子ども食堂は、さまざまなメディアが取り上げたことで、全国各地で開催されるようになってきています。
貧困や孤食といった状況にある子どもの居場所としてスタートしましたが、孤立しがちな保護者や高齢者、若い世代の人たちも救う取り組みとして注目されています。
今回は農林水産省が実施したアンケート結果をもとに、子ども食堂の取り組みについて紹介していきます。
平成30年3月に農林水産省から発表された「子供食堂と地域が連携して進める食育活動事例集」では、子ども食堂に関するアンケート結果が掲載されています。
ここではその活動目的や運営形態、利用料金、メリットといった点を見ていきたいと思います。
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目次
子ども食堂の活動目的
・多様な子どもたちの地域での居場所づくり
・子育ちに住民が関わる地域づくり
・生活困窮家庭の子どもの地域での居場所づくり
・生活困窮家庭の子どもへの食事支援
・子ども達にマナーや食文化、食事や栄養の大切さを伝えること
・高齢者や障害者を含む多様な地域の人との共食の場の提供
・学習支援
子ども食堂の運営形態
「独立した法人等による運営」が全体の80.7%、そのうち「任意団体」が42.5%、「NPO法人」が23.1%、「一個人」が14.9%となっています。
開催頻度
「月1回」が48.5%、「ほぼ毎日」の3.3%を含む「2週間に1回以上」開催している子ども食堂は38.7%でした。
開催日時としては「平日の夜」が55.8%で最も多く、土日祝日では夜よりも昼の開催が多くなっています。
利用料金
子ども食堂の多くは無料で利用できるようになっていますが、有料の場合でも100~300円という料金設定となっています。
但し大人料金に関しては、これよりも少し高めになっていることもあります。
また料金設定はせず、カンパというシステムを取っている子ども食堂もあります。
運営スタッフ
子ども食堂を開催する上で重要なのがスタッフの確保です。
地域住民(個人)、大学(大学が組織したボランティア含む)、民生委員、NPO団体、高齢者福祉施設と連携しているケースが多い子ども食堂では、これらの団体・個人から運営スタッフとしての参加協力を受けている割合が高くなっています。
食材の確保
・フードバンクからの提供
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・農家や家庭菜園を持つ人からの寄付
・食品メーカー、商店、スーパー、飲食店からの提供
個人からの提供も受け付けていますが、食材の種類や賞味期限などいくつかの条件が設けられています。
提供や寄付を考えている場合は、事前に子ども食堂のHPや連絡先に問い合わせて確認しましょう。
子ども食堂のメリット
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・小さい子どもをボランティアスタッフが見ていてくれるため、親がゆっくり食事を楽しめる
・転居してきたばかりで周囲に知り合いがいない母親が地域に溶け込めるきっかけの場となる
・子どもが家族以外の大人とコミュニケーションをとれる機会
・地域の若い世代がボランティアスタッフとして参加することで、就労や自立へのきっかけとなる
・子どもと触れ合うことで高齢者も世代間交流ができる場となっている
・調理や配膳の手伝いをすることで子どもの経験が広がる
子ども食堂は子どもだけでなく、若者や高齢者にとってもメリットのある取り組みとなっていることが分かります。
幅広い世代のコミュニケーションの場としても、重要な役割を果たしているのです。
子ども食堂が抱える課題
このアンケートでは、子ども食堂を運営していく上でいろいろな課題も浮き彫りになっています。
主な問題点は次のとおりとなっています。
・来てほしい家庭の子どもや親に来てもらうこと
・運営費の確保
・スタッフの負担や確保が難しい
・地域からの協力が得られない
・食中毒などへのリスク管理
・開催する会場の確保
幼稚園や保育園、小学校~高校を通した広報活動は行っているものの、来てほしいと思っている家庭の親子になかなか来てもらえていないという実情があります。
また運営費やボランティアスタッフの確保は大きな課題です。
寄付や善意によってその活動が支えられていますが、それにも限界があります。
今後、この点をどうクリアしていくかが重要なポイントなっていると言っていいでしょう。
一方で地域住民や行政の協力が得られないという悩みを抱えている子ども食堂もあります。
この連携が構築できないと運営の継続は非常に困難となります。
協力が得られない事情は地域によってさまざまですが、取り組みの知名度は上がっていても実際に受け入れられるかどうかのハードルは高いケースも少なくありません。
衛生面
食べものを取り扱うということで、非常に重要なポイントなってくるのが衛生面です。
アンケート結果では
・ 衛生管理の知識を持つ人がいるケースが約88%
・ 保険に加入しているのが約87%
とリスク管理についての意識は非常に高いことが分かります。
開催する会場は公民館などの公共施設を利用しているケースが全体の4割、他団体や個人から会場を借りているケースも4割で、その半数程度が無償となっています。
ある程度のスペースや調理設備、利便性などといった条件が揃わなければ開催できないため、会場の確保は今後も大きな課題になるといっていいでしょう。
子ども食堂のはじまり
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子ども食堂を初めてスタートさせたのは、東京都大田区にある「気まぐれ八百屋だんだん こども食堂」です。
オーナーの近藤博子さんは2008年に無農薬野菜を中心に取り扱う八百屋を開業、翌年には子どもたちの勉強を支援する「ワンコイン寺子屋」を併設しました。
地域の居場所づくりに携わってきた近藤さんは、給食以外の食事を満足に食べられていない子どもがいることを知り、
と2012年に子ども食堂をオープンさせました。
この取り組みがメディアで紹介されたことをきっかけに、日本全国さまざまな地域でこども食堂が開催されるようになりました。
民間団体である「全国こども食堂支援センター・むすびえ」の発表によると、2019年6月の時点でこども食堂の数は少なくとも3,700ケ所以上、年間の利用者は推計で延べ160万人にのぼるとされています。
コンビニ初の取り組み「ファミマこども食堂」
大手コンビニ「ファミリーマート」では、2019年3月から「ファミマこども食堂」の取り組みをスタートしました。
店舗のイートインスペースを活用し、近隣の子どもや保護者を対象に食事を楽しんでもらうことを目的としています。
また店舗のバックヤード探検やレジ打ち体験などのイベントも実施しています。
参加料金はこども(小学生以下)が100円、保護者(中学生以上)が400円、小学生以上は保護者の同意があればひとりでも参加可能となっています。
全国展開するコンビニチェーンでの初めての取り組みとして注目されています。
継続していくことが重要
子ども食堂の取り組みは、貧困家庭や孤食の子ども達に温かい食事と安心して過ごせる場所を提供するために始まりました。
現在では対象を限定せず、地域に住む子どもから高齢者まで幅広い世代が利用できる「子ども食堂」も増えています。
子ども食堂は、子どもの居場所としてだけでなく、世代間交流や保護者同士のコミュニケーションや情報交換の場としても重要な役割を果たしています。
住民同士が仲良く元気に過ごせることで孤独や犯罪を防ぎ、その地域の活性化にも繋がっていきます。
こういった取り組みを広げていくことはもちろんですが、継続していけるような体制や支援を充実させることも重要です。(執筆者:藤 なつき)