金も「安定」して支払えるという構図です。そんな企業に投資すれば、長期運用の中で負けにくく投資の成功率がアップしますよね。
10年以上の連続増配している企業とは

具体的には次の要因を持つ企業が、10年以上の連続増配を実施しています。
・売上高、当期利益等の業績が堅調で、日常生活に密着して誰もが利用する企業
(例:花王<28年>、KDDI<16年>、ファミマ<13年>)
・景気に左右されにくい製薬・医療関連企業
(例:小林製薬<19年>、ロート製薬<14年>、シスメックス<16年>)
・大手グループに位置するリース企業
(例:三菱UFJリース<19年>、リコーリース<18年>、芙蓉リース<16年>)
連続増配がポイント 注意点はこれ

景気が回復、上昇していく局面では、配当に着目した「安定」的な投資は敬遠され、業歴は短いものの売上も利益も急上昇する「成長」性を重視した企業の株式に資金が集まります。
それに対し現在のような景気停滞局面では、成長性より業歴が長く利益を確実に生み出す「安定」性に着目した企業に資金が集まります。
ただし一つ注意したい点は、連続増配していることが投資のポイントであって、配当利回りが高いことだけではお勧めできないということです。
また配当に着目した投資が増えることで、その銘柄の株価が既に高値となっている銘柄も手を出さない方が無難です。
連続増配のおすすめ銘柄3選
では連続増配企業の中で、配当金のみならず株価の上昇余地があるお勧め銘柄をご紹介します。
・10年以上の連続増配企業
・予想PERが日経平均採用企業未満(株価が高値にない要素)
・予想成長率がプラスの企業

※2019.4.18終値時点、配当利回りの順
【9433】KDDI<16年連続>
大手通信業者の一角。通信事業は5G関連銘柄でもあり、auウォレットなど金融事業にも進出。金融、電力事業にも進出し業績安定。
【7466】SPK<20年連続>
自動車補修部品や産業車両部品を取扱う商社。創立100年を超え、実質無借金経営。
【7613】シークス<11年連続>
電子機器の製造受託で国内トップ企業。車載関連を中心に、調達から組立まで一貫して取扱う。
米国には医療関連のプロテクター・アンド・ギャンブル(P&G)が62年、ハンバーガーのマクドナルド(MCD)は42年と長期の連続増配を続けている企業があります。
値上がり益を求めて投資する株式相場でも、「安定」性という魅力を兼ね備えた企業に投資すれば、次の上昇相場まで「負けない」投資ができるでしょう。(執筆者:中野 徹)