奨学金といえば近年、「自己破産」や「貧困」など不安を掻き立てられる報道が目につきます。
けれども、過剰すぎる心配から進学をあきらめては、あまりにもったいない。
忘れてはならないのは、借りたものは返さなければならないという、ごく当たり前のことだけです。
借入金額は多額になることが多いため、制度をよく知らないと大きな違いが生まれます。
今回は、最も利用されている日本学生支援機構(JASSO)の奨学金をより有意義に利用する借り方と返し方について、ご紹介します。
参考:日本学生支援機構PDF
目次
JASSOの奨学金には、給付型と貸与型がある
給付型の奨学金
給付型の選考基準は以下のとおりです。
・ 全履修科目の評定平均値が、5段階評価で3.5以上である、もしくは将来、社会で自立し、活躍するという目標をもって進学する意欲があること
給付型は文字通り返済不要ですから、該当すれば最もありがたいものです。
2020年度からは、対象範囲が拡大されるうえに、授業料や入学金の減免が予定されています。

現在既に大学等に通学している人も、引き続き在学する場合は申し込みできます。
なお、支援対象となる学校は、2019年9月以降、国や地方公共団体のHPで公表される予定です。
まずは受給できるかどうか、JASSOの進学資金シミュレーターからご確認ください。
貸与型の奨学金 ~第一種(無利子)~
返済の義務がある貸与型の場合は、第一種ならば借りた金額だけの返済になります。
給付型に当てはまらなければ、まずは利子のかからないこの第一種を目指しましょう。
採用基準は、家計と学力があります。
一般的なローンとは異なり、所得の下限ではなく上限が定められていることから、たとえ経済的に厳しくても借りられないということは少なそうです。
しかし学力では、成績の平均値が3.5以上など、学習成果や意欲が求められます。
本人のやる気が大きなポイントになります。
【収入・所得の上限額の目安】

【令和2年度大学入学者の貸与月額】

貸与型の奨学金 ~第二種(有利子)~
貸与型第二種の奨学金では、利子が加算されます。
ただし、平成28年3月卒業時の貸与利率は、利率固定式0.16%利率見直し方式0.10%と、一般的な教育ローンよりは低く設定されています。
いくら利率が上がったとしても、法令の定めにより、3%を超えることはありません。
なお、大学の第二種の貸与金額は以下のとおりです。
※ 私立大学の医・歯学…12万円に4万円の増額が可能
※ 私立大学の薬・獣医学…12万円に2万円の増額が可能
奨学金返済の負担を軽減してくれる7つの制度
先述のとおり、貸与型の奨学金は返済義務がありますが、この返済の負担を軽くしてくれる制度があります。
1. 在学猶予
JASSOの奨学金は、毎年届け出を行い支給を受けます。
届け出なければ、在学中でも通常返還は、貸与期間終了の翌月から数えて7か月目から始まります。
しかし借りるほどではないけれども、すぐに返済していくには厳しいということもあるでしょう。
こうした状況への対応として、大学、大学院、高等専門学校、専修学校の高等課程または専門課程に在学している場合、在学期間中は、手続きをすれば最短の卒業予定年月まで返還期限が猶予されます。
利息が気になる第二種奨学金の場合でも、猶予期間中は利息は増えません。

2. とくに優れた業績による返還免除
大学院進学中に第一種奨学金の貸与を受けている学生は、在学中とくに優れた業績をあげれば全額または一部が返済不要となります。
平成27年度は、第一種のうち9,188人が122億円免除されています。
3. 所得連動変換方式
社会に出て実際働いてみると、思ったより所得が少なかったり、支出が多かったり予想外の状況は十分あり得ることです。
平成29年度以降の第一種奨学金の返還者は、貸与終了後でも、定額返還方式から毎年の所得に応じた所得連動返還方式に変更することができます。
ただし、人的保証を選択している場合は機関保証に修正する必要があります。
4. 減額返還
例えば経済的に苦しい、病気やケガを患ってしまった、災害にあったなどから、奨学金の返還が難しいとき、毎月の返還額を2分の1または3分の1に減額することができます。
返還期間はその分延長されますが、第二種奨学金の利息の支払い額に変わりはありません。
5. 返還期限猶予
傷病、災害、生活保護受給中、入学準備、失業、経済困難、産前・産後・育児休業、在学中、海外留学などによって奨学金の返還が困難になったとき、返還期限を通算10年まで猶予してもらえます。
期間中に新たな利息がかかることはなく、傷病、災害、育休、留学、生活保護などは、期間の制限はありません。

6. 死亡または心身障害による返還免除
奨学生本人が死亡または心身障害となったとき、返還未済額の全部または一部が届け出、審査により免除されます。
7. 繰上返還
低金利の奨学金ではありますが、繰り上げ返済をすれば、返還期日が到来していないものについて利息は付きません。
奨学金の貸与終了後は、いつでも手数料なしで繰上返還ができます。
奨学金は、次世代を担う若者の夢をあとおしする大きな力
「880億円、16万5千人」
この数字は、奨学金にまつわる衝撃的な数字です。
880億円という途方もない金額が、入金も返済猶予の手続きもないまま延滞されており、16万5千人が3ヵ月以上延滞しているといいます。(平成27年度末)
返したくても返せない、そんな苦しいときもあるでしょう。
しかし上記のように返せないときのためのセーフティーネットは、準備されています。
奨学金の返還金の68.8%は次世代の奨学金として使われます。(平成28年度の場合)
誰もが夢をあきらめないために、有意義に奨学金を利用したいものです。(執筆者:吉田 りょう)