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現代の日本に広がる深刻な空き家問題
日本は少子化に伴い、実家を相続したものの住む者もおらず、固定資産税が上昇してしまうため、取り壊すこともできないといった空き家が多く発生しています。
しかし空き家は適切に管理しないと倒壊・崩落などの危険性があり、通行人や隣家に被害を与えてしまった場合は、持ち主はその損害を賠償する責任が生じます。
幼年期を過ごした思い出深い実家がそのような状態に陥ってしまうのはとても悲しいことです。
今後増加していくと予想されている空き家ですが、相続した場合にはどのような活用方法があるのでしょうか。
今回は空き家問題に備えるための対策についてを考えていきたいと思います。

1. 相続を放棄する
空き家問題への備えとして、そもそも相続しない「相続放棄」という方法があります。
放棄された相続財産は国庫に帰属されるため、空き家問題を回避することができますが、特定の相続財産のみを相続放棄することはできません。
そのため、すべての相続財産を放棄します。
不動産以外にめぼしい相続財産が無い場合は魅力的な方法といえますが、自分が生まれ育った実家や財産が何も手に入らないため、実際に採用するには抵抗を感じる場合もあるかもしれません。
2. 空き家を売却する
次に考えられるのは、売却や賃貸などで空き家を前向きに活用する方法です。
ですが、売却に関しては日本は中古住宅の取引が諸外国と比べてあまり活発ではありません。
その理由のひとつに「瑕疵担保責任」があります。
瑕疵担保責任は引き渡し後10年間は、建物に隠れた瑕疵が存在した場合は損害賠償を受けることができるという制度です。
しかし、売主が個人の場合、瑕疵を知りながら告げなかった場合などの悪意ある場合を除き、瑕疵担保責任を負わないという特約が有効になります。
中古住宅の状態・品質が不明であることと、瑕疵担保を負わない特約により中古住宅の売却が難しくなっています。

売却の場合は「住宅診断」が成約の後押しになることも
このように、空き家問題を回避するには、相続を放棄する、または空き家の活用方法を模索するという方法があります。
さらに、空き家の活用方法は、賃貸への転用と売却の2つに大別できます。
しかし賃貸への転用は築古の住宅の場合、ある程度リフォームが必要になる場合が多く、費用負担が過大となる場合は手掛けることが難しかったりもします。
売却の場合は中古住宅の品質と保証がハードルとなることがあります。
そこで売却に際して住宅診断士による「住宅診断」を行い、診断結果を付属してみることで成約を狙ってみるのが良いでしょう。
この制度は始まって間もないこともあり、まだ利用者が多くありません。
問題のある空き家になってしまい周囲に迷惑をかけてしまったり管理に過大な負担が生じるようになるまえに、次の所有者が安心して購入できる配慮を行った上での引き渡しを検討してみてはいかがでしょうか。(執筆者:菊原 浩司)