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小売り・外食店舗数が減少
日本経済新聞で、国内の小売り・外食店舗数が2018年末比で1%減少したと伝えられた。
業界団体のデータを基にしたもので、店舗数の減少には人口減少と通販などのECの普及が背景にあり、不採算店の減損も頻発しているとした。

資本コストについて意識低い系の企業群
ここで、話を変えて「資本コスト」の話をしたい。
日本では、株式会社として極めて重要な要素である資本コストに対する意識が低い。
資本コストとは平たくいえば、資金提供者(債権者や株主など)が期待・要求するリターンである。
お金の調達に関してかかっている費用とも考えられるため、コストというワードが付いている。
そして、株主についての資本コストを充足する、もしくは超過するリターンを長期に渡って上げていくことが株式会社の最大ミッションである。
この資本コストに関して、日本IR協議会の2018年の調査によると、「自社の資本コストがどの程度なのか把握しているか」という質問に「把握している」と回答した上場企業は49%にとどまった。
上場企業の中で、約半分は自社の株主がどのくらいのリターンを期待・要求しているのか、わかっていないということになる。
金融系を除き、業種ごとで資本コストに対する理解度に差があるとはなかなか考えづらいので、小売り・外食業界でも同じように資本コストの理解は薄いと思われる。
小売り・外食で資本コストへの意識高まるか
ここで話を戻そう。
小売り・外食店舗数を受けて、この業界で資本コストへの意識が高まる可能性があると考える。
なぜ期待できるのかというと、不採算店の減損を回避しようとする動きが強まると思われるからだ。
会計の話になるが、減損の原因になる「不採算」とは、黒字なのか赤字なのかという尺度ではない。
減損に関する不採算とは、その資産が「資本コストを満たせるのかどうか」という尺度なのだ。
減損を特別損失として計上すると、当然ながら損益計算書は毀損する。
となれば、経営陣は「黒字であっても減損はされてしまうのか、ならば資本コストを軸に資産保有を考えなければならない」という考えに至ると思われる。

資本効率改善策を打ち出す銘柄に期待
店舗数の減少は確かに厳しい事業環境を反映したもので、資本コストといった財務的観点からすべて解決できる問題ではない。
ただ、経営には事業環境の良し悪しにフィットさせて「資本コストを充足できないような資産(今回でいえば店舗)を削減していく」というような舵取りが求められる。
そして、過剰な資産を削って会社を筋肉質にすれば、たとえ事業環境が厳しくても資本コストを満たす経営は可能となる。
今後、大規模な自社株買いや配当性向の引き上げを打ち出す小売り・外食企業、または資本コストを意識した事業計画を打ち出すといった変化を見せる小売り・外食企業などは、投資家としても優良投資先として期待できるだろう。(執筆者:高橋 清志)