今、世界では自国の利益を最優先に考える「保護主義」が台頭しています。
その筆頭がトランプ大統領率いる米国で、2020年の大統領選挙を控えて、金融緩和を意味する利下げを迫り、実際に予防的な利下げが行われました。
ただ、「保護主義」が台頭すると、それぞれの国が自国の利益を最優先に考えるため、世界経済全体では減速が進みます。
今回は、現在の世界経済の流れを解説するとともに、世界経済減速により、日本の住宅ローン金利がどうなるか考えます。
米が政策金利を10年半ぶりに利下げ
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日本以上に好調な経済を受けて、米国では指標となる政策金利を据え置いた後、2017年から引き上げてきました。
政策金利を引き上げることを金融引き締めといい、銀行からの借入金利などが引き上がることで経済の過熱を防ぎます。
今年前半の予想では、政策金利をさらに引き上げるか、据え置くものと考えられていました。
しかし、米中貿易摩擦で米国経済に先行き不透明感が広がるとともに、トランプ大統領からの過度な口先介入に、市場も反応せざるを得なくなりました。
結果的に、米国の中央銀行の中核機関である米国準備制度理事会(FRB)は、7月30~31日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を0.25%引き下げ、年2.00~2.25%に誘導することを決定しました。
今回の利下げは予防的な措置と言われますが、トランプ大統領はさらなる利下げを促しており、2020年の大統領選挙や米中貿易摩擦の影響により、さらなる利下げが行われる可能性もあります。
日本では長期固定金利がさらに低下する可能性も
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米国の利下げで、世界経済もある程度の回復が期待されましたが、「保護主義」により世界が分断された現在、効果はありませんでした。
むしろヨーロッパの中央銀行である欧州中央銀行(ECB)も9月の利下げを示唆、日本の中央銀行である日銀も追加緩和も辞さないという文言を追加しました。
米中貿易摩擦では、米国が9月1日から、中国からのほぼ全ての輸入品に関税を課す(一部はクリスマスシーズンまで延期)と発表するなど激化の一途をたどり、その他にもリスクが山積みとなっています。
このようなリスク回避の状況においては、市場は円買いと国債買いで対応します。
日銀としては長期金利(10年物国債の利回り)を0%程度に抑えたいようですが、実際の市場では長期金利は-2.5%程度まで低下しています(国債が買われ過ぎて高値になっている)。
長期金利に連動しやすい、住宅ローンの長期固定金利はここ数か月で緩やかに低下し、8月のフラット35の最低金利は年1.17%となっています(団信あり、21年以上~35年以下)。
今後、世界経済がさらに減速し、米国やヨーロッパが相次いで利下げするようだと、日本でも追加緩和が議論され、長期金利はさらに低下するものと考えられます。
フラット35の金利が年1%に接近してもおかしくはなく、これ以上下げられない変動金利との金利差が縮小、長期固定金利を考える人には絶好のチャンス到来となりそうです。(執筆者:1級FP技能士、宅地建物取引士 沼田 順)