自転車の走行中に歩行者とぶつかる事故で、自転車側に多額の賠償金の支払いが命じられる事例が相次いでいます。
そんな中、各地方自治体では自転車保険に関する条例を定めるといった動きがあり、自転車保険や個人賠償保険への加入が重要視されています。
しかし、自転車での事故というのは加害者になるだけではなく、自動車との事故の場合は被害者になる事もあり得ます。
その場合の見落としがちな注意点と備え方を今回はご説明したいと思います。
目次
被害者と言えど、過失がある場合も

自動車との事故で被害者になったとしても、自転車側に全く過失がないというわけではありません。
ケースバイケースですが、基本的に、保険会社は過去の似たような事故の判例を基に過失割合を提示してきます。
信号や優先道路の関係、自転車側が道路交通法違反をしている場合には自転車側にも2~3割、場合によっては反対に過失割合が大きくなる事があります。
こちらの過失分は補償されない
被害者となった時に見落としがちなのは、この自分の過失割合分は相手から補償されないという事です。
もし事故で大きな障害を負ったり、介護が必要になった、長く休業する事になったといった場合には大きな金額が必要となってきますが、相手からの賠償は自分の過失分は相殺されます。
さらに、相手に支払い能力がないという場合もゼロとは言えません。
被害者となる場合にどうやって備えるか
では、こういった過失相殺される場合や、相手に支払い能力がない場合にはどのように備えるべきでしょうか。
各種傷害保険に加入する
日常の生活でケガをした場合に死亡、後遺障害、入院給付金などが支払われる傷害保険に加入する方法があります。
傷害保険にはファミリータイプと呼ばれるものがあります。
1つの契約で本人や夫婦、そして家族全員分を補償するもので、補償内容を交通事故時に限定することもでき、その分保険料も安く抑える事ができます。
以下はチューリッヒ保険会社の傷害保険(交通事故のみ補償)で試算したものですが、家族全員が補償の対象となる上に、年間の保険料が1万円強で数百万円~1千万円までの死亡・後遺障害の補償を持つことができます。
※後遺障害は症状に応じた割合によって保険金額が決められるのが一般的です。

ご家族皆さんで自転車に乗る機会が多いというご家庭では、検討されてみるのも良いでしょう。
自動車の人身傷害保険に加入する
さらに自動車保険に加入されている方は、自動車保険の人身傷害補償でも備える事ができます。
人身傷害補償とは、交通事故により、死傷または身体に後遺症やケガを負った場合に、過失の有無に関係なく、治療費、休業損害、精神的損害、遺失利益、介護料、葬祭費などが支払われます。
基本的には自動車に搭乗中のケガが補償範囲となっていますが、多くの保険会社では補償範囲を車外(歩行中や自転車に乗っている時)の自動車との事故でも、この人身傷害補償の対象とすることができます。
この補償も同居の家族や別居の未婚の子までと補償範囲は広い上に、補償範囲を広げたとしても加算される保険料は年間で数千円程度です。
さらに、先ほどの傷害保険は補償額が定額だったのに対して、人身傷害保険は保険金額を限度に過失相殺される分が補償されるので、大きな事故に備えることが可能となります。
補償内容を見直して安心の自転車ライフを
自転車の事故は年々減ってはきていますが、それでも2017年では1年間に約9万件も発生しており、いつ自分の身に降りかかるかもしれない事です。
事故の相手のためにも、個人賠償責任保険などに加入することはもちろんですが、自分や家族が被害者となった時の補償が必要かどうか、自転車に乗る頻度や行動範囲の環境を考えて一度検討されてみてはいかがでしょうか。(執筆者:西田 凌)