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遺産分割がまとまらなくても、10か月の申告と納税期限は変わらない

本来、相続税の申告は、
・遺産分割を終え、
・分割内容に応じて相続税を計算し、
・納税も済ませなければなりません。
相続人が1人であれば必要ないですが、2人以上の相続人がいると遺産分割の必要がでてきます。
通常2人以上の相続人がいて、分割の話し合いがまとまらなかった場合に、申告の期限が延長できるかというと、そうはいかないのです。
いったん、法定割合で相続人全員が相続税を払わないといけないのです。
配偶者には「相続税がかからない」の誤解
配偶者には「配偶者の税額軽減」という制度があり、1億6千万円か法定割合までは相続税がかかりません。
しかし、配偶者が相続する遺産については、
もしくは、
・相続人全員の合意がある「遺産分割協議書」
の添付が税額軽減の条件です。
配偶者であれば単純に適用されるというわけではないのです。
相続税申告には、期限内に遺産分割をまとめると特典がある

僕は、過去に会計事務所にて20年近く相続税申告のお手伝いをしてきました。
その中でも「未分割の申告」はゼロに等しく、そのことを自負してきました。
これを可能にしたのは、ある特典です。
実は、相続税の申告には10か月という期限があり、期限内に申告をすると特典があるのです。
その特典とは、
「小規模宅地等の評価減」
のことです。
これらを適用するのには条件があります。
誰が取得するのかが遺言書か遺産分割協議で決まっいて、初めて適用できるわけです。
特に、「小規模宅地等の評価減」は、
のはもちろんのこと、
・全体の遺産評価が安くなる
ので、結果的に他の相続人の相続税も安くなります。
このことを繰り返し、相続人の方全員にお話をし、10か月以内に遺産分割がまとまるよう努力してきたのです。
5,000万円以下の遺産分割がもめやすい理由

一方、10か月の期限がないものもあります。
それは、次のような場合です。
例えば、夫が亡くなり、相続人が配偶者と子2人であれば、
です。
事例の場合、相続額が4,800万円以下の場合は、相続税申告は不要です。
しかも、遺産分割の期限もありません。
特典もありません。
相続税の申告が不要で、10か月の期限がないからです。
私の実務上の実感ですが、遺産が5,000万円前後の層は、実はかなり多いのではないかと思います。
大半の家が5,000万円以下の遺産であったため、調停件数も多くなっていたのではないでしょうか。
おかげで相続税の申告者数も増加しましたが、相続税の基礎控除が下がった平成27年、28年の遺産分割調停は減少しています。
策に溺れた相続人がいると相続はもめやすい
兄弟は、お互い、兄弟間の格差を気にしています。
兄弟の1人が節税を武器に遺産分割を進めると、他の相続人の反発を買うことがほとんどです。
進行役となる人は、「その節税、相続人全員の幸せを考えていますか?」を胸に秘めて行ってください。
又、小規模宅地等の評価減は故人との同居が原則ですが、同居する不自由を選んで税金を安くするのか、税金を払ってでも自由を選ぶのかといった、視点も大切です。
相続は、「勘定」だけではなく、「感情」の問題なのです。(執筆者:橋本 玄也)