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セルフメディケーション税制開始から1年

同じ成分・効果の薬があるのに、薬局では買わずに病院を受診して同様の薬を処方してもらうことで安価に薬が入手できる場合があります。
これは薬局で購入する薬は全額自己負担ですが、病院の処方薬であれば最大でも3割の自己負担で済むからです。
しかし、そのせいで医療費が膨らみ、市販薬では代替できない薬に充分な助成ができないことが問題となっています。
政府はこうした問題を解決するため、2017年から市販薬と処方薬のギャップを埋め、市販薬の購入をうながすために「セルフメディケーション税制」を導入しました。
2018年こそ低調な利用率に終わってしまいましたが、先日大企業の会社員らが主に加入する健康保険組合連合会(健保連)は、医療費圧縮のため代替薬のある花粉症の治療薬に関しては保険適用外や自己負担率の引き上げなどを行うべきとの提言をまとめました。
我が国において国民花粉症は国民病とも言えるほど多くの人たちが悩まされている症状です。
治療費の負担を軽減させるためにもセルフメディケーション税制につい改めて知っておきましょう。
セルフメディケーション税制とは
医療用医薬品から市販薬に転用された「スイッチOTC医薬品」を年額1万2,000円以上購入した場合、その超過分が所得控除される制度です。
所得控除は、所得税や住民税の算出根拠となる総所得額から一定金額を割り引くことで課税される所得額を小さくすることで納付する税額を安くする制度です。
このため、1万2,000円を超えた分の全額に相当する金額と等しい金額の税金が差し引かれる訳ではありませんが、所得税は所得が多いほど税率が高まる累進課税制度を採用しているため、所得が高いほど還付率が高まる性質がありますが、最低税率でも約15%分の税還付を受けることができます。
この他の適用条件として、健康の保持増進及び疾病の予防について、健康診断や予防接種などの一定の取組を行っていることが求められます。
また、通常の医療費控除とは併用できないため、出産や入院など他に高額な医療費を支払っている場合はセルフメディケーション税制を利用しない方が有利な場合もありますので、他の医療費の総額を勘案してどちらの制度を利用するかを決めることが必要です。
制度を賢く利用しよう

医療に係る支出は削減や節約を行ってしまうと病気の発見が遅くなりかえって多額の支出がしょうじてしまう恐れがあるため、過剰な節約は禁物です。
こうした支出を削減するには、医療費控除やセルフメディケーション税制などの優遇制度を賢く利用するに留めておくことが肝要といえます。
総務省が発行する家計調査報告 (2018年)によると、医薬品の購入額は毎月2,617円と言われています。
年間に換算すると3万1,404円となり、仮に全額スイッチOTC医薬品を購入してたとすれば、充分に適用要件を満たせます。
少額といってないがしろにせず、制度の理解を深め確実に利用していくことが大切です。(執筆者:菊原 浩司)