現在の住宅ローンは利ざやで収益が稼げないため、さまざまな名目の手数料を徴収することで、目減りした利ざやを補っています。
上記の2行もネット銀行を除けば最低金利で争っていますが、さまざまな手数料がネックとなって、金利水準だけでは比較できなくなっています。
今回は、この手数料を具体的に解説するとともに、本当に有利なのはどちらなのか解明します。
なお、三井住友信託銀行は3つの条件を満たせば変動0.445%となりますが、今回はりそな銀行変動0.470%、三井住友信託銀行変動0.475%で検証します。
目次
手数料型と保証料型の違いとは
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一般の人から見れば、銀行に支払う手数料ということであまり意識しないと思いますが、現在は以下のように分かれています。
手数料型
融資額に2.16%(消費税10%時は2.2%)を支払う形式。
融資額が多くなるほど支払額も多くなる。
あくまで手数料なので繰上返済しても返戻はない。
保証料型
保証会社が保証する保証料。
金利上乗せ(内枠方式+0.2%)と一括払い(外枠方式)がある。
繰上返済した場合、残存期間の保証料は返戻される。
もともと保証会社を使わないネット銀行が手数料型を取り入れましたが、大手行でも手数料型は自行の収益になるため取り入れる所が増えました。
最優遇金利である、りそな銀行変動0.470%と三井住友信託銀行変動0.475%はどちらも手数料型です。
大手行は保証会社が抵当権者
ネット銀行は保証会社を使わないので、住宅ローンを借りたら必ず付ける抵当権者はネット銀行本体です。
一方で、大手行は保証会社が保証を行うことに変わりはないので、手数料型であろうと保証料型であろうと、抵当権者は保証会社です。
保証会社に手数料は必要なのか
ほとんどの大手行がここは無料なのに対して、りそな銀行は保証会社に対する事務取扱手数料として3万2,400円を徴収しています。
そしてこの金額が、金利水準だけでは測れない、微妙な差を生み出しています。
返済期間別に償還明細で検証
3,000万円を35年元利均等返済で借り、りそな銀行変動0.470%、三井住友信託銀行変動0.475%とし、手数料はりそな銀行が3万2,400円多いとします。
5年経過時(60回返済時)
りそな銀行 残高2,601万379円
三井住友信託銀行 残高2,601万3,463円
三井住友信託銀行の残高が3,085円多いが、りそな銀行の手数料3万2,400円と比較すると2万9,315円お得。
10年経過時(120回返済時)
りそな銀行 残高2,192万5,907円
三井住友信託銀行 残高2,193万1,133円
三井住友信託銀行の残高が5,226円多いが、りそな銀行の手数料3万2,400円と比較すると2万7,174円お得。
20年経過時(240回返済時)
りそな銀行 残高1,346万3,346円
三井住友信託銀行 残高1,346万9,827円
三井住友信託銀行の残高が6,481円多いが、りそな銀行の手数料3万2,400円と比較すると2万5,919円お得。
このように金利差が0.005%しかないため、りそな銀行の手数料3万2,400円がネックとなって、総支払額では金利水準が高い三井住友信託銀行が有利になります。
住宅ローンの見分け方は総支払額
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今後も日銀が同じような金融政策を続けた場合、金利水準をこれ以上下げるのは難しいため、保証会社に対する事務取扱手数料を徴求する銀行も出てくるでしょう。
保証料型の金利水準の比較と合わせて、ますますシビアな住宅ローン選びが求められそうです。(執筆者:1級FP技能士、宅地建物取引士 沼田 順)