ネットサービスが広がりを見せるなか、中国のインターネット金融も急速に成長し、さまざまなスマホアプリがサービスを提供しています。
「アリペイ(支付宝)」や「Wechat(微信)」などの電子マネーが使えるアプリだけでなく、SNSアプリの「QQ」、旅行アプリの「去哪儿旅行」、共同購入アプリの「美团」、他にも「平安保险」「有钱花」など、ありとあらゆるアプリでキャッシング機能があり、誰でも簡単にお金が借りられる印象です。
これらのサービスは、一定の芝麻信用レベルで利用できます。
逆に言うと、信用レベルが可視化され、スマホで誰でも借金しやすい状況になったともいえるでしょう。
これがトラブルにつながっています。
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ネットキャッシングで40万元(約632万円)を借金した男性

ある男性は、スマホでネット賭博にはまり、賭博の資金調達にアプリキャッシングに手を出しました。
借金は最終的に40万元(約632万円)です。
ケンタッキーの1時間の時給が10元(約158円)と考えると、膨大な借金と想像できます。
この男性は、自分では返済しきれず、親や親族に借金返済を頼り、親族総出で借金返済に当たっているそうです。
母親がインタビューで状況を説明し、多くの人に注意を呼び掛けています。
日本なら本人が責任を負いますが、中国ではそれだけではすみません。
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中国では、親の信用スコアが子供にも影響する
借金の返済が滞り、最終的に返せなくなるとブラックリストにのります。
中国では、裁判記録や犯罪歴がスコアリングに関係しているので、信用スコアが大幅に下がり、日常生活に影響が出てきます。
新幹線・長距離列車に乗れず市外から出られなくなったり、自分の仕事だけでなく、家族にもその影響は及びます。
父親の借金で大学から入学拒否された高校生
北京の有名大学に合格した高校生がいました。
親族中でその合格に喜んでいたなか、大学から「入学拒否」通知が…。
信用スコアの調査により、その子の父親が20万元の借金を返さず、裁判所で債務不履行者と判断されていたことを受け、大学側が入学拒否をしたのです。
その両親は子供の3年間の努力が泡になると、慌ててお金をかき集めて借金を返済し、無事に入学できたとニュースで扱われていました。
借金を返済させる上で効果的だと学校側のこうした対応を世間の多くの人が支持しているそうです。
信用スコア社会で起きる生きづらさ
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ニュース上だけでなく、これは身近な問題です。
知り合いもアプリでお金を借りたのですが、返済期日を過ぎても返さずにいたところ、銀行からスマホに通知が届きました。
日に日に通知の内容が厳しくなります。
彼は「子供が学校に行けなくなるかも。電車に乗れなくなったり、家も差し押さえられるかも…」と追い詰められ怖くなり、親・親族に借金をして返済していました。
もちろん、借金は必ず返す責任があります。
そもそも、借金をしないに越したことはありません。
ただ、脅して取り立てるような銀行の通知に驚くとともに、信用スコアが本人以外にも影響し、だれでも生活に支障をきたすことになりうるという怖さを身近に感じた出来事でした。
そして、スマホで簡単に借金ができるハードルの低さもトラブルを増やしています。
日本でも広がる「信用スコアサービス」は、犯罪歴や裁判記録が用いられることは今のところありません。
でも、これからそうした記録がスコアリングの対象となると、中国と同じことが起きるかもしれません。(執筆者:桜井 まき)