今までは世帯ごとの差が大きくズバリとした回答を行うことはできませんでした。
しかし、先ごろ金融庁の審議会が「2,000万円必要」との報告書を出したのをきっかけに問題解決に向けての動きが始まりました。
後にこの報告書についてはさまざまな議論を呼び、結局棚上げにされてしまいます。
しかし今まで霧の中であった問題に対して、一定の目安を付けたというのは評価されるべきではないかと考えます。
しかし、若年層でしたら充分な準備期間を設けることができますが、リタイアまで間もない世代では貯蓄による資産形成では間に合わない恐れもあります。
ですが、資産形成の方法は貯蓄のみではありません。
今回は所有する資産の中でも大きなウェイトを占める「マイホーム」を利用した、老後のための資産形成を紹介していきます。

貯蓄以外の老後資金の資産形成手段
老後資金2,000万円は貯蓄のみではなく、退職金や現金以外に形を変えている資産を活用することでも対策ができます。
資産の活用という点では、世帯資産の中でも大きな金額を占めるマイホームを活用することが効果的といえます。
しかし、マイホームの活用というと売却や賃貸などに供してしまうことと考えてしまいがちですが、マイホームを利用したまま資金調達を行う「リバースモーゲージ」や「リースバック」という選択肢もあります。
これはマイホームを持っているが現金収入が少ないといった場合に親和性が高い融資制度です。
リバースモーゲージはマイホームの担保価値の50%~70%程度を上限に使途自由の融資を受けられます。
マイホームへの居住は引き続き行えます。
また返済に関しては通常の融資が完済を前提としているのに対しリバースモーゲージは貸倒を前提にしており、最終的には原則マイホームの売却による完済させる仕組みとなっており、返済の負担が過剰にならなよう配慮されています。
リースバックはマイホームの売却を行い、その売却したマイホームを対象とした賃貸借契約を結び家賃を支払いながら居住を続ける仕組みです。
リバースモーゲージやリースバックは民間の銀行のほか、東京都世田谷区や兵庫県伊丹市などの自治体も実施しています。
これらの制度はまだ新しいため、利用にはやや制約がありますが老後資金の調達のための選択肢の1つとして検討してみてはいかがでしょうか。

相続でマイホームを取得した場合の注意点
老後資金の準備のため、マイホームに引き続き居住しながら融資や売買代金を利用できるリバースモーゲージとリースバックの2制度について説明させていただきました。
しかし、マイホームの名義人であった配偶者との死別で相続が発生し、マイホームや土地を取得していた場合等は本制度を含めマイホームの活用を行う際に注意点があります。
相続登記を行っておらず、マイホームなどの名義人が故人の名義のままとなっている場合は売却や融資などが行えなくなってしまいます。
相続登記は将来的には義務化の動きもあり現状義務とはなっていませんが、さまざまな選択肢を取れるようにしておくといった意味でも、相続登記を怠らずに行っておくと良いでしょう。(執筆者:菊原 浩司)