最近、マンションの老朽化問題が指摘される要因として、建て替えが困難であるという現実があります。
では、具体的にどのような問題が建て替えを阻害しているのでしょうか。
今回は、建て替えを困難にしている要因を、具体的に検証するとともに、その解決策を探ります。
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目次
建築基準法上の建ぺい率、容積率制限
建ぺい率と容積率について解説します。
容積率… 敷地面積に対する建築延べ面積の割合
例えば、住宅地で建ぺい率が50%、容積率が100%と定められている場合に、100平方メートルの土地を所有している場合(敷地面積)を考えます。
ここで、上記の建ぺい率に従うと、建築面積は50%の50平方メートルが上限となります。(緩和規定は考慮せず)
一方で容積率は建築延べ面積の制限ですから、単純に考えれば1階を50平方メートル、2階を50平方メートルとすれば100平方メートル以下となり、2階建てが建築可能です。(実際は各種規制あり)
マンションを建築する場所は分譲戸数を多くするため、商業地域など建ぺい率と容積率の制限が緩い所が多く、目一杯に建築します。
ここで、昔の住宅都市基盤整備公団(現在の都市再生機構)が分譲した物件の建て替えが、比較的スムーズに進んだというニュースをお聞きになった方もいらっしゃると思います。
これは、住宅都市基盤整備公団が政府系であり、民間のように建ぺい率と容積率を目一杯使わなかったため、建て替えにおいて当初の分譲戸数よりも多くの戸数を供給できたためです。
これにより余剰戸数を新規分譲に回すことで建て替えコストが軽減され、結果として住民の合意形成につながりました。
ただし民間の場合は、当初から建ぺい率と容積率を目一杯使ってしまっているため、政府が規制緩和をしなければ、建て替え資金は全額住民負担というなります。
住民ごとに違う、年齢や資産
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これは、阪神淡路大震災でマンションの建て替えが進まなかった大きな要因としてクローズアップされたので、ご存知の方も多いでしょう。
規模の小さなマンションならともかく、規模が大きくなればなるほど、住民の年齢や資産構成が異なるため、建て替えの合意形成が困難になります。
特に意見の違いが大きくなる所としては、高齢者は老後資金の確保もあり補修で充分と考えるのに対し、中高年はマンションの資産価値が上がる建て替えで対立することです。
この問題に対しての抜本的な解決はありませんが、やむを得ない場合は高値で買い取るなどの工夫が求められます。
大手不動産会社も建て替え事業に算入
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国土交通省の推計によると、旧耐震基準で建設されたマンションは100万戸以上あり、耐震性が不足したマンションはマンション円滑化法で一定の措置がなされています。
そして大手不動産会社にとっても、今後有望な建設地が不足する中、マンション建て替え事業を請け負うことが出来れば、確実な受注につながります。
上記のように、様々な課題が山積するのも事実ですが、今後は管理組合が大手不動産会社に、建て替えの相談を依頼する事例も増えてくるでしょう。
マンション建て替え事業という難題に、大手不動産会社はどのようなコンサルティング力で挑むのか…今後の動向に要注目と言えそうです。(執筆者:1級FP技能士、宅地建物取引士 沼田 順)