年金財政については、別の記事でもふれました。
今回は、より深く考えてみたいと思います。
念のため確認しておくと、公的年金の財政状態は地方・国家公務員共済が赤字状態を継続しており、その赤字部分を制度統一まえの「本来の厚生年金」が穴埋めする形になっています。
目次
破たんするはずが、破たんしなかった?

地方公務員共済、国家公務員共済は、年金給付額が現役被保険者から徴収する保険料負担額などよりも多額で、毎年の収支が赤字となり、制度を維持できない状態に陥りました。
本来、このような財政状態になってしまったら、制度を解体するしかありません。
仮に、共済年金が民間団体であれば、そうする他に手はなかったはずですが、共済年金は今日も存続しています。
本来、破たんするはずだったのに破たんしなかった。
可能にしたのが法律の力です。
こんなことが可能となるのですから、特定の意図が働いている限り、「公的年金を破たんさせる方が難しい」ということがご理解いただけるのではないかと思います。
なぜ、不都合な真実を公開しているのか?
公表されている年金財政の年間収支を見れば、不思議に思う点があるに違いありません。
制度統一で、旧来の厚生年金と地方・国家公務員共済は一緒になったのに、今もって、厚生年金勘定、地方公務員共済勘定、国家公務員共済勘定と、それぞれの収支が別々に算出されています。
だからこそ、赤字の共済年金勘定を旧来の厚生年金勘定が穴埋めしていることが判明してしまうわけです。
不都合な事実をかくすために「細かい項目までをもごちゃまぜにしてしまえば良いのに」と考えますが、そうしないのには理由があります。
共済年金は、旧来の厚生年金と完全に統一されたわけではありません。

制度統一後も実務は別で進行
組織内組織、公的年金内公的年金といった具合に、共済年金と旧来の厚生年金は今日に至っても、多くの実務は別々になっています。
例えば、データです。
全国にある年金事務所では、共済年金の被保険者の報酬月額(現役時に、だいたい、いくらくらいの給料をもらっていたか)の情報は入手できません。
職域加算と言われる、共済年金にしか存在しない公的年金の3階部分にまつわる事務を年金事務所が担当することはなく、共済自身で行っています。
制度統一で、共済からまわってきたのは年金給付に関する事務と多額の赤字だけです。
誰が得をするかで、制度の存続は決まる
平成27年10月に公的年金は制度が統一されました。
以来、27年、28年、29年の公的年金年間収支データを見る限り、「共済の赤字を旧来の厚生年金が穴埋めする」という状態は続いています。
残したほうが得をする連中の意図や思惑で、ルールや制度は存続し続けます。
この点、「公的年金制度は破たんする」と考えている人の方が、ある意味、のんきで楽観的だと言えるかもしれません。(執筆者:金子 幸嗣)